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ここは日本とよく似た国、「式ノ本」。
この国は大きく2つに分かれている。
治安がよく青い空が見える
治安が悪く赤い空に白い大木の見える
である。
ー これは「影街」に住む者、
接触する者の物語である ー
光街と影街の間にある細い通路を
落ち込んだ顔で歩くのは青年の
**「折西 融(おりにし とおる)」**だった。
「はぁ…」
持っていた解雇通知書は冷や汗で墨が
滲んでいた。
身を粉にして働いていたブラック企業から
まさかクビにされるとは思わなかった。
「やっぱりミスばかりするからでしょうか…
どうしましょう…おばあちゃんに
心配かけたくないなぁ…」
クビにする理由を社長がつらつらと
話していたが頭が真っ白になっていて
覚えていない。
「…ダメですよね、クヨクヨしている
暇はないです!仕事を探しに!!」
自分に喝を入れて顔を上げる。
…
あれ?
学校で影街は治安が悪く盗人や殺人が横行
していることを教わっていた。
だから頭の弱い折西でも影街が危ない場所で
あることは十分理解していた。
早くここから離れないと…
折西は踵を返そうとした。
…しかし踵を返す方角が分からない。
折西はここが光街と影街の間にある
通路であることは分かっていた。
しかしどちらの方向に光街があるのか
把握していなかった。
「これ、帰れないのでは…!?」
下手に動かない方がいいと思い
人がいないか辺りを見渡す。
…が、誰もいなかった。
「…はぁ」
重いため息は赤色の空に消えていった。
「(もう帰れないのでしょうか?)」
落ち込む折西の目には涙が浮かんでいた。
すると突然折西の後ろ側から
声が聞こえてきた。
「(やっと光街の場所を聞ける…!)」
…が、何やら声の主は誰かを追いかけて
いるようだった。
とても聞ける状況では無さそうだ。
遠くから怒声が聞こえる。
すると、声の主より先に折西の横を
フードを被った青年が通り過ぎた。
折西はフードの青年と目が合った。
「(…これは、鍵穴…?)」
フードから覗く炎のような揺らぐ目には
焦りが見えた。
フードの青年は折西からすぐ目を逸らし、
通路の右側に走っていった。
…と共に鍵穴は見えなくなった。
「…アレは何だったのでしょうか?」
ただ呆然と立ち尽くす折西にようやく
追いついたのは町奉行(光街の警官)だった。
「ぜぇ…ぜぇ…クソッ!逃げ足の早い!」
町奉行は息を切らしながら膝に手をついていた。
「だ、大丈夫ですか…?」
折西は町奉行に駆け寄る。
「…ああ、大丈夫だ。心配してくれて
ありがとうな、お嬢ちゃん。」
『お嬢ちゃん』や『そこの女』などと
呼ばれすぎて訂正するのも億劫な折西は
「いえいえ…!ところでどうかされましたか?」
と話をそのまま進めた。
「殺人事件を起こした指名手配中の男を
追っててな… 黒いフードにギラギラした
目つきのやつなんだが…」
折西はハッとした。
さっきのフードの青年は
指名手配犯だったのだ。
「恐らくさっきここを通りかかったと
思うんだが…どこに行ったか見失って
しまってな。お嬢ちゃん見てないかい?」
「えっと…確か…」
折西は町奉行の顔を見る。
…なんか嫌な感覚がある。
正義の皮を被った『何か』な気がして
ならない。折西のこういう勘はよく当たる。
「通路の左側にフードの人が曲がったのを
見ました…!」
折西は衝動的に逆方向を
町奉行に教えてしまった。
「そうか、ありがとうな。
…クソッ!!!絶対見つけて昇格してやる!!
お嬢ちゃんは早く帰りな!ここは危ないぞ!」
町奉行は折西の後ろの方角を指さして
左の通路へと曲がった。
「(なんか、煩悩まみれな町奉行さんだなぁ…)」
嵐のような出来事にボーッとしていた。
「と、とりあえず指さした方向が光街ですよね!
帰りましょう!アパートから出る手続きを」
折西が後ろを振り返ろうとすると
という音と共に首に衝撃が走った。
折西の視界は暗くなり、意識が遠のくのだった…