テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
💛side
会社の同僚の辰哉が、スマホに向かって何やらにやにやしている。
気持ち悪いのでその姿にドン引きしていると、俺の視線に気づいたようで、誤魔化すように言った。
💜「アレだよ。溜まると、身体に悪いだろ?だからっ」
💛「……ふーん」
画面を見せてきたので横から覗いた。
そこに写っているのは、若い男の子の写真。こっちを向いてにっこりと人懐っこい笑顔を浮かべている。
💛「見たことない髪の色してんな」
💜「可愛くない?ピンク髪なんて俺でもしたことないわ」
辰哉は学生時代、相当やんちゃだったらしいし、昔写真を見せてもらったこともあるけど、確かに頭をド金髪に染めていたりして、そのヤンキーぶりをいかんなく発揮していた。一方で俺はどちらかというと真面目な学生だったから、性にも自分の欲望にもあけっぴろげなこの親友のことが時には羨ましくも感じていたりしているのだ。
ピンク髪の少年は、タンクトップの袖から、白いが鍛えられた腕を露出していて、笑顔でピースをしていた。 見ているこっちが元気になるような笑顔で、頬にはいくつか可愛らしいホクロが見える。なるほど、辰哉の好みのタイプだと思った。
💜「どう?今夜会うんだけど」
💛「そいつ、未成年じゃないの?気をつけろよ」
💜「えっ!?マジ?20って書いてあるけどなぁ」
辰哉は諦めきれない様子でスマホを見続けている。
そう。
俺たちは同僚にして、ゲイだ。
仲良くなったきっかけもそのせい。世の中は大分、同性愛に関してオープンになってきたとはいえ、まだまだ日陰の俺たち。仕事の後でたまたま入ったそういう趣旨のバーで辰哉とパッタリ会ったのがお互いのカミングアウトのきっかけだった。
💜「岩本?岩本じゃね?営業部の」
💛「……深澤」
その夜はお互いのこれまでの苦労話や恋愛事情について話した。同じ嗜好を持つ者同士『そういうこと』になるかな、とも一瞬思ったけど、辰哉とそうはならなかった。
お互いに出会いは求めていたが、相手が誰でもいいというわけじゃなかったから。
それでもその夜を境に、俺と辰哉は急接近して、社内でも何かとつるむようになった。
今、辰哉は同性愛者専用のマッチングアプリにハマっていて、就業後はたびたび色んな相手と会っているようだ。
💜「んー。やっぱ行くわ。年齢確認してOKそうなら行く」
💛「随分気に入ったんだな」
💜「見た目もだけど、趣味も合いそう。やっぱり趣味大事っしょ」
💛「そんなもんかね」
💜「んじゃ、仕事戻るわ。また明日な」
💛「おう」
辰哉は飲み終えた紙コップを捨てると、総務の仕事へと戻って行った。
まだ次の予定まで時間があった俺は、スマホを見た。辰哉に半ば無理やりに入れられた同じアプリ。ライクを付けられた相手をなんとなく順番に見ていく…。中にひとつ気になる相手を見つけた。
💛「なんだこれ」
俺は、彼に、妙に惹きつけられるものを感じて、ライクを返した。
その後空き時間に何度かやりとりを繰り返していたら、あれよあれよと俺もその相手と今日会うことになった。
アプリを通して、会うまでこぎつけたのはこの相手が初めてだった。