テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
それから色々なところを見て回った。さすがお城というだけあってとても広く入り組んでる。 それでも少し歩いているうちにお城の構造を理解できるようになった。
一階は広く大きな部屋が多い。 恐らく接客など外向きの人を入れるところなのだろう。入り口の前は開けていて、大きな階段が目の前にある。その途中から右と左の二手に分かれていて2階に上がることができる。
2階は対応班、警護班、救急部隊が置かれていて、それぞれが忙しそうに働いていた。
3階は客室が多い。とくにそれと言った班や部隊も置かれておらず静かだった。
4階は医療班が置かれていて病人や怪我をした人が静かに休めるスペースがあったり診察をしてもらえるところもあった。
5階はお城で働いている人達が住んでいるところで大きな食堂がある場所だ。
6階は倉庫などがほとんどで特に面白みはない。
7階は幹部や重要人物の居住スペース。それに司令部、特殊作戦部隊が置かれていた。
8階は総統室、幹部会議室があり、それといくつかの総統室のような部屋があった。
ちなみに私がいた部屋は3階の東塔らしい。
各階ごとに東塔、西塔、中央の3つに分かれているみたいだけど、行き方が様々あり、階段や廊下の数が多いためどこが何塔かまではわからない。
階数も私が見た限りでは8階だったけど異様に次の階までが長い階段や、壁を挟んで向こう側に空間があるのにどうやっても行けないところが多々あったから、この城がどのくらいの大きさなのかは掴めなかった。
だいたい中を探索し終えたので外に出てみる。
入り口の大きな重い扉を開けると太陽の白い光が目に飛び込んできて、視界が真っ白になった。
思わず目を細める。
数秒たって目が慣れてきてようやく外の様子が見れるようになった。
入り口から一本道で百数メートルくらい先にもう一つ門が見える。
道の横に植えられている植物を眺めながら、その門のところまで行くと門の両端から延びる壁のようにも見える塀があった。 この塀は恐らくこの城をぐるっと囲んでいるのだろう。
城と塀の間には木が生えていたり植物が生えていたりしたがどれもよく手入れされており素晴らしい眺めだ。辺り一面の芝生も綺麗に刈りそろえられていて春のそよ風に揺られ光を反射させている。
そのまま城の周りを右にゆっくり歩く。
少し歩くと開けた場所に出た。
そこでは兵士と思われる人々が十数人いて、模擬戦?を行なっている。
しかし、あんまり見たことがない感じの稽古?で、1人対その他のような形になっていた。 1人の人はその他の人達にぐるっと囲まれている。
気になったので木陰に腰を下ろしてその続きを観察することにした。
真ん中にいるのは灰色の癖っ毛のショートに犬のような耳と尻尾のある中性的な見た目の子供だった。深紅の大きな瞳のついた顔は少し微笑みを浮かべているようにも見える。身長は小さくパワーはなさそうだが、とてもすばしっこそうだ。
サアッと少し大きな風が吹く
その瞬間を合図として数十人の兵士達が真ん中にいる人に攻撃を仕掛ける。
これが城内じゃなかったら数十人の大の大人達が子供に襲い掛かっている図になり、絶対に警察ざただろう。
これは本当に稽古なのだろうか、、、
でも、意外に真ん中にいる子が倒されることは一切なく、 なんならほんの数秒で全ての兵士が地面に頭をつけて倒れている。
あの子は武器を持っておらず、その身一つで武器を持った兵士達を倒した。 攻撃をわざとギリギリまで引きつけてから避け他の兵士に当たるようにしたり、 間合いを詰めて投げ技を使ったりと、 全ての動きが洗練されていて迷いがなかった。
この子の一連の動きに驚いていると、 いきなり誰かに襟首を掴まれて持ち上げられ足が地面から離れる。
「・・・ッ!」
襟が広い服を着ていたからかろうじて息はできているけど首が締め付けられていて苦しい。襟を掴んでいる手から逃れようと必死に足を動かしたり体を捻ったりするがびくともしない。
「ッぅ・・・・・・ぁ・・・ケホッ・・・」
声を出そうとしても全然出ないし息ができなくなる。
「お前何者だッ!なぜこんなところにいる!不法侵入者かッ!?」
なんかよくわかんないことを聞いてくる。 なんか防具つけてるし兵士さん? それより手を離してほしい。
「ーーーーーッッ!」
思いっきり足を動かして相手の体制をなんとか崩そうとすると、拳を私の頭に向かって振り下ろそうとする姿が見えた。 反射的に目を瞑る暇もなく手が近づいてくる。
殴られるっ! と思った瞬間。 パシッと誰かが兵士の腕を掴んで止めた。
「その子、客人だよ?」
そこにはさっきの灰色髪の子供がいた。
「狛犬様ッ!大変申し訳ございませんでした!」
兵士に離されて地面に足をつけることができた。 兵士はと言うとあの子に深々と頭を下げている。 この子は兵士より40センチくらい小さいが、 どことない威圧感があった。
「まぁ、僕はいいんだけどね。 でもその子”先輩”が連れてきたし、”ロゥ”もかわいがってるからさ。」
軽い口調だが一言一言がはっきりと頭の中に入ってくる。 言葉に重量があるかのように重い。
「城の壁に近いところにいたものでして、、、てっきり不法侵入者かと・・・」
兵士がとても申し訳なさそうに言うと、 あの子は「うんうんそうだよね」と優しそうに頷いている。 その様子を見て兵士は少し安心したのか頭を上げたとき 「そうだけどさ」と妙に抑揚のない声で続けた。
「もしこの子に怪我でもさせたら君の首飛んでたかもよ?」
大きく見開かれた赤い目には獲物を捕らえようとするような鋭い雰囲気があった。
「でも君は運がいいね。ついさっきまで先輩ここにいたのに今はいないや。見られてなくてよかったね」
兵士は顔を硬直させる。
「もう行っていいよ」とこの子が兵士に言うと、兵士は「ッはッ!」と敬礼すると逃げるように離れていった。
「・・・怖がらせてごめんね」
そう言う目の前の子からはさっきの威圧感は消え去り、 ただただ優しそうな顔がのぞいていた。
「・・・君が未緒だよね。 先輩から話は聞いてるよ。 僕は 狛犬 累 ! 軍防衛指揮官をしてるよ!ルイって呼んでね」
ルイは耳を少し下げてペコっとお辞儀をした。
「よろしくね!」と言いながら手を出してきたので握手をする。
「ここは軍の合同訓練所になってるんだ!」
そういいルイは歩き出す。
「ついてきて!案内するよ」
駆け足に歩いていくとルイは歩きながら言葉を続ける。
「僕は国の防衛が担当なんだ。もうギンにはあった?」
「あ、、、うん。あの怖い人でしょ?」
そう気まずそうに言うと、ルイは一瞬立ち止まり目を丸くした後、なんとも絶妙な顔をしていたが、グッと喉の奥から声を漏らす。 声を抑えて誤魔化しているようだが、一度声が出てしまうと笑いというものは止まらない。「ふふっはははっ」とお腹を抱えてルイは笑い出した。
「ギンって本当に怖いよね!相棒の僕でも初対面だったら怖いだろうなって思うもん!!現に怖かったし」
明るい声のその言葉を聞いて「あぁやっぱりあれは怖いよな」と納得する。
「多分悪気はない、、、いや、、、あるかも、、、」
ルイはそうブツブツと何かを呟いている。
「ギンは仲良くなったら守ってくれるし、優しいんだけどな」
そんなことを話しているうちに少し大きめの建物に着いた。
「ここが城内にある軍の施設だよ!本部は別の場所にあるんだけど城の警備がスムーズにできるようにキアノースでは城の敷地内にも施設を置いているんだ!」
確かにこの建物近辺にはたくさん兵隊さんがいる。
「ここ最近は新兵はここに配属されてないね。そこら辺はギンが管理してるから僕はよくわからないけど」
そこまでルイが言うとゴーンと鐘が鳴った。首を傾げているとルイが説明してくれる。
「12時を伝える鐘だね。お昼だ!ご飯食べに行こう、、、って未緒は外出許可出てないのか」
「うーん」と唸りながらルイの灰色の耳が下がる。数秒後、何かを思いついたかのように下がっていた耳が上がった。
「ちょっと待っててね!」
ルイは目の前の建物の中へ走っていき、すぐに紙袋を抱えて戻ってきた。
「なに?それ」
「これは”桜“おすすめのパン屋さんで買ったパン!」
「さっき先輩が届けてくれたんだー」ニコニコしながら紙袋をルイが開くとパンの香ばしい匂いがこちらまで伝わってくる。
「あっちの木陰で一緒に食べよう!」
この建物の向かって右側にある大きな欅の木をルイが指差す。私が頷いたのを見てルイは少し駆け出し10メートルほど進んだところでこちらを振り向いた。
「未緒!あそこの木陰まで走るぞ!!」
そう言いルイは背中を向けて走り出す。春の晴れやかなそよ風が青い葉の匂いを運んでいる。その風がくすぐったくて無性に走り出したくなり、ルイの後を追いかけた。
木陰に着くと2人で腰を下ろす。「はい」とルイに渡された可愛い紙に包まれたサンドイッチには色とりどりの具材が挟まれている。 美味しそうな匂いにつられてかぶりついた。
2人でサンドイッチを食べた後、また訓練所を見学する。
「そろそろ中に入った方がいいね」
気づけば空は少し赤く染まり西から東に綺麗なグラデーションができていた。
ルイについて行くといつの間にか食堂に着いていた。 階段そんなに上がってないのになんでだろう。
食堂にはもうみんな集まっていて私たちが最後だったみたいだ。
「ルイおそ〜い!!はやく!」
華飛がふわふわした口調でルイに言う。
「ごめんごめん」
ルイは笑いながら席に着いた。 のんに呼ばれたのでのんの隣の席に座る。
ご飯を食べ終わって片付けをしているとのんがこっちにきた。
「未緒って”雫さん”にもうあった?」
今日はたくさん初めての人に会ったので名前だけ言われてもピンとこない。
頑張って思い出そうとしたがわからない。 首を振ると「やっぱそうだよねー」と言われた。
「雫さんいつもこもりっきりでなんかしてるもんなー」
「まぁいずれ会うと思うからいっか」とのんは勝手に会話を終わらせた。
「雫さんってどんな人なの?」
「雫さんはね〜 医療班の最高責任者の人だよ。 それとロゥのかのz・・・ なんでもない」
最後なんか言った気がしたが気のせいだろう!
どうやらいつも4階にいるらしい。
気になるけどもうこれ以上は聞かなくてもよさそうだ。 いつか会えると先輩が言っていたから。
ゴーン
重たい鐘の音がなった。
もう夜遅いらしい。 まだまだ探検してみたいところがあるが今日はやめておこう。
のん達にあいさつをして食堂からでる。 そのままゆっくりと部屋まで戻ることにした。
廊下の窓からは星がキラキラと輝いているのが見える。
うん! 明日も晴れそうだ。
狛犬 累:こまいぬ るい