コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
…
「…い、…きろ」
どこからか声が聞こえる。
生きろ…?意識があるってことは
生きてはいるんですけど…
おい、起きろ!!!!!!
背中をガツンと蹴られ、暗かった視界が
急に光を帯びた。
「!?!?!?」
驚いた折西は顔を上げようとするが
顔が上がらない。頭に重みを感じる。
どうやら誰かに頭を足で押さえつけ
られているらしい。
「昴、もうその足放してもいいんじゃない?」
抑揚のない優しい声の主は頭上の人物、
昴(すばる)をなだめた。
「フン、逃げても責任は取らんぞ。」
昴という男はどこか冷たかった。
「え〜っ!ここの場所すら分からない
光街の子でしょ?逃げれるわけないじゃん!」
なだめていた声や頭上の声とは違い
底抜けの明るい声は笑いを含んだ声で
昴をからかった。
すると小馬鹿にされた昴は
いらつきを隠せないのか折西を1度強く
踏んづけてから足を離した。
昴は色素の薄い髪に四角い眼鏡を
かけ、鋭い目付きをしていた。
…上司にいると嫌なタイプだ。
「大体あの馬鹿チビガリがこいつの
首を強く打ったのが間違いだろ。
下手したら死んでたぞ。生け捕りして来いと
組長に言われてたの忘れたか鳥頭。」
昴は紅釈を睨む。
「うるせぇな!!!ガリノッポのてめぇが
できる仕事内容じゃねぇのに口出すなよ!!」
近くにあった台を蹴りつけたのは
紛れもなく指名手配されていたフードの男
だった。
「!?あなたは…!」
「おうよ!あの時お前が助けてくれた
連続殺人犯、『紅釈(ぐしゃ)』だぜ!」
ああ、やっぱり僕はやっちゃいけないこと
やってしまったんだ…と折西は再認識した。
「あの時、町奉行に嘘の場所
教えてくれてありがとな!!」
紅釈は無邪気な笑顔でお礼を言う。
すると紅釈の背後に回った折西を踏んづけた
眼鏡の男はボソッと。
「あの時、折西の息の根を止めようと
してくれてありがとな。」
と皮肉混じりに言った。
「ッたくお前は本当にウゼェな!!!!!」
紅釈は四角眼鏡の男の脇腹をどついた。
「…悪ぃな。この四角眼鏡のガリノッポ、沸点
低いんだわ…お前も気をつけとけよ、折西!」
「フン…」
眼鏡の男は折西を強く睨んだ後目を逸らした。
「まあまあ、2人とも。
私も折西くんに自己紹介したいな。」
そう言うと優しい声をした主は
折西の元へと近づいた。
「どうも、私は『東尾(ひがしお)』と
申します。」
丸メガネにオールバックのおさげの
桃色の髪の青年は不気味な程に口角が
上がっていた。
「よ、よろしくお願いします…?」
「あー!!皆ばっかりずるい!!!
僕も挨拶する!!!」
そう言うと明るい声の持ち主は折西の
前で仁王立ちした。
「僕は俊(しゅん)だよ!足の速さに自信のある
居候でーす!!」
黄色い髪に童顔を持つ青年はどこか折西を
下に見ているような、そんな感じがした。
「よ…よろしくお願いします…居候?
誰かに守られてるんですか?」
疑問に思った折西が聞くと俊は
「うん!!!僕可愛いから
守られちゃうんだよね!」
と上目遣いで折西の近くまで駆け寄った。
「そうなんですね…!」
折西が感心していると紅釈がため息をついた。
「はぁ…ちげーよ。俊、お前は嘘つくな。
逆だ。うちんとこの組長を守ってんのが
こいつ。」
「えっ!?!?」
空いた口が塞がらない折西を見るなり
俊は大笑いした。
「…つってもこいつが仕事してんの
見た事ないし実質居候みたいなもんだけどな。」
「ひどーい!!!」
自分で居候と言っときながら他人に
言われると嫌がる姿を見て折西は
俊の事を少し面倒くさく感じた。
「あ、あの。ところで僕はどうして
こんな所に…?」
折西は比較的話の通じそうな紅釈に聞いた。
「ああ、うちんとこの組長が生きたまま
連れて来いって言っててさ。」
「く、組長!?てことは
ここは何かの組織ってことです!?」
驚いた折西の顔を喜ぶかのように
紅釈は指パッチンした。
「ご名答!!!ここは影街を統括する組織、
『影國会(かげくにかい)』だぜ!!」
そう言うと大きな扉からガチャリと
音がした。
「!?」
折西は扉が開くと共に感じた圧に
声が出なくなる。
圧と共に出てきたのは紫髪の
50代くらいの男性だった。
「…こいつが折西か?」
紫髪の男性は紅釈に問いかける。
「うっす!組長!俺が捕まえてきました!」
紅釈は誇らしげに折西の肩に腕をまわした。
…その時昴が舌打ちしたのは
聞こえなかったことにした。
「そうか。俺は『影國会(かげくにかい)』
の組長、『垓(がい)』だ。よろしく頼む。
折西 融。」
組長から感じられる重い空気感は
部屋中を圧迫した。
「あっ、あの…結局僕はなんで
連れてこられたんです…?」
「影街の人間である紅釈の肩を持った以上は
光街には返せなくてな。」
「あっ…僕が嘘ついたことが光街に
知れ渡ったら檻の中ですもんね…」
「そういうことだ。それにうちの組に
肩を持った人間は保護する必要がある。」
「…というと?」
「影國会での生活を強制するということだ。」
「!!!」
折西は引き返そうと後ろを振り向くと
先程の4人が扉の前に立ち塞がっていた。
「…わかりました。けれどお仕事とかは
どうすればいいでしょうか…?」
「そうだな、簡単な雑務の
仕事をしてもらってもいいか?」
「えっ、それだけで大丈夫なんですか?」
「ああ。お前はミスが多いと書類に表記
されている。下手に動かれると困るのでな…」
垓は右手に持っていた書類をひらり、
とちらつかせた。
「あっ…で、ですよね…」
折西はがくんと肩を落とした。
「まあ、折西にもいい所はあるはずだ。
それを見つけるのが俺の課題だな。」
垓は手に持っていた資料を机の上にぽんと
置いた。
「…俺がこの件はどうにかするから
紅釈、折西を空き部屋に送ってくれないか?」
垓は紅釈の肩にてをぽんと置いた。
「おう!任せといてください!」
ニカッと笑った紅釈は折西の腕を
ぐいっと引っ張って部屋を出たのだった。