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#ワンナイトラブ
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プロジェクトが本格始動し、社内での私の評価が「専務の婚約者」から
「有能な若手リーダー」へと塗り替えられていく。
そんな中、提携先のIT企業から、若きCEOの御曹司・瀬戸が来日した。
「田中さん、君のプレゼンには魂が宿っていた。……日本にこんなに美しい才能がいるなんて、驚きだ」
打ち合わせが終わった直後、瀬戸は皆の前で私の手をとり、熱烈な視線を送ってきた。
「あ、ありがとうございます。……でも、これはチーム全員の成果ですので」
私が戸惑いながら手を引こうとすると、彼はさらに距離を詰めてくる。
その瞬間
部屋の温度が数度下がったような錯覚に陥った。
振り返ると、そこには書類を片手に、氷のような冷徹な瞳をした徹さんが立っていた。
「瀬戸さん。…ビジネスの場では、過剰なスキンシップは控えていただきたい。彼女は、私の大事な『部下』ですので」
「……おっと、これは失礼。高橋専務。ですが、魅力的な女性を称賛するのは紳士の嗜みでしょう?」
瀬戸は悪びれる様子もなく笑い、その場を去っていった。
それからというもの、私のデスクには毎日
瀬戸からの豪華な花束や、高級ブランドの差し入れが届くようになった。
オフィス中が「田中さん、モテモテだね」と色めき立つ中
隣に座る徹さんの周囲だけは、近づく者すべてを凍りつかせるような、凄まじい威圧感が漂っていた。
「……田中さん。その花、邪魔だ。給湯室にでも移してきなさい」
「……はい」
仕事中はあえて「田中さん」と呼び、冷たく突き放す徹さん。
けれど、キーボードを叩く音はいつもより激しく
その横顔には隠しきれない焦燥の炎が揺らめいていた。
その日の夜。
玄関を開けるなり、徹さんは無言で私を壁に押し込んだ。
「徹、さ…ん……っ」
驚いて顔を上げると、そこには昼間の冷徹な専務ではない、嫉妬に狂った一人の男の顔があった。
徹さんは私の両手首を頭の上で押さえつけると、私の首筋に深く、熱い唇を押し当てた。
「……あんな男に笑いかけないで。あんな花、受け取らないでほしい」
「……と、徹さん、嫉妬、してるんですか?」
私が微かに笑って尋ねると
徹さんは私の耳たぶを痛いくらいに噛み、それから絶望的に甘い声で囁いた。
「ああ、してるよ。狂いそうなくらいに。…結衣、俺以外の男を視界に入れないでほしい」
徹さんはそう言うと、私の鎖骨のあたりに
明日、会社でスカーフを巻かなければ隠れないような、濃くて深いキスマークを刻み込んだ。
「……これで、誰の結衣なのか、分かるでしょ?」
傲慢で、独占欲に満ちた言葉。
けれど、その声は微かに震えていて。
私は、完璧なはずの彼をここまで乱してしまったことに、背徳的で甘美な悦びを感じていた。
「……徹さん。もう…私の全部、あなたのものですよ」
私が腕の中で囁くと、徹さんは飢えた獣のように、再び私の唇を塞いだ。
夜はまだ始まったばかり。
外で見せる「氷の専務」の姿が嘘のように、寝室は二人の情熱で焼き尽くされようとしていた。