前編です。
《あらすじ》
工藤新一は黒の組織を倒した後、解毒薬によって元の体に戻ることができた。一方、快斗は未だパンドラを見つけるために奔走していて…
時間軸‥高校卒業後の春休み〜大学入学辺り
映画のネタバレはありません。
名探偵と怪盗が共犯関係になるお話です。
名探偵が怪盗になったり、怪盗が名探偵になったり…の話っていいですよね…
やっぱり書いてて楽しいのは協力してる二人だよねってことで理解のある方のみお願いします!
↓
↓
怪盗キッドが銃で打たれた。
それは瞬く間に世間に広がった。
…なんてことはなく、それは中森銀三ですら知らない情報であった。
だがしかし、工藤新一は知っている。
その現場を目撃したからだ。
あの日、怪盗キッドは謎の組織に追われていた。
「やっぱりここにいたか、怪盗キッド!」
いつも通り華麗に宝石を盗っていったキッドに追いついた新一は、もう逃さねえぞと言わんばかりに叫んだ。
「名探偵!?今日は来ないはずじゃ…」
「あ?さっき別件でたまたまこの近くにいたんだよ」
いつものあの余裕ぶった態度はどこへ消えたのか、焦りを見せたキッドに少しばかし調子を崩されてしまう。
「忠告をしておきましょう。貴方はここへ来るべきではない。」
「こそ泥の言うことなんて誰が聞くかよ」
「今日は駄目なんですよ、名探偵…」
とキッドが綺麗に咲いている桜の方に目をやると、遠くからこちらを向いてライフルのようなものを構える黒い影が視界に入った。狙っている先は…名探偵?
「避けろ名探偵!」
サイレンサー付きの銃から放たれた弾丸は新一の方をめがけて一直線に飛んでいき、避ける間もなく新一は思わず目を瞑った。
しかし、銃で打たれたときのような鈍い痛みは体を襲ってこない。
瞼を開けると、目の前には腕から血を流したキッドが膝をついて「貸しにしておきますよ」と言わんばかりに不敵な笑みを浮かべていた。
そして、唖然としている間に「また会いましょう」と素早くハンググライダーで去っていってしまった。
「お、おいキッド!」
キッドを追うことだけしか考えていなかった新一は、ただその場に立ち尽くすことしかできなかった。
道中、ずっと考えていた。
普段なら気づける気配になぜあのとき気付けなかったのか。
もしも気づくことができていたなら、あいつが怪我を負うこともなかったのに、と。
「今日は阿笠博士の世話になるか…」
少しだけ気持ちをリセットしよう、と阿笠博士の家へと足を踏み入れた。
「新一くん、こんな時間にどうしたんじゃよ」
「ちょっと家に帰りたくなくてな…」
「あら、この家に今誰がいるのかを知っていたから来たのかと思ったのだけれど」
「は?誰だよ?」
灰原がそう言うから知り合いだと言うことは分かるが、心当たりは全くなかった。
「まあ、部屋に来てみれば分かるんじゃないかしら」
そう言われるがままについていくと、部屋にはベッドで横たえている同年代くらいのやつがいた。
このシルエットどこかで…
いや、あの腕…!?
「お前キッドか!?どうしてこんなところに!」
「私と博士が助けたのよ。この人、両腕打たれてあやうく野垂れ死ぬところだったんだから。」
「そ、そうか…灰原。ありがとう」
「例を言うなら怪盗さんに、でしょ。あなたは守ってもらったんだから。」
処置は終わったから後は任せたわよ、と部屋を去っていく灰原を横目に新一はキッドの寝顔を見つめていた。
こいつの顔、やっぱり俺にそっくりだな…
なんてことを思っていると、キッドの口から「明後日…」という呟きが新一の耳に入る。
「明後日がどうしたんだよ」
「明後日、予告を出してる。どうしても、その宝石は取らないとダメなんだよ…」
「事情は知らねーけど、安静にすることが第一だろ。」
「違う。パ………かもしれねえんだよ」
いつもと様子が違うのは両腕を打たれたせいなのか、このままだと明後日の仕事を実行できないからなのか、はたまた違う理由か。
「オメーがそこまでこだわる理由を教えるっていうんなら代わりに盗ってきてやってもいいぜ。 その代わり工藤新一をやってもらうことにはなるかもしれねーけど。」
キッドのここまで弱った姿を初めて見た新一は、思わず突拍子もないことを口にしてしまった。
「駄目だ、名探偵にそんな危ないことをさせるわけにはいかねえ。」
「危険?それなら尚更オメーを行かせるわけにはいかねえな。とりあえず目的を吐け。」
「そう簡単にオレが吐くわけねーだろ」
「オメーの正体をあの子にバラしても良いのかよ?」
「…は?あの子?」
名探偵がなぜ、どうやってオレの招待を知った?あの子、とは…青子のことか?身分証明書になるような物は持っていなかったはず…となれば…ブラフ?いや、あの医者のようなお嬢さんが調べたのか?…にしてもどうやって…ああ頭がぼやけてわけわかんねえ!
思考を巡らせてもまるで考えがまとまらない。
「んで?どうする?」
でも急に自信に満ち溢れた名探偵を見たら大丈夫な気がしてきた。これで貸しがチャラになるなら任せても良いかもしれない。
もしもこれで盗聴器が仕掛けられていたら終わりだけど、名探偵ならそんなことをしないって分かってるから…
「分かった。一から全部話す。」
それからキッドになったきっかけ、ずっと宝石を追っている理由、なぜ律儀に毎回犯行声明を出しているのか、など全てをつらつらと吐いた。
「そうか…オメーも色々と大変だったんだな」
「同情はよせよ…なんか恥ずかしいだろ」
「まあ、次の日また来るからそのときにターゲットについてとか教えろ。今日はもう休め」
新一が席から離れ、ドアがパタンと閉じられるとさっきまで感じていた静けさや寂しさが余計に増す感覚を感じた。
それと同時に、今までずっと一人で抱え込んだものが胸のうちからなくなるようなスッキリした感覚までもが体を支配した。
次の日に寺井ちゃんと呼ばれる人物に驚かれながらも様々な情報を教えてもらった新一は、犯行に備えて道具の使い方や下見など、様々な準備をした。
続く
(需要ないと思いますが…続きは明日更新します🙌🏻後編は名探偵⇄怪盗みたいな感じのものが入っています。
追記:数年前に使っていたアカウントの快新リメイク版をだすかもです。知らんけど)