テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「おはよう」
「おはよう」
チュッ
目覚めると隣りに匠が居る喜び。
さあ、切り替えて、
今日から、この部屋から一緒に出勤だ。
私は、毎朝途中で美和と匠と会って、一緒に出勤していたので、一緒に居ても特に誰も不思議だとは思わないのだ。
ただ、トモに会うのはイヤだなと思っていた。
一緒に朝食を食べる。
平日は、パンとコーヒーにしてもらって、休日、時間に余裕のある時は、ご飯にしよう。
そして、私はいつも美和とお昼に食堂でお弁当を食べているので、匠のも一緒に作った。
「え〜マジ? すっごく嬉しい!」と喜んでいる。
匠は、忙しい時、よくデスクでおにぎりやパンを片手に仕事をしたりしている。
それを私は見ていたので……
「お弁当でも良いよね?」と聞くと、
「うん、最高! 綾ありがとう〜」と喜んでくれた。
また、チュッとキスをする。
「「ふふ」」
そして、身支度を終え、2人で一緒に部屋を出る。
「はい!」と、匠が合鍵をくれた。
「ありがとう」
──憧れの合鍵だ! 嬉しい〜! ニヤける。
「うん」
きっと私の方が先に帰ることが多い。
疲れていても、夕飯の用意をして匠を待つ喜びの方が大きいだろう。
会社の最寄り駅に着いた。
いつも、途中で智之がハーレム状態で居る場面に遭遇していたが、今日は、居ないようで少しホッとした。
匠も同じことを思っていたようで、
「居ないな、アイツ」とボソッと言った。
「うん」とだけ答えた。
そして、美和に会った。
「美和! おはよう〜」と言うと、
「あ〜綾! おはよう〜」と言って、隣りに居る匠にも、
「おはよう〜」と、ニコニコしながら挨拶する美和。
敢えて「おはようございます」と言う匠。
「ふふっ」と美和は笑って、「良かったじゃん」と言った。
「うん」と私が答えると、匠も微笑んでいる。
「皆んなには?」と聞く美和。
「あ、敢えてこちらからは言わないかな〜」と言うと、
「了解!」
「いつかは、バレるだろうけどな」と匠。
「うん、だよね。そういう噂は早いからね」と美和。
「うん、それならそれで良いよ! 事実だし」と私が言うと、
「そっか、おめでとう〜」と言ってくれた。
「まだ早いってば」と私が言うと、
美和は、ジッと匠の顔を覗き込んで、
「そうでもなさそうよ! 案外すぐかもね〜」と言う。
「ハハッ」と照れ笑いをしている匠。
「目は口ほどに物を言う!」と笑う美和。
「「ふふ」」と笑って見つめ合ってしまった。
「きゃっ」と喜ぶ美和。
「「ふふ」」
そして、会社に到着。
美和とは途中で別れて、匠と一緒に部署へ。
「「おはようございます」」
「おはようございます」
何も変わらない日常だ。
ホッとした。
匠の席は、パソコンが並んでいる奥の席だから、少し離れている。
目配せをして、離れる。
────
無事に、お昼まで業務をこなす。
そして、美和とお弁当を食べようと、食堂へ向かう。
匠は、仕事が忙しそうなのでデスクで食べるようだ。
「食堂行って来るね」と言うと、
「おお! いただきます」と言う。
「うん、じゃあ、頑張ってね」
「おお」
美和の部署の前を通る。
──美和もう行ったかな? と覗く。
すると、
「綾!」と呼ばれた。
振り返ると、智之だった。
──え、今日は、会社に居るんだ!
思わず、
「何? もう綾って呼ばないで!」
と言っていた。
「ごめん、話がしたい」と言った。
「もう、話すことなんてないよね?」と、私は、智之を睨んだ。
「ごめん……お腹の子、俺の子だった……」と言った。
──分かっていたけど、やっぱりそうだったんだ
正直もう、そんなことは、どうでもいい!
「そう! 私には関係ない! だからもう、こんな風に話しかけたりしないで!」
「本当にごめん……」と言った。
背が高いくせに、小さく小さく見えた。
「じゃあ、お幸せに」
と、私は智之から離れた。
智之があの|女《ひと》と結婚しようが、もう私には関係ない!
自分の子なら、せめて大切に育ててあげないとね! 子どもに罪はないのだから。
物凄く不快な気分になった。
そして、食堂まで行くと、美和が居た。
「綾〜」と手を振って呼んでくれている。
美和の居るテーブルまで行き、今、智之に会ったことを伝えた。
「えっ! やっぱそうだったんだ、最低だなアイツ!」と美和は怒ってくれている。
「うん、でも、もう私には関係ない!」
「そうそう! 前を向いて行こう! 《《ダーリン》》と」と、微笑んでくれる。
「うん、そうする!」
そして、お弁当を食べ終わった頃、
「あら〜山脇さん、イメチェン? コンタクトなの? 髪も素敵〜」と言う声がした。
そちらの方を見ると、智之の浮気相手、山脇さんが居た。
いつも後ろで1つに束ねていた黒く長い髪をバッサリ切ったようで、ボブになっている。
そして、私に気づいていたのか、チラッと私の方を見て、
「彼がね、こっちの方が似合うって言うから〜コンタクトにして、髪も短く切ってみたの〜」と言っている。
「素敵〜凄く良い〜《《あの人》》も惚れ直したんじゃない?」と取り巻きが言っている。
「ヤダ〜! 出産の時、髪が長いと面倒だからね」と、もう取り巻きに、妊娠中であることと、相手が智之であることを告げているようだ。
そして、更に、
「山脇さん、もう会社辞めちゃうの?」
と取り巻きたちが聞いている。
「うん、悪阻が酷くて、突然だけど、もう今月付けで辞めようと思ってるの」と。
「そうなの? あと1週間もないじゃない?」
「うん、もう辛いからこのまま、有休を取ろうと思って、今日はご挨拶に〜」と言っている。
「あら、そうなのね〜元気な赤ちゃん産んでね。おめでとうございます」
と言っている。
美和は、
「何あれ? わざと聞こえるように、マウントでも取ってるつもり? あんな屑野郎、クソ女とお似合いだわ!」と、怒っている。
「ふふっ」
あまりにも美和が怒っているものだから、私は、思わず笑ってしまった。
「ん?」と私を見て、美和は驚いているが、
「ありがとう〜美和!」
「ううん、本心だし」と言っている。
「私ね、全然悔しくないの」
「うん、だよね。今幸せだもんね」
「うん、それに、あの|女《ひと》たぶん、すぐに後悔するんじゃないのかなあ? って思ってる」
「そうだよね」
「うん。だって、《《アイツ》》は、きっと又同じことをするよ! 一生変わらないもの」と言うと、
「だよね」
「それが分かったから、逆にご愁傷様って思ってる!」
「うん、そうだよ! やったことは、全部自分に返って来るのにね〜きっとアイツら、バチが当たるよね〜」と言う美和。
「うん。こうやって笑っていられるうちに笑っておいた方が良いと思うの」と言うと、
「そうそう! 笑っとけ、笑っとけ! 今のうちだぞ! そのうち後悔するんだから! あ〜もう人のことは、どうでもいい! 辞めるって言ってるし、せいせいするわ! 自分たちの幸せだけ考えよう!」
と言う美和と、2人してニコニコ笑っているものだから、
山脇さんは、
──どうして男を寝取られて笑っているの?
というような、少し不思議そうな顔をしている。
モテ男をゲット出来たと思って、マウントをとってるつもりかもしれないが、あなたが寝取った男は、どうしようもない屑だから、又きっと誰かに寝取られるよ!
それとも、私がフラれて泣いてるとでも思ったの? どちらが幸せになれるのかしらね?
「そのうち、分かるよね〜あはははっ」と、高笑いをする美和
「美和! ふふふふっ」つられて私も笑ってしまった。
「じゃあ、行こうか!」
「うん」と、私は、山脇さんの方をチラッと見て、にっこり会釈をした。
そして、そのままニコニコしながら、食堂を後にした。
「何あれ?」と取り巻きから聞こえていたが、
「ハハハハッ!」と、また、高笑いをする美和。
「ふふっ、美和!」
「良し!」とガッツポーズをとっている。
美和は、私の最強の味方だ!
──人生、笑ったもん勝ち!
美和から教えてもらった。
コメント
1件
人を騙して勝ちとった愛情なんて絶対に幸せになんかならないのにね