なるほどね、ナッキやサニーのティターン化、それに配下達の悪魔化…… それは一見偶然の産物であるかに見えるが、ここまで観察を重ねてきた私にはそうは見えない。
何しろこの世界には運命の因果を左右する、いいやハッキリ言って暴力的なまでな強引さで捻じ曲げてしまえる存在が残されている筈だからである。
その名はレグバ・ラダ、ついでに言えばメット・カフーオハバリ様、この五柱の存在だ。
彼らは自分達の総意だけに基づいて、歴史のそこかしこに勝手に干渉して来たのだろう。
既に私を生き永らえさせる為に、時空を移動してやり直すための手段を持っていたカーリーを失ったとは言え、彼らが全ての生物、この時点では地上に進出した割かし新らし目の進化を果たした生き物達の絶滅の危機に、指をこまねいて、静観を決め込めるとは到底思えない。
ナッキの額にウランを埋め込む事も、それをサニーの体に移す事も、ヘロンが見つけた新たなウランでナッキを更なる進化に誘う事も、あのレグバ達なら容易に運命の変遷に因って成し遂げてしまうんじゃあ無いだろうか?
穿(うが)った考え方かもしれないが、コユキと善悪を追った三回に渡る観察で得た知見では彼らがこの滅びの初期段階で何もしなかったとは到底思えないのだ。
父の言葉を借りれば、かつてガイアだったレグバ四柱とテイアであるメット・カフー、彼らも又、必死に今や一つとなったテラ、地球、この星とそこに生きるあらゆる生命の存続に心を砕いていたのでは無かろうか?
つまり星の意思である。
いや、その後次々とテラを訪れたウラヌスやクロノス、四魔神とスプラタ・マンユ、ネヴィラスやサルガタナス達の様な陪星の数々、空を焦がして堕天した全ての星々の意思なのではないだろうか?
勿論、様々なグリモワールに登場する著名な悪魔ばかりでなく、名も無き天体に由来する悪魔、例えば大気圏で燃え尽きてしまった彼らであってもこの地球(ほし)を構成し、環境に数多(あまた)の影響を与え続けているのだから、それら全ての集合意思、願いの様な物なのだろう。
アートマンとして個を維持している悪魔達が、まるでブラフマンの如く集合した願いを持つと言うのは甚(はなは)だ不思議な事ではあるが、惑星規模で考えればやはりそう表現するしか無いだろう。
ん? あれれ? と言う事は……
小さな小さな太陽系全体で考えた時、いやいや、この天の川銀河だけで考えても、超端っこに位置する地球、文字通り数え切れない程存在している惑星の一つ、小さくて極小で、本っ当ーぅに矮小な惑星のアートマンって……?
無限とも思える程広大に広がっている、ら、し、い、宇宙の中では…… えっとぉ、中庸なブラフマンの構成要素に過ぎないのだろうか? まっ、まさか!
言うまでも無く、今の姿は兎も角、私、観察者とて元は皆さんと同じ人間、ニンゲンである。
一人一人の心に灯った情熱に一喜一憂した経験だってちゃんとしている、所謂(いわゆる)一般人だったのだ。
たった一人の思い、決して他人に譲る事が出来ない、掛け替えない願いが中庸なブラフマンの一部だとは思いたくない事実だが…… はて?
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