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細かい時間は分からないけれど、世界が滅び、蘇り、滅び、蘇りを飽きるほど繰り返したある日のこと。
“世界の記憶を写す魔導書”の前に、“彼”は現れた。
彼はボロボロの、今では存在してるかすら分からない。“すまない一族”の英雄服を着ていた。
ボロボロのはずなのに、“血が一滴も出ていない”
いや、血は出たのだろう。袖口や所々が赤黒く染っていた。だが、そこから覗く肌には傷1つ付いていない。
『おや、珍しいお客さんだ』
この時も、彼は同じことを目の前の彼に話す。すると、
「・・・君が、世界の記憶を写す魔導書かい?」
そうか細く、目の前の彼は呟いた。目の前の彼は濁った水色の瞳をしていた。
(おや、もったいない、そんな綺麗な瞳なのに、その瞳は濁ってるじゃないか)
そう思いつつ、魔導書は“彼”を案内した。
✵✵✵✵✵
『はい、これが“君が記録されている本”さ』
と、魔導書は彼に本を手渡した。
人は生まれると、この図書館に新しい本として現れる。そして、その人の生涯を纏め、この図書館へと収められるのだ。
「・・・これが」
すると、彼は突然本の半分を掴み、引きちぎる。
“本”というものから離れた“紙”はバラバラと散っていき、光となって消えていく。
『ちょっ!?馬鹿じゃないのか!?そんなことしたら、君の記憶が!!』
だが、そのまとめられた本をまだ“その人”が生きている内に燃やしたり、捨ててしまったり、破いてしまえば、失ったページの内容を“忘れてしまう”それは、“決して思い出せないもの”になってしまう。魔導書は慌てふためく、すると、
「・・・もう、嫌なんだよ・・・」
彼はか細く呟き、涙を零した。
「・・・何度も、何度も、世界を救ってきた、救うために、人を殺してきた。中には、生徒とそっくりな“彼ら”もいた・・・」
そう彼“すまない”は語った。すまないは、“暗黒神・ヤマタノオロチ”との戦いで見事勝利した、だが、“不老不死”となってしまった。と
「・・・沢山沢山、人の死を看取ってきた、中には、救えずに腕の中で死んでいった生徒達もいた・・・ッ・・・もう、辛いんだッ・・・記憶を持っていない、彼らと出会って、過ごして、看取って・・・繰り返し繰り返し・・・もう、“疲れた”・・・ッ!・・・疲れたよぉ・・・ッ!!」
すまないはボロボロ泣きじゃくる。それはそうだ。何せ彼は“人”なのだ。
普通の人間が不老不死になってしまった。ただの人間だ。
人間は“不老不死”を探し求める。だが、“不老不死”になった者は精神を壊してしまう。 彼も、それの1歩手前なのだろう。
だが、魔導書には、不老不死を解く方法など“知らない”
それほど、不老不死になった者は恐らく、神様に作られた自分と、この者だけなのだろう。
『・・・そう』
すると、魔導書はふわりとすまないの目線に降り立つ。
『・・・君は、生徒との思い出を失ってしまうだろう。そのうち自分が何者で、誰なのか。きっと分からなくなってしまう。けれど1度繋がった縁は、解くことは難しい。だから、どうか君の元に、また、君の空いた記憶を埋めてくれる“誰か”に願うことを。僕は心から願うよ』
と、魔導書はそう願う。そして、完全に記憶を失ってしまう前に、魔導書はすまないに“情報”として、様々な“情報”を分け与える。
そして、記憶を全て失った彼は、うろ覚えに覚えている、懐かしい記憶を辿り、そして、あの場所、かつて、英雄が教師として働いていた地の地下へ向かった。
そうして、いつしか“世界の知識を与えるモノ”と言う名で噂され、そして、あの怪盗兄弟と出会ったのだった。