ナッキが判っていないと言うのに、我が儘(わがまま)に過ぎる父が無茶振る。
「あっ、そうだっ! そうだよっ! ナッキ殿のステータスも見てみませんかぁっ! なあ、ヘロン! 鑑定だか解析だかやってみておくれよぉっ! さあさあ早くぅっ!」
何でこんなに楽しそう、享楽(きょうらく)的なのだろうか…… 我が父でなくても馬鹿っぽく見えてしまうのだが……
父と違って分別がある鳥のヘロンはナッキに対して真剣な顔を向けて言う。
「ナッキ様、この様に言っていますがどう致します?」
流石だ……
昔は兎も角、今やナッキを頂点にした『美しヶ池』に加わった、『メダカの王国』の構成員であるヘロンにとって、命令権者はハッキリしているらしい、これは頼もしいし正しい手順だろう。
我等が頼もしい王者ナッキは、ナガチカが説明した人間的な価値観が理解不能だったからだろうか? かなり飽きてしまっている風情で適当な感じで言う。
「ん? ああ、さっきのヤツだよね? 別に良いんじゃないの?」
だとさ。
自らが戴いた王者の許しを受けたヘロンは言う。
「では失礼致します、『鑑定』…… ほおぉぉ! こ、これは…… さ、流石はナッキ様ぁ……」
なにやら驚いているヘロンにKY親父が気楽な声をかける、全くぅ…… ちょっと|確《しっか》りしてくれよぉ!
「どうだったの? ヘロンッ! 読み上げてみてよぉ!」
全くぅっ……
兎に角ヘロンは読んでくれたのである。
「ええっとですねぇ、何か色々凄いんですけどね、えっとぉ、行きますよ? 固有名詞は『ナッキ ティターン』、スキルは『武装』『論破』『集団意識』『放浪』『同化』『成長加速』『超回復』『鑑定』『会話』後はですね、『統治(レイン)』これだけには起源が付いているんですよね? 種族は『ギンブナ』、職業は『メダカの王様』ですね、レベル? ああぁ、何か凄いですよ? 1026/4801540だそうですよ? ナガチカさんと違い過ぎませんか? 酷い差ですよね? 後は、STR2085、DEF7776、AGL6914、MAP168956、って…… ナガチ…… グフングフンッ! あのヒト雑魚(ザコ)過ぎませんかぁっ?」
つい先程のナガチカの数値とは、文字通り桁違いだった事で多少気を使ったのか、ヘロンの視線はナッキに向けられ、最後の言葉も遠慮がちな囁き声になっていた。
対するナッキは大きな目玉をパァッと輝かせながら嬉しそうな声だ。
「ええっ、僕にもそんなに沢山のスキル? 技だよね? それが有ったのかぁ~、早速試してみようっ♪ 『武装(エクソプリズン)』、お? おおおっ!」
ヒットの時と同じく、スキル名を口にした瞬間に変化が起きる。
違っているのは二つの点であった。
一つは姿を変えた顔ぶれである。
ヒットが発動した『武装』はナッキとサニーを除いたギンブナ全員であったが、今回ナッキが起こした変化は池の中全体に及んでいたのである。
ギンブナ、メダカ、モロコ、カエル、ウグイ、鳥、トンボ、一番新しく仲間に加わったニホンザリガニまで、一匹も漏らす事無く『武装』に因ると思われる変身を果たしたのだ。
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