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「____________1783年9月3日、アメリカが正式に独立する」
午後一時半、燦々と光る太陽の下で二人は茶を嗜んでいた。
「…あぁ。あの時はまさしく屈辱的だったよ。アメリカ、お前が俺から独立できるなんてな」
「wow、本当かいイギリス。君はてっきり俺に離れてほしくなくてわんわんと悲しんでるのかと思っていたよ」
表紙が少し汚れている古めかしい本を閉じると、アメリカは一息ついてイギリスにジョーク混じりの返事をした。
「俺をみくびるなよアメリカ」
「冗談だよイギリス。君、そんなに短気だったかい」
「ジョークはうちのアイデンティティーだ。冗談と本気くらい見分けなんてすぐつくさ」
嗤うように言うイギリスに「確かに、君はそういう人だったね」とどこか慈しむような表情で言葉を返すと、アメリカは片手でコーヒーが入ったカップの淵をなぞり、ゆっくりと奥にしまった過去の記憶を思い出した。
____________そう、たしかあれは独立戦争で勝利を勝ち取り、事が収束してきた頃だった。
国内も落ち着いてきて段々と私生活が安定し、朝食を自宅でとる事が増えていた日々。そうなると、嫌でも独立前を思い出した。
イギリスと、カナダと、そして俺。
三人で温かい朝食を取って、つまらない話をする。
イギリスがたまにコーヒーを用意してくれた事もあった。でもイギリスが作るコーヒーはいつも甘ったるくて、けれども美味しい。
つまらない日々をぶり返して、一人コーヒーを啜る。その日のコーヒーは妙に甘ったるくて、苦かったのがやけに記憶に残った。
「インスタントコーヒーって、たまに粉が底に溜まって最後には甘ったるいような苦いような、何とも言えない味になるよね」
「いきなりだな」
「いいだろう?たまにはこう脈絡も無い気の抜けた会話も必要さ。なに、君も今日は暇だろう?少し付き合っておくれよ」
「ふん、お前の俺に対する知ったかぶりは少し気に触るが、まあ会話程度なら付き合ってやるよ」
「thank youイギリス。で、会話の続きだよ。あの味といったら、まあ不味い事か。あれを朝っぱらから味わうことになると散々さ」
「どうせ混ぜることを怠ったんだろうアメリカ。まあ、お前なら一度や二度はそんな失敗をするとこだろうな」
「今は皮肉を言う時じゃないぞイギリス。とにかく、あれに当たると最悪な気持ちになるんだ」
「まるでUFOに遭遇したのにその記憶を半分消されたみたいな気分さ」
「そりゃあ災難だな。それなら紅茶でも飲んでみるといい」
イギリスはそう言ってアメリカを一蹴してしまうと、アメリカは呆れたように笑った。
「ホントに君ってやつは…」
「なんとでも言え」
「…底に溜まった思いっていうのは、誰にも触れられず苦くて、それでも甘い物へと変化していくもんなんだね、イギリス」
あっけらかんと言うアメリカに、寝耳に水と言わんばかりに目を見開いて驚くイギリス。
「なあ、イギリス。紅茶はどれでも苦いかい?」
「…」
ただ真摯に、けれども大人に縋る子供のような表情をするアメリカを、イギリスはことを理解したとでも言うように一息つくと、椅子から立ちテーブルに左手をつき右手をアメリカの頭に置いて緩く左右に動かした。
いきなり撫でられたアメリカは驚きを隠せないでいるも、どこか嬉しそうな表情であった。
「…どれでも手を加えれば美味しいものさ、アメリカ」
「もしも嫌なことがあったなら、ジョークにでもしてしまえばいい。手を加えてみれば案外ウマイことになるもんさ」
____________さあ、楽しいティーパーティを始めよう