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⚠Attention⚠
以下には次の内容が含まれます。
・帝国主義および植民地支配への批判
・カシミール紛争に関する話題
・イギリスの分断統治に対する批判
・一部強姦を仄めかす描写
政治的意図を含みません……と申し上げたいところではありますが、もはや言い逃れできないほど思想が強くなっております。
また、あくまでもこれは二次創作であり、作者の個人的見解と偏見が多分に含まれております。
コメント欄での特定の国・地域に対する誹謗中傷はお控え下さいますよう、ご理解とご協力をよろしくお願いいたします。
「あー、腰痛ぇ……」
「奇遇だな、私もだよ」
翌朝。太陽が大地を焦がし、何処かで鶏が鳴く。
パキスタンは、ズキズキと痛む腰をさすりながら、寝床から体を起こした。
目覚めをとっくのとうに迎えていたインドは、寝台の上で胡座をかいて微笑んでいる。
「むしろ私の方が労られるべきではないか?散々出してくれたようだな」
「……誘ったのはあんただろう」
「ふはっ、それもそうか」
すでにインドは湯浴みを終えたようで、ゆったりとした着物に身を包んでいる。
一方、起きたばかりのパキスタンは、全身ベタベタで丸裸といった状況だ。
「10時から商談があってね。私はあと一時間くらいでここを出る」
「そうか」
「朝餉にありつきたければ、早く身を清めてくるといい」
ぼんやりしたまま、インドの言葉通り、パキスタンはさっと水を浴びて戻って来た。
シャワーを浴びた途端に目が覚めて、昨夜の気だるさも、かすかに残った情欲も水に流れていく。
「で、相手は誰だ」
「イギリスさんだよ。……まあ、昔のよしみもあるからね」
チャパティを口にしつつ、パキスタンは向かい合って飯を食うインドに問いかけた。
目を伏せて答えたインドの首元に、昨夜、パキスタンがつけた赤い跡が見える。
「君も来るかい?どうせ暇だろう」
「あんたって、いちいち気に障るな……まあ、構わないが」
「そりゃ助かる。用心棒兼小間使いが一人欲しくてね」
「……おい」
どうして構わないと言ったのか、それはパキスタンにも分からなかった。
もしかすると、昨晩無理をさせたという負い目があったのかもしれない。
それとも、ただ単に、昼間のこの男がどんな顔をするのか、興味があっただけか。
「彼は気難しいのでね。スーツが無難だろう。手元にないなら貸すぞ」
「ああ」
静かな時間。
開け放した窓から風がそよぎ、インドの耳飾りを揺らした。
目を伏せたインドの、長い睫毛を宛もなく見つめるパキスタンに、顔を上げた彼は優しく微笑む。
その笑みに、居た堪れないような決まりの悪いような気持ちになって、パキスタンはそっと目を逸らした。
「なんだか、懐かしいな」
インドの言葉が、宙に溶けていく。
言葉をのみ込んだパキスタンも、微かに首を揺らした。
そうだ、昔はいつもこうして、二人で向かい合っていたというのに。
(……なぜだろうか)
いつの日からか、この穏やかな時間は、夜を共にした翌日だけになっていた。
「本日はどうも。遠慮はるばるお越しいただき、ありがとうございます」
「いえ、こちらこそ。よろしくお願いしますね、インドさん」
ムンバイにて。
インドは、ロンドンからやって来たイギリスと握手を交わす。
遠慮はるばる、とイギリスを気遣っているインドだが、彼もまた、インドのド田舎から列車に揺られてきた身である。
が、そんな苦労を露ほども見せず、インドは爽やかな笑みを浮かべた。
(へぇ……)
こんな顔もするのか、この男は。
流石、今をときめく新興工業国だ。
なんてぼんやり考えながら、パキスタンはインドをじっと見つめていた。
「……おや、そういえば今日は、パキスタンさんもご一緒でしたね」
「ああ失礼。急遽、同席させることになってしまって」
ソファに腰掛けて、机を挟んで向かい合う英印。
そのインドの二歩ほど下がったところで、パキスタンはただ、じっと立って気配を殺していた。
「いえ、構いませんよ」
イギリスの目がこちらを向き、パキスタンは目礼をする。
どうぞお掛けください、とイギリスに言われて、パキスタンもインドの隣に腰掛けた。
イギリスの青い目がすっと細まり、こちらを見定めるかの如く見つめてくる。
「さて、本題に移りましょうか」
「ええ、英印貿易の話ですが──」
が、直ぐに興味を失ったのか、すっと視線をそらされた。
パキスタンは、その時初めて、自分が息を詰まらせていたことに気づいた。
気づかれぬよう、細く小さく息を吐き出す。
(この人……苦手なんだよな)
見定めの視線が、腹を見透かすようなブルーアイズが、何を考えているのか分からない笑みが。
そして何より──インドとともに、自分を飼い殺した歴史が。
「2019年のインドさんとの貿易額は233億ポンド……ふむ、もう少し増やしたいですね」
「ええ。30年までに、倍増させていく方向でよろしいですか」
並べてみると、よく分かる。
インドはイギリスに、大層よく似ている。
笑い方、交渉術、操る言語──よく似ているというよりは、“よく似せている”と言うべきか。
どちらにせよ、パキスタンにとって、今のインドは、いつものインドよりも気に食わなかった。
頭では理解しているのだ、これがインドの生き残り方であったということを。
理解は、している。でも、気に食わない。
「それについてですが……どうでしょう、インドさん。私たちで、手を結びませんか?」
「ほう、FTAをお望みで?」
それでもやはり、パキスタンは思うのだ。
俺はイギリスが苦手で、インドは……嫌いだ、と。
ああ、嫌いだ。
別に苦手じゃない。
受け入れられないわけじゃない。
「──ありがとうございました。ではまた」
「ええ、快いお返事を期待しておりますよ、インドさん」
ぼんやりしている間に、話し合いは終わっていたらしい。
立ち上がったイギリスを送り届けるために、インドとパキスタンは腰を浮かせた──しかし。
「……お二人は最近、仲がよろしいようで」
あ、不味い。
直感的に、パキスタンはそう感じた。
何がとは言えない──が、この男はまた、南アジアの二人に、波乱をもたらす気がして。
「ね、パキスタンさん」
「……ッ…」
硬直したパキスタンに、イギリスはにっこりと微笑んでみせる。
何か答えなくては、と思うのだが、いかんせんパキスタンは、イギリスが苦手なのだ。
(頷け……頷かないと……!)
頭ではそう命じているのに、体はピシリと凍りついたまま。
パキスタンの脳内が、緊張で真っ白になった──その時。
「──はは、そうでしょうか」
「ええ!いやはや、喜ばしいことです」
「…ぁ」
さっ、とパキスタンとイギリスの間に、人影が立ちふさがる。
もちろん、インドだ。
インドが、イギリスの視線をパキスタンから逸らすために、壁になったのだ。
「数年前はどうなるかと思いましたが、お互いの摩擦が上手く収拾できたようで。安心いたしましたよ」
「ええ……まあ、そうかもしれませんね」
曖昧な笑みを浮かべるインドに、イギリスはなおも言い募る。
薄くて形の良い、イギリスの唇が、ゆっくりと上下した。
「対立を乗り越えて、新しい関係を築き上げていらっしゃるとは」
封じ込めたはずの憎しみが、
「私も少なからず責任を感じておりまして。あんなにも仲の良かったお二人を、引き裂いてしまった……」
疼く気がした。
「しかし、本当に良かった。紛争は、なければないほど良いですからね。……特に、経済発展には」
「……ええ」
思い出したくもない記憶の箱が、
「お二人、特にインドさんの成長は、大変著しい。今後とも、よろしく頼みたいところです」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
こじ開けられる音がした。
「まあ、数世紀も続く争いは、なかなか簡単には解消しないでしょうが。
民族対立というのは、我々皆で、向き合っていかなくては」
「はは、そうですね」
──私のせいでは、ありませんからね
副音声と言うのだろうか。
イギリスの真意が聞こえたようで。
それでは、と去っていこうとするイギリスを、インドが丁重に見送っている。
モノクルの奥のアーモンドアイが細められ、彼が満足げに微笑んだのが分かった。
「ははは、──ですか、」
「ええ、──よ」
何か話している、何かに笑っている。
それでも、パキスタンの耳には何も入ってこない。
(嗚呼……苦手だ)
じっと立ち尽くしたまま、イギリスの背広が遠ざかっていくのを、ボンヤリと見つめていた。
【パキスタン視点】
今からずっとずっと昔のお話。
世界大戦なんて予想もしてなくて。
植民地支配だとか帝国主義だとか、そんな言葉すらなくて。
ヨーロッパやアジアという、区切られた世界の概念すら、俺達にとっては曖昧で。
『नमस्ते!!』
『お、兄貴。السلام علیکم』
それでも、賑やかに穏やかに、楽しく過ごしていた時代が、二人にもあった。
俺はいつも、兄から話しかけられるのを、ただ待つだけだったが。
『何してるの?』
『礼拝』
『?…楽しそうだな!』
インド大陸にはそもそも、統一王朝だとか主権国家なんてものは、古来からなかった。
今でこそ“化身”である俺たちは、その頃はまだ自分たちのことを、“なんか他とは違う、長生きする生き物”としか自覚していなかった。
『なぁ君、なんか食わないのか?』
『今月俺、ラマダンなんだよ。昼間は断食しなきゃいけないの』
『ふーん、そうなのか!』
永い永い時を、様々な王朝が現れ、そして消えていく様を見て過ごした。
文化や宗教が興り、そして廃れていく様も。
二人で、ずっと。ずっと見ていた。
『何読んでるんだ?』
『コーラン』
『面白いのか?』
『……まあ』
そのうちに、俺は西方から伝わった、イスラーム教とやらを受容した。
一方のインドは、仏教やらジャイナ教やら拝火教やらシク教やらキリスト教やら、様々な文化を齧っては放り、放っては齧っていた。
それが後々、ヒンドゥーと呼ばれる国教になるのだが。
『なぁなぁ!聞いたか?シナから使者が来るんだと!』
『へぇ』
『反応薄いな……』
『だってそうだろ、兄貴。最近、使者なんていっぱい送られてくるじゃないか』
古き良き時代─具体的には、大航海時代よりも前の時代。
俺たちのインド文明というのは、世界でも有数の先進地域だったらしい。
あちこちから商人やら使者やらが集い交わる、交通の結節点として、大いに栄えていた。
『そうそう、そういえば、ムスリムのキャラバンが来てるらしいぞ!』
『行く』
『ははっ、判断が速いな!』
そう言って、二人で手をつないで駆けていく。
信仰は違えど、主義は違えど、何だかんだ、上手くやっていた時期が、二人にもあった。
ずっと続くと思っていた、この暮らし。
──が、崩れるのは、一瞬だった。
『ごきげんよう、お二人とも』
『だれだ?』 『商人か?』
『いえ、イギリスと申します』
全身を“近代”で覆い尽くした男が、突如として現れたその日。
俺たちは互いに、“インド”と“パキスタン”になった。
『これから貴方がたには、我がイギリス連邦に、協力していただきたくて♡』
そして俺たちは、イギリスの一部となった。
イギリスが宗主国で、俺たちが植民地。
もっと簡潔に言おう──イギリスが搾取する側で、俺たちが搾取される側。
力を持つ者と、持たざる者たち。
『なぁ、パキスタン。これ、何に使うんだ?』
『さぁな。あへんっていうらしい。……おい兄貴、食うなよ』
『ふーん……食べ物じゃないのか』
よく分からないままに、言われるがままに、俺たちは命令通りの産物を作り出す。
他所から持ち込まれた作物を作り、イギリスの付け値で売る。
今風に言えば、植民地支配におけるプランテーションで働いていたことになるのだが、その当時はそんなこと、俺たちが知る由もない。
そのうちに俺たちも、だんだんと物心がついていく。
それは即ち、自分たちが搾取されていることにも、圧政を受けていることにも、気づくわけで。
『なぁ、パキスタン。イギリスさんが、ベンガルの徴税権いただきますね、って言ってるんだが』
『は!?ありえねぇよ!』
『だよなぁ……困ったよなぁ……』
だが、気づいたところで何かが出来る訳もない。
もちろん、俺たちだって抵抗はした。
シパーヒー用の銃弾に、豚や牛の脂が使われていることを知った俺たちは、怒りのままに力を振るい──そして、鎮圧された。
その後の幾度の反乱も、イギリスの圧倒的武力の下で、為すすべもなく蹂躙された。
最後の王朝──ムガル帝国は、滅びた。
その最期は、今までとは違った。
イギリスにくびかれて絞め殺される、なんとも無様で情けない終り。
そうして俺達は、“英領インド帝国”になった。
『困ったよなぁ、じゃねぇよ!蜂起だ蜂起!』
『パキスタン……』
そして、さらに困ったことに。
インドと俺は、この頃から段々、すれ違うようになっていった。
『…なぁ、パキスタン』
『おう、なんだ』
『………いや、なんでもない』
インドは、押し黙ることが増えた。
隠し事が増えた、一人行動が増えた、俺と目を合わせないことが増えた。
互いの、互いに対する懸念が、増えていった。
『──おや、ここにいらっしゃいましたか。パキスタンさん』
『……どうも、イギリスさん』
そんな隙を、イギリスは絶対に見逃さない。
『実は、小耳に入れたいことがありまして』
俺たちの心が離れていく隙を、彼は絶対に見逃さなかった。
少しずつ、少しずつ、そのヒビの入った関係に、イギリスは楔を打ち込んでいく。
『──は、インドが、おれを、』
『ええ、ショックを受けるだろうと思って、お話するか迷ったのですが……』
インドが、俺を疎ましく思っている、だとか。
インドが、俺と離れたがっている、だとか。
インドがもう、俺と顔も合わせたくないと言っている、だとか。
インドは──俺のことが大嫌い、だとか。
『……』
冷静になって考えてみると、これらが全く根拠のない、チンケな嘘っぱちであることは明白。
しかしこの時の俺は、インドへの不信感も相まって、イギリスの言葉を信じてしまった。
きっと、インドにも同様に、俺の嘘を流し込み、彼の憎しみを俺に向けていたのだろう。
『なら、俺だってっ……』
一国を支配するときに、一番手っ取り早い方法は、何か。
答えは簡単、内部で争い合わせることだ。
そうして国力を削ぎ、その国のヘイトを宗主国から逸らす。
『インドのことなんて、だいっきらいだっ……!』
だからイギリスは、俺のその言葉に、ニンマリと微笑んだのだった。
そうして俺たちは、道を違えた。
口も聞かず、目も合わせず、顔も見せない。
その軋轢が問題になったのは、第二次世界大戦後──俺たちが、独立することになった時だった。
『お集まりくださり、感謝します。インドさん、パキスタンさん』
イギリスに呼ばれ、俺とインドは、実に50年ぶりに顔を合わせた。
この時、会議の様子をパチリと撮った、白黒の写真の切り抜きが今、俺のスマホの待ち受けになっている。
『さて……これから、いかが致しますか』
イギリスは俺たちに、どのように独立するか──つまり、俺がインドから分離するか否かを、淡々と問うた。
俺の隣で、インドが拳を握りしめたのが分かった。
その震える手に、俺が手を重ねることは、もう、できなかった。
『もう貴方がたは、我々連邦の一部でもありませんから。私としては、どちらでも構いませんよ』
書類に目を落としたまま、イギリスは言う。
会議室の静けさが痛くて、そして、随分と変わってしまったインドを直視できなくて、俺はずっとインドから目を背けていた──しかし。
『統一インドで、独立したいです』
『は、』
俺は絶対に、分離独立するつもりだった。
インドだって、同じ考えだと思っていた。
だって俺達は、もうあの頃には、戻れない。
そんなこと、日の目を見るより明らかだった。
もう、無理だった。
手を繋いで仲良しこよしするには、もう、俺達は、互いを憎み合いすぎてしまった。
一つのインドとして独立するには、もう、俺達は、互いに離れ合いすぎてしまった。
なのにインドは、予想を裏切った。
『……兄弟ですので』
続けざまに発された言葉が、室内に響く。
そして──俺の頭の中でも、ぐわんぐわんとリフレインした。
は?
今更、兄弟だから、だと?
最初の感想は、それだった。
あんなにも俺を避けて、疎んで、嫌って。
何を今更、兄貴顔をするのだ、と。
可愛さ余って憎さ百倍。
いや、千倍にも膨れ上がった憎悪が、俺を突き動かす。
『いやだ』
次に浮かんだのは、沸々とした怒り。
その怒気を声に乗せて、俺ははっきりと拒絶した。
『……ッ…』
その時のインドの顔を、俺はよく覚えている。
今にも泣きそうな、弱々しい顔だった。
あとは、堕ちていくのみだった。
戦争して、戦争して、戦争した。
カシミールという地域を巡って、古は手を繋ぎあった俺たちは、殺し合いをした。
すき、きらい、すき、きらい
生かしたい、殺したい、生かしたい、殺したい
花占いのように、感情がくるくると巡って、俺はもう、どうしていいか分からなかった。
ただ、銃を取った。
第一次と第二次の印パ戦争は、両方とも、国連に仲介された。
決着が突かず、もやもやしたままの俺は──ここで、決定的な罪を犯した。
『う、ぁ……♡うそだろう……?』
『いいから……黙っててくれ!』
『んッ♡♡』
行き場を失った怨嗟ゆえか、はたまた押し込めた愛憎ゆえか。
講和に訪れた際、戸惑うインドを押し倒して、そのまま行為に及んだ。
理性的な交渉が行われていた部屋で、性交渉の淫らな音が響き渡る。
『んぁッ♡ナ、ナカはやめて、くれ……♡』
『ッ、嫌だッ♡』
『ぁ゛ッ♡……ひぁあッ♡♡♡』
インドが抵抗しないことを良いことに、思いっきりナカでぶち撒けた。
気持ち良かった、でも、満たされなかった。
『おい……その子、もしかして、』
俺が次に、インドに再会したとき、彼は見慣れぬ幼子を抱いていた。
俺と同じ暗緑色の瞳をした、インドによく似た男児だった。
でも俺は、もしかして、の疑惑の後を、続けることができなかった。
そんな俺に、微かに微笑んだインドは言う。
『バングラデシュというんだ。可愛いだろう?』
『あ、あぁ……』
バングラデシュという幼子は、ほとんど喋らなかった。
インドに話しかけられると、少しばかり嬉しそうに笑うだけ。
それはまるで、俺の若い頃のような──?
『私の国も安定してきたし、まあ、子一人養うくらい、どうってことないだろう』
バングラデシュを抱くインドは、随分と性格が丸くなっていた。
元々穏やかな奴ではあったが、輪をかけて優しさが滲むようになった。
……俺はなぜか、子を産むと人は変わる、という話を思い出した。インドは男なのに。
『それにこの子も、国の化身だ。ほんの数年で大きくなって、独り立ちしてしまうだろうから』
バングラデシュを見つめるインドの瞳に、例えようもない母性を感じて、俺はふっと目を逸らした。
俺の犯した罪が、取り返しのつかないものになっていく、そんな気がして。
そして、悟ったのだ。
俺たちはもう、あの頃には、戻れない、と。
続く
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イギリスがクズすぎて好きです。そうですよねあの英国紳士ですもんね。 イギリス受けしか基本見てこなくて、じゃんぬさんのフライギ見てた時は可哀想で可愛いイギリスだったのに…こんなにかっこよくなれるのかイギリス、お前は… あとはもう本当に例えが好きです。花占いなんか絶対思いつきませんし、本当に素敵な語彙力をお持ちで…尊敬します✨😭
初コメ失礼します!素敵な作品をありがとうございます! いやね、じゃんぬ様はお話に史実を挟んでくれるので歴史の勉強も出来てなおかつ、 お話が面白いのでWin-Winなんですよ! あとじゃんぬ様、お話の中で飼い慣らしたの上に小さく植民地と書いてある所があるじゃないですか、あれってどうやってます?できればでいいです!教えてください!
初めての親睦会は、パキスタン君からだったのですね。自分でもよく分からないくらいに、兄へ抱いている愛憎が膨れあがってしまったパキスタン君を、抵抗せずに受け入れるインドママ。統一インドで独立したいと言っていたことから分かるように、きっと、弟のことを心から愛していたのですよね。感動しました。 困惑しているインドさん、えっちです。ギャップ萌えです。 どこにでもいるような仲良し兄弟が、たった一国によってその運命を狂わされてしまうなんて。仲良しパートがキラキラ輝いていただけに、余計心を抉られます。兄弟の心が離れていく過程が事細かに描かれていて、瀕死です。 二国ともに相手の悪口を吹き込むなんて、イギリスさんは悪魔ですか?そのくせ喜ばしいだとか、安心しただとか。やはり悪魔ですよね。すぐに信じてしまうパキスタン君は、純粋で愛らしいです。 全体的に重めの話ですが、テンポも良く、読みやすい文章で、じゃんぬ様の表現力には驚かされるばかりです。帽子を脱ぎました。