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「……癒良」
俺は眠っている癒良に優しく声をかけた。
「……ん…」
癒良は俺の声に反応したのか、ゆっくりと目を開いた。
癒良、顔色悪いな…さすがに、死ぬ前なんだから…
…ってなに考えてんだ、俺…癒良はまだ生きる。癒良はまだ元気だ。
癒良はっ……
「虹…ゆら、死んじゃうんだって…」
癒良は悲しそうな、辛そうな顔で俺に訴えてきた。
「……」
「虹…ゆら、あと19日しか生きれないんだって…」
…は?
「じゅう、く…にち…?」
いや、聞き間違いか何かだ。19日なんて、みじか…
「…うん…19日…」
…やっぱり、聞き間違いなんかじゃ…
「虹くん。私、お医者様とお話してくるから、癒良のことよろしくね。」
おばさんは医者の後ろをついていって、癒良のいる病室を出た。
「…癒良」
「ん?なぁに?」
癒良は少し顔色が悪いけど、口調はいつも通りだった。
「…無理、してるだろ?」
俺には分かった。癒良のことだから。
「無理なんて……してな…」
「してるだろ。分かるんだよ、俺には。」
俺の言葉に癒良は目を見開いた。
「言ってみろ。甘えたいときは甘えるんだろ?泣きたいときは泣くんだろ?」
…俺が小さい時、父親が死んで悲しくて、でも母親を心配させたくなかった。
だから、俺は全く泣けなかった。
…いや、泣かなかったんだ。
俺だって、悲しくて、悔しくて、泣いていたかった。
でも俺が泣いていたらいけないと思ったんだ。
…でも、癒良が言ってくれたんだ。
『虹、甘えたいときは甘えなきゃ!泣きたいときは泣かなきゃ!』
と笑顔で言ってくれたんだ。
だから俺は、癒良に泣いてすがったんだ。
癒良は、また目を見開いた。
…そして、癒良の綺麗な瞳から雫がこぼれ落ちた。
「うわぁぁあん!!!! …虹、!!私、わた、し…死になくない、よぉ…!!! …っ」
癒良が泣いているのを見たのはいつぶりだろう。
俺は泣いてる癒良を優しく包み込んだ。
「うっ…うぅ~…っ…うぅううぅっ」
癒良の頭をポンポンと撫でながら俺はつぶやいた。
「大丈夫、大丈夫、癒良は1人じゃない。大丈夫。」
『大丈夫、大丈夫。虹が泣きたかったら私のとこにおいで?』
癒良が言ってくれたよう、俺が言いたい言葉を…
癒良に、伝えておけるうちに…伝えなきゃ。
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