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校舎の中の教室でも、特に広い多目的教室で、入学式と開校式が行われる。
私は「式中は生徒の親のところに座っててね」と白河先生に言われたので、親たちの中に座ることにする。
朝の9時頃。
入学する生徒たちと、その親たちがやって来ている。
白河先生の代わりに私が受付を担当した。
先生は、生徒たちの教室で待っているからだ。
その親のうちの1人の親が、「ここはとても気持ちの良い場所ですね。こんな良い学校を開校してもらって嬉しい限りです!」と笑顔で言ってくれた。
その親の隣には、背が小さく、優しそうな顔、それにハーフアップの髪型の女の子がいた。
私は、「いやいや…ありがとうございます。私も嬉しいです!」と言い、その女の子にそっと手を振った。
するとその女の子も、優しそうな笑顔で手を振り返してくれた。
朝からそんな良い出来事があったので、私はとても気分が良かった。
入学式が開式する時間になり、私は多目的教室へ向かう。
教室に入ると、生徒の親たちが既に座って待っており、私はそっと一番端の後ろの席に座った。
すると、白河先生がやって来て、「凛さん、ごめんだけど、放送の事をすっかり忘れてたから、やってくれないかな…?」と言ってきた。
放送とは司会の事。
白河先生1人では確かに進めるのは難しいはず。
なので、「うん、良いよ」と言い、教室の前端に連れて行かれる。
「この紙に書いてある通りに言ってもらったら良いからね。入場は僕が出ていってすぐに言ってくれたら良いから。」と白河先生は言い、教室を出ていった。
なので言われた通り、白河先生が完全に出ていったのを確認する。
そして、「只今より、夜空の学校第一回入学式を始めます。」と言い、「新入生が入場します。」と言った。
私の声が響くと、白河先生と新入生たちが教室に入場してきた。
白河先生のスーツ姿はやはりかっこいい。
親たちの拍手が響き渡る。
そして、生徒はそれぞれの椅子の席に着き、先生は、生徒の列の横にある椅子に腰を下ろした。
私はさっきの紙を見て、「学校長の白河優輝様からの言葉」と言う。
白河先生の事を学校長なんて言うのは、私にとっては、正直、少し違和感があった。
すると、白河先生が席から立ち、前へ出てくる。
「皆さん、ご入学おめでとうございます。この学校の校長になります、白河優輝と申します。」と言う言葉と共に始まった。
「自分らしさを忘れずに、マイペースに成長していけば良いのです。ここの学校には何も決まりなんてありません。勉強も自分のやりたいものをやりたい分だけすれば良い。とにかく、自分らしさを失わないで欲しいのです。」と先生は話した。
その後に式は終了し、私は片付けをしていた。
1時間後、「あっ…ごめんね凛さん、ありがとう。片付けしてくれて」と白河先生が言いながら来てくれた。
「頑張ったね!凄くかっこよかった!」
「そんなに褒められると恥ずかしいよ…」と笑いながら先生は返す。
「あの言葉、実は凛さんにも聞いてほしいと思って言ったんだよ。」
「え?」
「凛さんも、中学校の頃から頑張り屋さんだから。」
白河先生が優しい声でそう伝えて来た。
「…自分らしくってこと?」
「うん。自分らしく、少しずつ少しずつ。」
先生はそう言うと、にっこりと優しい笑顔で微笑んだ。
私は、白河先生のその優しさについつい涙を流してしまった。
しかし、先生は優しい顔で見守ってくれている。
自分自身、小さい頃から真に愛情を貰ったことがなかった。
けれど、白河先生はそんな孤独な私を助けてくれた。
励ましてくれて、優しく見守ってくれて、どんな時も私に寄り添ってくれた。
本当に、優しくて、素敵な性格の持ち主。
だからこそ、中学2年生のあの時、私は白河先生を好きになったのだろうと思う。
私は袖で涙を拭い、笑顔で「ありがとう。」と言った。
白河先生は、2回頷いて、「こちらこそ。ありがとう。これからもよろしくね。」と返してくれた。
「あっ…そういえば、凛さんに渡したいものがあるんだよね。」
「なに?プレゼント?」
白河先生は、スーツのポケットから小さな箱を出し、開けた。
箱の中には、金色にキラキラと輝いている指輪が入っている。
「あの…凛さん、僕とずっと一緒に生きてくれますか?」と白河先生は言った。
私は迷うこと無く「うん!ありがとう!」と答えた。
私のその答えを聞いた白河先生は、2回頷いた後、にっこりと顔をさせた。
「だいぶん前、何かあったら話してね。僕が守ってあげるから的な約束したでしょ? 」
「うん、展望台で言ってくれたやつね。」
と先生は言い、私と手を繋いでくれた。
これからも、ずっと白河先生と共に生きていく。
周りの人からどう思われたっていい。
私たち2人のたった一度きりの人生なのだから。