テラーノベル
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…..深夜二時、
第一部隊 有明臨海基地・地下特別訓練室。
…その中で、最強と謳われる防衛隊の隊長は、人知れず仮想の敵にひたすらに銃剣を振るっていた。
ガキンッ!!
ドゴォォォン!!
……..それは、
異常な高出力で稼働するシミュレーションマシンの駆動音と、肉体が限界を超えて軋む音。
「はぁっ……!ぁぁぁアアッ!!」
ズドンッッッ
大型仮想怪獣の核を貫く、鋭い一閃。
飛び散った偽物の血が、マスクを装着した顔にビチャッと張り付く。
キィィィーーーーン
「ぃ゛…」
不意に、鳴海のこめかみにノイズが飛び散るように響いて、思わず顔をしかめる。
だが、関係ない。
………まだだ。まだ全然、足りない。
『NEXT STAGE. 仮想フォルティチュード 8.5』
「次だ……! さっさと次を出せ!!」
荒い息のまま、吐き捨てるようにオペレーターに言う。
拭い忘れた汗が目に入ってきて、視界がぼやけていく。
…..その滲んだ視界の裏側に、フラッシュバックしたのは、
薄暗い布団の中で、スクロールし続けたスマホの画面。
『第1部隊がいたのに死者数多すぎな気がする……』
『ちゃんと仕事しないなら税金返せ』
『こんだけ死んでるのに自称最強とかまじ笑えない』
『防衛隊っていつも遅くね?もうちょい訓練がんばれよ』
『鳴海隊長、なあ…..』
『四ノ宮長官が死んだのに、あの隊長は何やってたの?』
『娘が殺されました。怪獣が悪いことはわかっているけれど、部隊がもう少し早く到着していればと思い….』
『♯最強とは』
「……ッ!!」
ギリィッ、と奥歯が鳴る。
床を踏み込む足に、怒りと、それ以上の絶望を込めて力を叩きつけ、
その足が、強化コンクリートの床のひびを広げていく。
________ネットの有象無象が吐き捨てる、無責任な言葉。
ユイ
51
#クラウンクレイン
#ご本人様とは関係ありません
あざらし
619
普段なら、「素人がギャーギャーうるせぇ」と鼻で笑ってミュートにするだけの文字群。
……..だが、今は違う。
彼らの言う通りなのだ。
ボクは、ボクは「最強」なのに、あのバケモノを捻り潰せなかった。
あんなに憧れた背中一つ、守れなかった。
「ああああああっ!!」
仮想怪獣の群れに単騎で突っ込み、トリガーを引き続ける。
『怪獣が現れるのが、いつも自分の目の前だったら…、』
何度そう思ったことか。
でも、現実はそううまくいかないし、
ボクが長官を「死なせた」のも変えられない事実。
…..今更何をごちゃごちゃ考えてるんだ。
考えるより先に体を動かせ。
もっと早く、もっと威力を、もっと、もっと….
…….だめだ。
息が続かない。
専用スーツの排熱機能はとうに限界を超え、皮膚が溶け切りそうな熱を放っていた。
(……….くそっ、)
握りしめた銃剣の柄が、自分の血と汗で滑っていく。
それでも、動きを止めることはできない。
……….ピー、ピー、ピー、ピー!
『使用者の心拍数が規定値をオーバーしています。』
『バイタルサインに異常。直ちに訓練を中止し——』
「るせぇ!! 黙れ!!」
警告音を無視し、再び床を蹴ろうとした、その時。
ブツッ
不意に、訓練室の電源が落ちた。
仮想怪獣のホログラムが掻き消え、
静寂と、非常灯の薄暗い光だけが残る。
「……ッ、何しやがる!! オペレーター、誰の許可で——」
怒りに任せて振り返った鳴海の視線の先。
コントロールパネルの前に立っていたのは、オペレーターではなかった。
「夜分遅くまで、ご苦労なことですねぇ」
「……鳴海隊長」
つづく
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