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「そういえばさ、柔太朗って昔、勇斗にはめちゃくちゃ敬語やったよなあ」
プシュ、と炭酸のペットボトルの蓋を開けながら太智が笑った。
「俺と仁人は人見知りやから、最初は舜太とも柔太朗ともなかなか距離縮められへんかったけどさ。勇斗は違うやん。最初っから2人にぐいぐい話しかけとったのに」
童顔の彼が、少し大人びた表情で、遠くを見るように数年前を懐かしむ。
「それでも柔太朗だけは、しばらく壁あったよな」
「あー!」
舜太がすぐに反応する。
「佐野さん佐野さんって、いつまでも言いよったよなあ」
「えっ そうでしたっけ」
当時の口調でとぼけた柔太朗は、わざとらしく口元に両手をあてて見せた。
「そうだったよ」
みんなが笑う。
柔太朗だけが照れたように一瞬視線を落としたのを目の端に捉えた。なぜか胸の奥が落ち着かなくなって、喉がひどく乾く。
「緊張してたし…はやちゃんはテレビでいつも見てた人だったから、迷惑かけないようにって、いつも気ぃ張ってたかも」
「今は?」
舜太がいたずらっぽく聞く。
「……今は、」
少し考えて、それからぽつりと
「はやちゃん」
その一言が耳に触れる。たったそれだけなのに、なぜだろう。
胸のどこかが、少しだけやわらかくなる。
それなのに、落ち着かない。
「なんで、『はやちゃん』になったんやっけ?」
舜太が聞く。
「敬語やめろって言われて、でも呼び捨ては無理で。だから…はやちゃん」
また笑いが起きる。
そのタイミングに合わせて笑う。
…ちゃんと笑えていたと、思う。
コメント
1件
あんりさん、第2話読んだよ! 「はやちゃん」って呼び名の由来、めっちゃ良かった……敬語やめろって言われて呼び捨ては無理で、ってとこに柔太朗の誠実さと距離感のバランスが滲んでてグッときたわ。みんなで笑ってるのに、語り手だけ胸の奥が落ち着かなくなる感じ、すごくリアル。続き気になる〜!