コンコンコン
「やぁ、どうぞ入って。」
私の声と同時に開かれたドアには可憐な少女が立っていた。今まで見てきた物の中でいちばん透き通るような彼女は一礼を済ませて私に近づくと柔らかい声で
「あなたが探偵ヒーターさんですか?」
と聞いた。勿論、と言う代わりに私はこの探偵事務所の名刺を差し出すと彼女はそれを丁寧に
受け取り、感謝を述べた。
「どうぞ、座って。要件をゆっくりとお話ください」
彼女にそう言ったあと、私もすぐに対面のソファに座る。それが、相手に座りやすいようにする小技だからだ。
「実は、私誰かに追われてる気がするのです」
「ほう、それは今も?」
「今は感じませんが、ここに来るまでは」
「なるほど、心当たりは?」
そう聞きながら彼女の顔を一瞥した。
その姿が理由なのは明白だったからだ。
「すみません…私には分かりません」
「そうですか、それを探るのも探偵の仕事です」
「ありがとうございます」
「今回の仕事はまず、誰に追われているか、そしてどうして追われているかを突き止めれば良いのですね」
「はい、代金の方は?」
「前金として1500G、難易度次第では追加料金を貰います」
「分かりました、思ったより安いですね」
「ええ、あなたが可愛いので見栄張ってます」
「そういうのは言わない方がいいですよ」
「その発言で傷ついたので追加料金いいですか?」
「すみませんでした」
「冗談です、いつからその視線を感じるようになりましたか?だいたいでいいです、何処からとかも教えてください」
「いつから…。1週間前くらいからですね」
「ほう…」
1週間前なら
・近くに国営の発電所ができた
・計画停電が起きた
・脱走犯がいたという噂
という、繋がってそうで関係なさそうなトピックばかりだ。脱走犯がいたという噂もニュースになってるわけでもないのでストーカー魔な可能性は低い…。現状はただ一目惚れしてしまった男に説教をすれば軽く収まる確率が高いだろう。
「わかりました、じゃあ、逆にそいつを付け回してやりましょう」
「そんなこと出来るのですか」
「ええ、探偵はよく浮気の捜査とかで気づかれないように追うことがあります」
「なるほど」
「あなたの周りに不審な者が居たらその人にくっついて行くのであなたはこれから普段通り帰ってください」
「わかりました」
「少し待ってください。変装と言うには名ばかりですが溶け込むような服装に変えてきます」
「はい、ありがとうございます」
彼女が深く頭を下げ、長い髪が揺れるのを見てから私はこういう仕事用の服装に変えて出発した。
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