テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ここ数年でトップクラスに絶不調だ。
原因はわかりきっているのだが、いかんせんいつもよりだいぶ重い。
何とか起き上がって常備している薬を飲み、またのろのろとベッドに戻る。
まだ夜明け前。
隣で眠る奏斗の寝顔を見つめながら、私はもう一度意識を手放した。
「…………………」
誰かに呼ばれている気がする。
誰かって誰だよ、私は眠いんだ邪魔するな。
🍷「………?…、🌸」
🌸「……なと」
🍷「🌸?」
覚醒しかけているところで名前を呼ばれ、それが大好きな人の声だと無意識に感じたからか、声になっているかもわからない声を口にしていたようだ。
2回目に呼ばれた自分の名で、漸く重たい目を開ける。
🌸「………かなと」
🍷「うん、どした?体調悪い?」
心配そうに覗き込みながら、乱れて顔に掛かる髪をそっと直していく。
多少楽になっているから薬は効いてはいる、だがやはりいつもより重い。
問いかけに答えるにも思ったより時間がかかったけど、その間も奏斗はずっと私の頭を撫でていた。
🌸「………………せーり、いつもよりしんどい…」
🍷「あぁ〜そっか、じゃあ起きたくないね」
ちょっと待っててね、と寝室を出て行く。
暫くして戻ってきた奏斗は、ベッド横のサイドテーブルに水のペットボトルとお菓子、最後に薬を取り出して一緒に置いた。
なんでお菓子かって、生理中の私がいつもよりお菓子を食べたくなるから。
奏斗はベッド端に座り、また私の頭をゆるゆると撫で始めた。
🍷「俺もうすぐ家出なきゃいけない時間なんだよね。他に何かいる?」
🌸「だいじょうぶ、ありがと…」
🍷「うん、あんまり調子悪いようなら連絡してね」
🌸「ん〜、わかった」
🍷「じゃあもう出るね。何もしなくていいからいっぱい寝てな」
🌸「はーい…、行ってらっしゃい」
🍷「行ってきます」
おでこに掛った髪を横へ流し、そこにそっと口付けを落として。
行っちゃう、と思ったらなんだか寂しくて咄嗟に手を伸ばしかけてしまった。
ドアへ向きかけていたし気付いてないと思ったんだけど、全然見られてた。
奏斗は側へ戻ってベッド脇にしゃがみこむ。
🍷「……寂しい?」
🌸「〜〜ごめん…」
🍷「今は無理だから帰ったらね。甘い物買ってくるし甘やかしてあげるから」
その声がいつもより優しく響くから、目尻にじわりと涙が滲む。
情けないやら幸せやら、感情が制御できないのも調子が悪いせいにしておく。
私は声もなく頷くと、今度こそ奏斗を見送った。
* ┈ ┈ ┈ ┈ ┈ ┈ * ┈ ┈ ┈ ┈ ┈ ┈ *
放置はせず、でも構いすぎない距離で
いてくれたら嬉しいなって