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「望月さん」
「あっ、三輪ちゃん」
一人になった私の元に三輪ちゃんが戻って来てくれた。
「やっぱ麻弥ちゃんすごいですね~。お披露目だけでここまで賑やかな華やかなパーティーになるんですもんね」
「そうだね~。なんかさ、自分がこういうのもう遠ざかってるから幸せおすそ分けしてもらえるだけでホント有難いんだよね~」
「いや、望月さんがその気になればいくらでもいつでも結婚出来ると思いますけど」
「そっか~。確かに。自分がその気にならないのが原因だね~」
「望月さん。まだ・・やっぱり早瀬さんのこと?」
「あ~・・・」
あの後樹と別れたことを知っている三輪ちゃんが心配そうに尋ねる。
「早瀬さん・・ホントどこ行っちゃったんでしょうね」
樹は、結局社長がこの会社に戻って来たそのタイミングでまた元の部署に戻ってプロジェクトにも参加するのかと少し期待していたのに、戻るどころかその後会社にも顔を出さなくなった。
問題なくなれば、もしかしたらまた戻れるのかなって、ほんの少し思ってた。
だけど、麻弥ちゃんとのことも会社のこともクリアになったのに、結局問題がすべて解決しても何も状況は変わらなかった。
いくら考えてもその理由がわからない。
社長が戻って居場所が無くなったとか?
なら元の部署に戻ればいいだけなのに、それでも戻らない理由。
家も引っ越しして、会社にも来ていないだなんて、そりゃ会えるはずがない。
正直、直接メッセージを送るのも怖くてそれも出来なかった。
まだその連絡先が繋がっているのかもわからないし、送ったところで返って来ないのが怖い。
だから、現実を見るのが怖くてあれからここまでの一年。
私は結局また樹と出会う前の自分と同じように、ただひたすら仕事の日々に戻っただけ。
だけど、前と一つ違うのは、ただひたすら仕事ばかりの日々の中で、たまにふと、いつかもしかしたらまた樹と一緒にいられるかもしれないという、何の保証もない未来への希望を思い描いてしまうということだ。
そして、結局一年も経っているのに、私だけ気持ちが置いてけぼりにされて、まだ樹のことを引きずったまま何も変われていない。
きっともう樹は私のことなんて忘れてもっと先を見ているだろうし、すでに違う道を歩いているのに。
私もそろそろこの気持ち切り替えなくちゃ。
「あっ、望月さん。ちょっと取引先の方見かけたんで、ちょっと挨拶行ってきていいですか!?」
「あ、うん。行ってきな」
「はい!」
取引先の担当者を見つけて、三輪ちゃんが挨拶しに走って行った。
「よっ。仕事キリついたんだ?」
「あっ、北見さん」
すると、仕事仲間としてパーティーに招待されて先にいた北見さんが声をかけてきた。
「先方大丈夫だった?我儘言われなかった?」
「大丈夫でしたよ。でも北見さんいなくて少し寂しそうでしたけど」
「いや、あそこはオレのが話通りやすいから都合よく言ってるだけだよ。でも無事片付いてよかった。お疲れさん」
「なんとか納得してもらえたんでよかったです。また後日北見さん連絡しといてもらえたら助かります」
「了解。そこはオレの得意分野だから任せといて」
「ありがとうございます」
「にしても、昔考えたらホントは透子こういうこと憧れてたんだよな」
急に幸せそうにしている麻弥ちゃん達を見て、しんみりとする北見さんに戸惑う。
「あぁ・・まぁ、若かりし頃は北見さんとそういうの夢見てた時期もありましたね」
「あの頃もっとオレに自信があればなぁ~透子のこういう姿見れてたってことか~!」
「ホントですよ。あの時お嫁にもらってくれてたら、私もあんなに素敵な時間過ごせてたのに(笑)」
でもあのまま北見さんと別れたままだったら、こんな冗談も言えない関係で、まだ自分を好きになれていなかったかもしれない。
「でも、今こうやって仕事仲間として再会出来て、この関係を築けたのは私としては嬉しいです」
「仕事仲間か・・・。オレは透子と再会して後悔したけどね。なんであの時手放しちゃったんだろうって。あんなに尽くしてくれた透子、あのままオレが守ってやればよかったって」
あの時は本当にこの人に尽くすことや守ってもらえてることが何よりも幸せだった。
きっとあの時の自分なら、そのまま結婚出来た方が幸せだったと思う。
だけど、ずっとこの人に依存してた自分は、その後ホントに幸せになれてたのだろうか。
自分というモノがわからなくなって、ただ尽くして守られてる自分だけで満足して本当の自分として生きていってたのだろうか。
女性としての幸せならそれで良かったのかもしれない。
だけど、私は望月透子としての本当の幸せを手に入れて、自分らしく生きていきたい。