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仁人が映っている画面が、パッとCMに切り替わった。
先程のアナウンスを聞いた限り、どうやら、この後仁人の特集がされるらしい。
俺は、混乱した頭で考える。
仁人の苗字は吉田だったはずだ。
だけど、先程聞こえてきたのは
『神屋 仁人』という名前。
神屋グループの社長に就任…?
神屋グループと言えば、日本一の大企業だ。いくつもの子会社を持ち、日本だけではなく世界にもシェアを拡げている企業。
…苗字からして、仁人は神屋グループの一族なのか…?
俺は、急いでテレビの録画を開始し、そのまま画面をじっと見つめる。
特集が始まった。
どうやら、1時間の特集らしい。
CMの時間や番組の概要説明などの時間を除いたら仁人の出演は40分ないくらいだろう。
俺は、聞き逃さないよう、息さえも殺したように静かに画面を見る。
番組が始まり、ナビゲーターが神屋グループの歴史や事業内容について説明していく。
そして、仁人へのインタビューが開始された。
海外の大学を卒業し初めは子会社へ一般社員の扱いで入社したこと、その後子会社の代表を経て、神屋グループの代表に就任したことなどが明かされる。
これからの経営方針やグループを発展させるにはどうしていくのかなどを語る。
そして、企業のことから個人の話へ。
「神屋さんは、神屋グループの跡取りとして誕生されましたが、今までで一切のメディア露出がありませんでしたね。」
「そうですね。神屋グループを継ぐことは生まれたときから決まっていましたが、親の方針によりグループを継ぐまではメディアには顔も名前も一切出さないってことになってました。」
「それはどういう方針で?」
「成人するまでの防犯の意味と、あとは驕らないように、ですかね。ありがたいことに神屋という企業は世に知られていますから…。」
「なるほど。確かに神屋グループほどの企業でしたら防犯の面を気にされるのも当然ですね。驕らないようにとは会社の力を自分の力だと思わないように、ということですかね…?」
「そうですね。幼い頃に大人達にちやほやされて勘違いしてしまうと軌道修正が大変なので。と言っても神屋と言う苗字は珍しいですし、小中の同級生だけは私が跡取りと言うことを知っていましたけど。」
「小中の、と言うと…高校は?」
「…高校は、」
それまで快活に話していた仁人が、少し言葉に詰まる。普通にみてる人なら気にも留めないくらいの一瞬の詰まり。
「私、幼少期から習い事や経営学の勉強やらで自由な時間が殆ど無かったんですよ。それで、普通の生活がしてみたいとお願いして、高校は地元を遠くはなれて母方の苗字を名乗って神屋であることを隠して生活してたんです。メディアに顔も名前も一切出してなかったから出来たことですね。」
「それは、漫画のような生活ですね…!」
「ははは、そうですね。マンションに一人暮らしで、一般的な男子高校生がギリギリ生活できる仕送りだけしてもらってバイトもしてましたよ。」
「バイトまで!」
「高校生活の間だけは絶対に干渉しないという約束で、家族はなにも言わないし、私もなにも話さなかったです。長期休暇に実家に戻り顔を出すくらいはしてましたけど、高校の時の私を知っている親族は誰もいないんですよ。高校の、あの時間だけは…神屋ではない自分の、ただの『仁人』だった人生は、なんか大切で、教えたくなくて(笑)」
「奥様にも?」
奥様、その言葉に頭をガツンと殴られたような衝撃が走る。
…結婚、してるのか……。
「そうですね、妻と婚約をしたのは大学卒業と同時ですから。…幼少期から面識はあり、いずれは婚約をと親からは言われてましたが、お互いに大学までは自由に過ごしてきたので、婚約前の交流関係は一切知らないですし、教えてないですね。」
婚約…
小さな頃から、婚約者候補が、いた…?
大企業の跡取りだから…?
「そうなんですね。高校の同級生の方がこの特集をみたら驚かれるのでは
?」
「そうでしょうね(笑)本当に誰にも言わなかったですし、卒業と同時にすべての連絡を消して…神屋に戻るために全て断ち切ってしまったので…皆びっくりしてると思います。」
「高校の同級生に伝えたいことはありますか?」
「うーん…、そうですね。…ごめんね、かな。」
「ごめんね、ですか?」
「はい。当時は楽しすぎた高校生活に未練を残すのが嫌で全員と関係を断ち切ってしまったんですけど、実は神屋グループの跡取りなんだよねって伝えて、本当の私を知ってもらっても良かったのかなって。今では思います。」
苦笑いをする仁人。
そして、呟くように言葉を繋げる。
「…あと、1人…とても傷付けてしまった人がいて。」
「傷付けてしまった…ですか?」
「えぇ。自分が未練を残さないために、自分を守るために、嘘をついてしまった人が居るんです。情けない話ですが、…その人には本当に申し訳ないなと思ってます。」
「…なにか複雑な事情があるんですね」
「はい、秘密ですけど(笑)」
「気になりますが、親族にも教えてない高校生活を我々が探ることはできませんね(笑)」
……俺のこと…、だよな?
ねぇ、仁人…あの時、あの別れを告げた日もまだ俺のこと好きだった?
その後、最近の私生活でハマっているものなどいくつかの話題を経て特集は終了した。
コメント
1件
うわあ…第2話、一気に世界観が広がりましたね。仁人がまさか神屋グループの跡取りだったなんて。それに、高校時代の“秘密”も明かされて…「本当の私を知ってもらっても良かった」って言葉が切ないです。主人公が「あの時、まだ俺のこと好きだった?」って思うシーン、胸がぎゅっとしました。この伏線がどう回収されるのか、続きが気になります!