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声にならない夜①
「なあ、さっくん。ほんまに何の話やねん……」
こーじの声が低く響いた。けど、さっくんは視線をスマホに落としたまま、もう何も言わなかった。
「……俺、なんかした?」
「してないよ。ただ……俺が勝手に期待しちゃっただけ」
そう言って、さっくんはふっと笑った。けど、その笑顔はテレビで見るような明るいものじゃなかった。
「期待って、何を?」
「……気づいてくれないんだね、やっぱ」
「気づくって……ヒントくらい出せや」
ちょっと語気が強くなったこーじに、さっくんがやっと顔を上げた。
その目には、わかりやすいくらいの寂しさと諦めが混ざっていた。
「お前が彼女できたって噂、聞いたとき……しんどかった。ライブ中も、笑うのきつかった」
「あれ、ただの噂やし……」
「知ってる。でも、勝手に期待してた俺が、バカみたいだなって思っただけ」
さっくんの声が少し震えていた。
そんなの初めてで、胸の奥がずしんと重たくなる。
「……なんやねん、それ」
「ごめんね。変な空気にしちゃって」
そう言って立ち上がったさっくんの腕を、こーじは咄嗟に掴んだ。