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#学園ファンタジー
成瀬りん
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#家族
たつ
53
#日常
ももは
551
病室には、重苦しい沈黙が流れていた。
三人はそれぞれベッドに腰掛け、言葉を交わすことなく、自分自身と向き合っていた。
公太は天井を見つめながら、拳を強く握り締める。
「……もっと強くならなきゃ」
思うように動かない身体がもどかしい。
それでも頭の中では、退院後の鍛錬を何度も組み立てていた。
次こそ、負けないために。
唯我は静かに目を閉じる。
脳裏に浮かぶのは、カイゼルの一太刀。
無駄のない剣筋。
迷いのない動き。
そして、自分を打ち破った圧倒的な実力。
「……次は必ず見切る」
静かな瞳の奥で、決意だけが燃えていた。
一祟は窓の外へ視線を向ける。
青く澄んだ空。
ゆっくり流れる雲。
その穏やかな景色が、これから訪れる激しい戦いをより鮮明に感じさせる。
「僕たちは……まだ終われません」
仲間と共に。
もう一度立ち上がるために。
三人の胸には、それぞれ新たな覚悟が芽生えていた。
そして――一週間後。
長かった入院生活も、ついに終わりを迎える。
退院の許可が下り、病室には少しだけ穏やかな空気が流れた。
公太はベッドから立ち上がり、大きく拳を握る。
「……やっと動ける」
その瞳には、焦りではなく闘志が宿っていた。
唯我はゆっくり深呼吸をする。
「今度は焦らない。万全の状態で戦う」
敗北は、自分を強くするための糧だ。
一祟も静かに微笑んだ。
「また三人で戦えますね」
その言葉に、公太と唯我も小さく頷く。
その時だった。
コン、コン――。
病室の扉がノックされる。
「……!」
三人が視線を向ける。
ゆっくり扉が開き、姿を現したのは畑中だった。
「ようやく動けるようになったか」
相変わらず無表情だが、その声にはわずかな安堵が滲んでいる。
「畑中」
唯我が静かに口を開く。
畑中は短く告げた。
「明日だ」
病室の空気が変わる。
「明日、基地へ来い」
「お前たちの準備は整った」
その一言だけで十分だった。
待ち望んだ時が来たのだ。
公太は勢いよく拳を握る。
「やっとか!」
唯我も静かに立ち上がる。
「……迷う理由はない」
一祟も力強く頷いた。
「今夜は心と体を整えます」
三人を見つめながら、畑中は小さく笑う。
「いい顔になったな」
そして表情を引き締めた。
「だが忘れるな」
「焦るな。お前たちの本当の戦いは、ここから始まる」
その言葉を胸に刻み、三人は静かに頷いた。
翌日
朝の空気は、どこまでも澄み渡っていた。
退院した三人は、ORVAS基地の正門の前に並んで立つ。
「……戻ってきたな」
公太が静かに呟く。
重厚な鉄の門をくぐる。
基地の空気。
訓練場の匂い。
戦いの日々が、一気によみがえる。
唯我は剣の柄に手を添えた。
一祟は深く息を吸い、心を静める。
公太は前だけを見つめる。
敗北は終わった。
ここから始まるのは――
復活ではない。
反撃だ。
三人は力強く歩き出す。
アビスとの決戦へ向けて。
新たな戦いの幕が、静かに上がろうとしていた。
コメント
1件
いよいよ動き出したね……。三人それぞれの「覚悟」の形がしっかり描かれていて、公太の拳、唯我の眼差し、一祟の微笑み、どれも印象に残った。畑中の「いい顔になったな」って台詞にグッときたよ。敗北を糧にして、もう一度前を向く強さが伝わってくる。新章、すごく楽しみ。