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黒星
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背後から差し込む街灯の光によって、僕自身の影のすぐ隣に
自分のものとは明らかに違う「巨大で長い影」が、ぬうっと覆いかぶさるように伸びてくる。
振り返るよりも早く、頭皮から指先まで、全身の血の気が一気に引いて身の毛がよだつ。
すぐ後ろ。
手を伸ばせば、衣服が簡単に触れ合ってしまうほどのゼロ距離に、誰かが無言で立っている。
それは、あまりにも明白な現実だった。
走らなきゃ、逃げなきゃ
そう思うのに体が硬直して動かない。
その瞬間──
ガシッ!!!と、容赦のない
信じられないほど力強い人間の手が、僕の細い手首を掴んだ。
心臓がヒュッと縮み、息が止まる。
悲鳴を上げる間もなく、男の大きな力によって無言のまま腕を引かれ
僕はズルズルと、人目のない暗闇の奥へと無理やり連れて行かれそうになった。
男だ。
あの時、夜道で僕の後ろをつけてきていた、あの深いフードを被った男だ。
顔はフードの影に隠れて全く見えないが、あの男以外有り得ない。
「……っ!?はっ離してくださ────」
どうにか手首を振り解こうと死に物狂いで抵抗し
周囲に助けを求めようと大声を上げようとした
そのとき
男がフードを被ったまま、くるりと首を回し、僕の顔を至近距離から冷酷に見下ろした。
「騒げば殺す」
あまりにも非日常な単語だ。
剥き出しの鋭利なカッターナイフの刃を
そのまま自分の喉元にピタリと突きつけられたかのような、凄まじい錯覚に陥った。
それに加え
フードの隙間から覗く男の鋭い眼光に正面から睨みつけられただけで
僕は思わずヒッと息を呑み、完全に言葉を失ってしまった。
頭の中に残された感情は
「怖い」「もし少しでも逆らったら、本当にこの場で刺されて殺されるかもしれない」「怖い」
という、逃げ場のない圧倒的な畏怖感のサンドイッチだった。
男は僕が静かになったのを確認すると
再び前を向き、完全に放心状態となってガタガタと震える僕の身体を引き摺るようにして歩き出した。
僕はただ、恐怖の鎖に縛られたまま、彼の後をついていくことしかできなかった。
フードのせいで、顔は一切確認できない。
けれど、掴まれている手首の感触で分かる。
これは完全に大人の男の手だ。
いくら僕が男だとはいえ、所詮はまだ未成熟な高校生。
男の筋力はあまりにも強大で、僕がいくら力を込めても、ビクともせず振りほどくことすらできない。
――『さっちゃはまだ未成年なんだから。何か大きなトラブルがあってからじゃ遅いんだ』
いつか車内で怜治さんが言ってくれた言葉が頭をよぎる。
本当にその通りだった。
コメント
1件
ああ、もう……胸が締め付けられるような展開でしたね。街灯の光で自分の影の隣に伸びてくる“巨大な影”の描写から、もう息が止まりました。「走らなきゃ」と思うのに体が固まる感覚、そしてガシッと手首を掴まれる衝撃——まるで自分がその場にいるかのような臨場感で、読んでいる間ずっと手に汗握ってました。怜治さんの言葉が頭をよぎる瞬間、すごく切なかったです。続きが心配でたまらない………でも、それだけ物語に引き込まれている証拠ですね。猫塚さん、この緊張感の描き方、本当に巧いです🤍