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「ああ……息子は、妻の連れ子なんだ。結婚した時には、もう小学三年生だったからな」
「そうだったんですか……」
じゃあ、親子として血は繋がってないんだ……。でも、それにしてもだいぶ早い結婚だったんじゃないのかな……。
そんなことをつらつらと頭の中で考えていると──
「25歳の時に結婚をしたんで、もう17年になるな……」
セットの紅茶を一口含んで、蓮水さんがぽつりと呟いた。
「17年に……長いですね」
息子さんが連れ子だったとしても、やっぱり割りとお若い時に結婚をされたんだなと思う。
「……息子が思春期を迎えて父親を受け入れづらくなる前にと、早い内に妻といっしょになったんだ。そうして私が結婚をした年を息子が超えたこともあって、この会社を譲ろうと思い立ってな」
「……そうだったんですね」
17年も連れ添っていられるなんて、きっと夫婦仲も円満なんだろうな……。それに、そんなにも息子さんのことを大切に考えていられるのも、それだけ奥さまのことを愛しているからだよね──と、少しだけ羨ましくも感じられるようだった……。
「とっても美味しかったです。ありがとうございました」
「ああ、楽しい時間だった。私の方こそ、ありがとう」
変わらない穏やかな笑顔を私に向けると、蓮水さんが席を立った。
「では、私はそろそろ会社に戻るが。また何かあれば連絡をするんで、君は好きにしていてもらっていいから」
「はい、わかりました」
と、軽く頭を下げて、皺ひとつなくピシッと決まったスーツ姿を仰いだ。
こんなにも素敵でいられるのも、息子さんがいて奥さまと過ごす家庭が、幸せだからに違いないように思えた……。