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 翔馬のことを簡単に美和子に話した。
もともとは家族…特に夫に不満があって話し相手を探していて出会ったということと、社長という職業、それから今はトラブルがあってお金が自由にならなくて、援助していることを。
 美和子は、私の打ち明け話を驚くでもなく淡々と聞いている。もっとびっくりしたり、興味津々でぐいぐい訊いてくるかと思ったのだけど。
どことなく面接試験を受けているようで、こちらも落ち着いて話を盛ることもなくあったことを話していった。電話でのセックスなんて話は出せなかったけど。
 
 「…そっか、お金を貸したのか…」
 「うん、でも、もうすぐ返してもらえそうなんです。だからほっとしてるとこで…」
 「それってさ、ちゃんと書面に残した?日付とか金額、返す期日とか署名を入れて」
 「…ないです。あ、でも、先週会った時に4万返してくれました。これまでに借りた分の一部だけど返しておくねって」
 「え?どういうこと?スマホ代の2万を受け取って、4万はそれ以前の分として返してきたってこと?」
 「はい、だから、ホッとして…」
 あーっ!とか言いながら、何やら誰かにLINEを送っている様子の美和子。
 「えっと、何か?」
 「うん、ちょっとね、あ、」
 すぐに返事が来たようだ。内容を確認してすぐに話に戻る。
 「ね、駒井っち、そのこと、まさかご主人は知らないよね?お金って、相当な金額だったりするの?一部が4万てことは」
 100万を超えて生活費にも手を出したとは言えなかった。金額を少なくしておくことにする。
 「全部で30万くらい…かな?あ、でも自分のパート代からだから、うん、そこは…」
 「はぁーっ!」
 大きな大きなため息の美和子。
 「え?」
 「それ、返してくれないと思うよ。ってか、そんな赤の他人にお金を渡すときは、あげるつもりじゃないとダメだよ」
 「でも、返してくれたし」
 「たとえばさ…返してくれなかったら、カレのことを詐欺で訴えようとか考えたりした?」
 「あ、うん、それは考えた…」
 「で、もうお金は貸せないと言ったら、一部だけどと、返してきたんだよね?」
 「うん、ゴタゴタが片付いたらまとめて返してくれると思う…」
 「駒井っちが思うだけだよね?返すってカレが約束すると借用書を書いたわけじゃないよね?」
 「あー、うん、それが??」
 「一回も返してこなかったら詐欺罪で訴えることができたかもしれないけど、一回返してきてそれを駒井っちが返済として受け取ってるから、訴えることはできないと思う。カレには騙そうという意志はないし、実際に返してるわけだから、詐欺は立証できないよ。書面もないから返済を迫ることも難しそう」
 ___え?
 一気に目の前が真っ暗になった。美和子の声が遠くに聞こえる。