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廃工場の奥。雨に濡れた床に腰を下ろし、いるまとらんはようやく息を整えていた。
外はまだ追っ手が動いている気配がある。
いつまた見つかるか分からない。
🎼📢「……クソッ。どうして隠れ家がバレた」
いるまは舌打ちし、ポケットから小型の通信端末を取り出した。
暗号化された回線に接続し、仲間のひとり・真志(まし)に連絡を入れる。
📞「……いるまか。無事か?」
🎼📢「ああ、なんとか生きてる。けど隠れ家が襲撃された」
📞「……内部の情報が漏れてる。間違いねぇ」
通話を切ったあと、いるまはしばらく黙り込んだ。
その表情は険しく、まるで嵐の中の海のように揺れていた。
🎼🌸「……裏切り者がいるってこと?」
🎼📢「ああ。俺の仲間の中にな。……誰かが俺を売ってる」
🎼🌸「……」
らんは、胸がきゅっと締め付けられるのを感じた。
自分がいるまの重荷になっているんじゃないか――そんな不安が胸をよぎる。
けれど、その時ふと気づいた。
いつも守られてばかりで、自分から何かをしてあげようとしたことはなかった。
🎼🌸「……いるま」
🎼📢「ん?」
🎼🌸「俺、今……触れてもいい?」
一瞬、いるまの瞳が大きく揺れた。
🎼📢「……お前から、そう言うとは思わなかった」
🎼🌸「俺……ずっと、怖がってばかりだった。
でも、今は……自分から“触れたい”って思ってる」
らんは震える指で、そっといるまの手に触れた。
濡れたシャツ越しに、確かな体温を感じる。
いるまは黙ってその手を握り返した。
強さではなく、優しさで包み込むように。
🎼📢「……らん。お前にそう言われたら、俺、我慢できなくなる」
🎼🌸「……いいよ。我慢しなくて」
その言葉に、いるまの目が熱を帯びる。
ゆっくりと距離を詰め、額を合わせる。
雨音の中で、互いの息が混じり合った。
🎼📢「……チッ。こんな時に、なんでお前は俺を狂わせるんだよ」
🎼🌸「……いるまだから」
唇が触れた。
今度は、逃げるようなキスじゃない。
らんが自分から求めた、確かな答えだった。
外の雨と銃声の気配はまだ続いている。
けれど二人の間には、もうひとつの戦いが始まっていた――
“恐怖”ではなく“愛”に向かうための戦いが。