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雨はやんでいた。けれど、空気はまだ重く湿っている。
廃工場の薄暗い一角で、いるまは通信端末をじっと見つめていた。
――《真志:お前の居場所、もうバレてる。逃げろ。》
画面に映る文字を見て、いるまの表情が一瞬だけ曇る。
すぐに端末を閉じ、深く息を吸った。
🎼📢「……“真志”が、裏切ってやがった」
🎼🌸「……その人って、ずっと一緒にいた仲間なんでしょ?」
🎼📢「ああ。……十年だ。命張ってくれたこともある。
けど――組織の金を横流ししてた。俺を売れば自分の罪が消えるってわけだ」
らんは言葉を失った。
そんな世界の“裏側”を、まだ完全には理解できない。
でも、いるまの痛みはわかる。
彼の中で「人を信じる」ことがどれほど難しいかを知っているから。
🎼🌸「……それでも、今まで信じてた人なんだよね」
🎼📢「信じてたよ。だから腹が立つ」
拳を握りしめる音が静寂の中に響く。
その手が血が滲むほど強く握られているのを見て、らんはそっと手を重ねた。
🎼🌸「……ねぇ、いるま」
🎼📢「……なんだ」
🎼🌸「“誰を守るか”って悩んでるなら、俺はもう答え知ってる」
🎼📢「……?」
🎼🌸「俺、もう守られるだけの存在じゃいたくない。
だから、いるまが“自分を守る”って選ぶなら、それでいい。
俺は……隣で支えるから」
いるまの目が、静かに揺れる。
その言葉が、心の奥に突き刺さるようだった。
🎼📢「……ガキが、そんなこと言うなよ」
🎼🌸「ガキでも、本気で生きてるよ」
🎼📢「……らん」
名前を呼ぶ声が低く震える。
それは怒りでも哀しみでもない。
――どうしようもない、愛しさの滲んだ声だった。
🎼📢「……俺、もう誰も信じられねぇって思ってた。
でも、お前だけは……手放せねぇ」
🎼🌸「だったら、信じて。俺を」
らんの瞳がまっすぐにいるまを見つめる。
その真っ直ぐさが、心の闇に差し込む光のようで――
いるまは思わず、らんの頬を撫でた。
🎼📢「……チッ。ほんと、どうかしてる」
🎼🌸「知ってる。いるま、俺のことになるとすぐ乱れるもん」
🎼📢「うるせぇ」
言葉とは裏腹に、いるまは優しく笑った。
その笑顔を見て、らんの胸がぎゅっと締め付けられる。
だが――その穏やかな時間は、長くは続かなかった。
外から、鋭い銃声が響く。
その音は、確実に近づいてくる。
🎼📢「……来やがったな。真志の差し金か」
🎼🌸「……いるま!」
いるまはすぐに銃を構え、らんを庇うように前へ出た。
目の奥には迷いがない。
もう、“守るべきもの”は決まっている。
🎼📢「いいか、らん。――生き延びるぞ。ふたりで」
🎼🌸「うん」
その瞬間、再び嵐が始まった。
銃弾と風が交錯する中で、ふたりの影が光の中に溶けていく。
逃げるのではなく、一緒に生きるために。