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「では、これで失礼します。」
職員室の時計の針が7時になりかけている頃、結葉が荷物をまとめて退勤しようとすると、2学年の主任をしている浜谷 流紀(はまや るき)にとめられた。
「あぁちょっと森先生!真原先生の歓迎会行かないんです?」
流紀の大きな声に、結葉のみでなく瑠菜や紡虹、教員全員が振り返る。
「浜谷先生。声が大きいです。それに、本人いる前で言うのもなんですが……歓迎会は行かないって何回も言いましたよ?あとで写真とか送ってもらえれば十分なので。ではみなさん、今日もお疲れ様でした。」
にこりと笑みを貼り付け、職員室のドアをバタンと強く閉め、結葉は早歩きで学校を出た。
結葉の自宅は、学校から歩けば数分で着く安めの小さなアパート。
必要最低限のものしか置かれていないが、結葉にとっては十分。
軽く夕食をとり、風呂に入った後はすぐ就寝するのがいつもだが、結葉はなかなか眠れず、今日は夜に地上波で放送されているテレビ番組を観る。
(………今頃、皆さんは真原先生の歓迎会でもしてるのかな…………………)
ぽつりと、脳裏に紡虹の歓迎会のことを浮かべた。
そこから少し時を戻し、学校から少し離れた町外れにある居酒屋では、にぎやかに紡虹の歓迎会が行われていた。
「では、新たな仲間に祝して…………乾杯!」
「かんぱーい!!」
流紀の声の後に、何人もの教員の声と、それぞれのドリンクが入ったコップがぶつかりあう音がガランッと響く。
「真原先生、ノンアルですか?」
「はい。運転するので。」
「あっ、そうなんですね!車は?」
「水色のハス○ーです。あのー…わかります?」
「あぁーあれですか!わかりますよ。」
教員達がにぎやかに会話を交わす中、流紀がぽつりと呟いた。
「森先生も来れば良かったのになぁ………」
呟きを耳に入れた隣に座っている瑠菜は、流紀に冷たく返した。
「浜谷先生そろそろ覚えてくださいよ。結葉先生はそういうの大体断りますから。特に異性関連だったら。」
「えぇ?組山先生そういうの知ってるの?」
「はい。」
「えぇ、じゃあ森先生はどうしてこういうの断るの?」
「それは言えません。秘密主義なのでっ!」
そう言い、瑠菜は席を立った。
「トイレ行ってきま〜す〜」
時を戻し、結葉の自宅。
結葉のスマホに、着信が鳴った。
「あっ…………瑠菜…ちゃん。」
結葉は弾かれたように反応し、すぐに通話ボタンをタップした。
「もしもし。」
[あっ、もしもし結葉ちゃん。]
「……瑠菜ちゃん、どうかした?今って、その…真原先生の歓迎会やってる途中なんじゃ………」
[そのとおり。今トイレっていって一時抜けてて。]
「そう。………何かあったの?」
[ううん。特には…………………。あのさ、結葉ちゃん。]
「うん。」
結葉が答えると、瑠菜は少し躊躇ったのか、ほんの少し沈黙が流れ、その後、結葉のスマホ越しに苦めの声が聞こえた。
[歓迎会とか行かないのって………その………………]