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「そう。私はこんな商売をしているからか、いろいろな人たちと関わってきたわ。その中で助け合うっていうのは何かっていうのがよく解るの。大変な依頼人が来ると、決まって姉さんのところに行ってたっけ」
呉林の顔を見ずに微苦笑し、
「お姉さんがいるのか」
「ええ、とっても不思議な力があるの。私の力はお姉さんには敵わないわ」
「へえ。そのお姉さんって美人か」
「……そうね、私と同じ」
急に高なりだした鼓動が呉林に聞こえるかも知れないが、私と呉林は笑った。こんな時でも笑えるのがとても嬉しかった。左肩の痛みがかなり和らいでくれる。
角田たちが持って来た古古米のカレーを食べ終えると、みんなで医務室からこの世界の出口に当てもなく出発することにした。4人はまた延々と通路を歩くことにる。けっこう先に作業場の大きい扉が見えてきた。
「ひょっとして」
呉林は急に立ち止まると、私に、
「赤羽さん。携帯持っていない」
私はタバコの吸い殻を刑務所の床に捨てると、ライフルを肩に掛け、唯一私服であるズボンにある携帯を片手だけで出した。私の携帯を受け取った呉林は真剣な眼差しで、私の携帯を何やら弄っていると、突然、辺りに携帯の目覚まし機能の音が鳴り響いた。
「違ったかしら?」
呉林は辺りを見回してから首を傾げる。
「どうしたんだい。俺の携帯に何かあるのか?」
私も呉林の行動に首を傾げる。
「そういえば、あの電車の中で携帯が鳴ったわよね。その後に私たちは元の世界に戻れたの。だから、あの時と同じことをしようとしているのよ」
「ここが、夢の世界だからか?」
私はあの電車での出来事を少し考えてみた。辺りが急に薄暗くなり、周りの人々もどこかおかしかったが、携帯の目覚まし機能でその現象がなくなった。そういえば……。
「あの時、もしかすると三人とも居眠りをしていたのでは?」
呉林は驚いて、私の顔を見た。
「すごいわ。私も同じことを考えていたのよ」
呉林は顔を輝かせて続けた。
「それなら、こういう仮説はどう、私たちは現実の世界で寝ると、夢の世界で起きてしまうのよ。……そうだとすると、どうやったら元の世界へと戻れるのかしら?」
渡部と角田は解らないといった表情を見合わせていた。だが、私は興味を惹かれた。