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あの夜会の日から、4日が過ぎた。あの後アドラは、急に大人しくなった。差し詰めテオドールが男色だと勘違いして引いたのだろう。
諦めてくれたなら良かったと、安心していたが……そんなに甘くはないとテオドールは痛感した。
「テオドール殿下、是非私もご一緒させて下さい!」
ようやく視察を終え、帰ろうと馬車に乗り込もうとした瞬間荷物を抱えたアドラが半ば強引に乗り込んできた。テオドールは、まさかの事態に呆気に取られる。
「は?……あ、いや、流石にそれは」
予想だにしなかった出来事に、思わず間の抜けた声を洩らしてしまい、慌てて言い直した。
「私、テオドール殿下が男色でも構いません!そもそも、テオドール殿下と結婚したい訳ではなく、私は妃になりたいだけなのです。ですから、何の問題もありません」
いや問題しかないだろうと思った。そもそも、男色云々関係なく、アドラと結婚する気など皆無だ。
だがテオドールが何も言わない事をいい事に、アドラは自分自身の事をぺらぺらと説明を始めた。
アドラはこれまで、テオドールに気に入られる様にとぶりっ子をしていたが、テオドールが男色だと思いやめたそうだ……。正直、だから何なんだろうと思った。
別に彼女が猫を被ってようが被ってまいが、テオドールに興味はない。
暫くアドラのどうでもいい話を聞かされた。
その中で確かに大分変化は感じた。口調はハキハキと話し語尾も力強い。まあ、態度が大きいのはそのままだが。
アドラの変わりように、一瞬別人かとテオドールは思った。そして……改めて思う。やはりヴィオラ以外の女性は苦手だ……。
「彼女と殿下が結婚するれば、邪魔される事もなく僕はヴィオラと幸せになれる。良い事しかないですね。是非、今すぐにでも、彼女と結婚してください。殿下?」
そして、もう1人強引に馬車に乗り込んできた人物が、レナードだ。我が物顔で腰掛け、あり得ない提案をしてくる。
「まあ、話が早くて助かります。貴方は、先日の夜会にいらっしゃった方ですよね」
アドラは嬉々として、レナードの隣に座り直した。
「でも、貴方はテオドール殿下と恋仲ではないのですか?宜しいのですか?それにヴィオラ様とは、どなたです?」
「あぁ、殿下と僕はそんな間柄じゃ」
レナードは、掻い摘んで簡潔にテオドールとの事、ヴィオラの事を話た。その間、テオドールは蚊帳の外であり、馬車は動き出してしまう。
テオドールは、諦めた様に溜息を吐き、2人の向かい側に腰を下ろした。
まさか、この2人がついてくるなど……予想外だった。考えが甘い自分が情けない。だが、このままこの2人を城へと連れ帰るなどできない、いや、したくない……。
それならば……テオドールは予定を急遽変更する事にした。
少し時期は早いが、別の場所へも視察をしてから戻ろう。そうすれは、この2人もその内諦めるに違いない。
だが、テオドールの甘さはここにも反映された。何箇所か視察と称し回って歩いたが、軽鴨の親子の如く付いてくる2人。
レナードと、アドラからは執念の様なものを感じ、テオドールは諦めざるを得ず、2人を引き連れ城へと戻る羽目になってしまった……。
そして、ようやくへとへとになり城へと戻った頃には既に、いつ月が経とうとしているのだった。