コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「私は感謝してます。今の自分の方が好きなんで。誰かに依存するんじゃなく、自分らしく自分としての幸せを自分で手にしたい」
それを気付かせてくれたのは、紛れもない樹だ。
誰でもない本来の私を認めてくれた人で、それを自分自身にも気付かせてくれた人。
ずっとそんな自分を遠くから見て来てくれた人。
「自分の幸せと人生は自分で決めます」
もうそこは迷わない。
例えこの先永遠に樹と再会することがなくても。
例え再会しても、結局元に戻れなくても。
私は私の人生を生きていく。
自分が好きになれる人生を。
「そっか・・・。ならそこにオレが入れる要素は少しもない感じ?」
「はい。残念ながら」
「ハッキリ言うね~」
「そこは勘違いされても困るんで」
「わかった。でも仕事上でのサポートはこれからもさせてよ」
「それはもちろん。そこは頼りにしてます」
うん。この人はとはこういう関係性が一番居心地がいい。
きっとこの人は大人すぎて自分が甘えてしまって依存してしまうから。
だけど、そんな自分は自分じゃないから。
自分が好きな自分じゃないから。
「アイツ・・・早瀬くんとは最近会ってるの?」
「いえ。一年前に別れてから全然」
「えっ?そっからずっと!?」
あまりの長さに北見さんが驚く。
「だってもう別れましたし」
「いや、でも会社でたまに会うとかあるでしょ」
「ねぇ。私もそう思ってたんですけどね。今はどこで何してんだか・・」
「あっ、そういえば、ずっと会社来てないんだっけ」
「はい」
「なんで?」
「知らないですよ。こっちが聞きたいくらいです」
「会社辞めたの?」
「さぁ? 別れてるんでわかんないです」
「連絡も取ってないの?」
「はい。取る必要ないんで」
「あっさりしてるね~」
「まぁ。二人で決めたことですから」
「アイツになら透子任せてもいいかな~って思ってたのに残念」
「えっ?そうなんですか?」
「アイツ、ホント透子を誰より大切に想ってるの伝わって来てたから。結局別れたって聞いて、ちょっと意外だったっていうか」
「好きでもうまくいかない縁ってあるってことですよね。まぁもう・・終わったことです」
「そっか・・・」
「望月さん!いました!」
「ん?何が?三輪ちゃん」
三輪ちゃんが少し興奮気味で戻って来て何かを伝えて来た。
「早瀬さんです!あっちの方に早瀬さん来てました!」
その名前を聞いて落ち着いていた心臓が急に跳ね上がる。
もう終わったことだと言い聞かせてたとこだったのに、いざ名前を聞いて、すぐ近くにいる状況は、自分でもどうしていいかわからない。
会いたいけど、会うのが怖い。
樹から会いに来ないのがすべての理由だ。
きっと今ならすぐにどんな状況でも会いに来れたはずなのに、樹は会いに来ない。
今まで一度もそうして来なかった樹の前に、私は出ていくことは出来ない。
「行って来いよ」
「でも・・・」
「望月さん!こっちです!」
戸惑いながらも北見さんに背中を押され、三輪ちゃんにも手を引っ張られて、樹がいるであろう場所に足を動かす。
「あ、あそこです」
三輪ちゃんが遠くの方を指さした方向に、その姿は確かにあった。
・・・樹だ。
一年経った樹は少し頼もしく見えて、そこで知り合いと話している樹を遠くの方から見つめる。
なんだ。生きてんじゃん。
頑張ってんだね、樹。
なんか少し成長したように見えるその樹の姿を見れただけで、気持ちがスッとした。
私が傍にいなくても、樹は元気に頑張っていた。
うん。それだけで充分だ。
結局そこには私の居場所はなくて、樹がいるその場所で一人頑張ってるんだから。
私がもう関わる必要ない。
「三輪ちゃん・・いいや。大丈夫」
「えっ?何がです?今行かないと早瀬さんまたいなくなっちゃいますよ?」
「うん。いいよ。大丈夫」
「望月さん・・いいんですか?せめて挨拶くらいだけでも」
「向こうは多分それ望んでないから。今は、会わないでおく。ありがと、三輪ちゃん」
「望月さん・・・」
三輪ちゃん、ありがとう。
でも、なんかね。
今の樹見て、一瞬感じちゃったんだ。
なんか私の知らない樹みたいで。
もう違う道歩いてるんだなって、そう思っちゃったんだ。
樹の隣にいれる自分がもう想像出来なくなっちゃった。
もう知らない世界で知らない樹として、きっと頑張ってる。
だから、もう私の居場所はそこにはきっとない。
今はもうきっと新たな場所で変わってしまった彼と、同じ場所で結局まだ変われていない私。
変わらなきゃいけないな、もう。
彼の為にも、自分の為にも。
自分らしく生きれるように。
自分を好きでいれるように。
お互い自分を好きになるための道を、これからも歩いて行けるように。