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28 - 第28話 ボランティアについて

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2025年05月16日

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◻︎せっかくのボランティア



「壁が明るくなったら、家中が明るくなった」


「ホント!照明まで変えたみたいだよね?」


出来上がった壁が乾くまでの間、光太郎と二人でゆっくりとお茶を飲んだ。いらないものを先に処分していたおかげで、風通りもよくなっている。あとは使うものだけを一つずつ収めていくだけだ。


「こうなってくるとさ、食器にもこだわりたいね。お蕎麦のお猪口みたいなやつとか、ザルとかさ」


「ちょっとちょっと、まだ蕎麦打ちなんて一回もやってないのに、気が早いんじゃない?」


「んー、でもほら、僕って形から入るタイプだからさ」


わかる。釣りもそうだし、今回の壁塗りもツナギまで買ってきたし。そのおかげか、気合が入るらしく、うまくいっている。


「私、食器はあまりこだわりないから、光太郎さんが好きなやつ買っていいよ。あ、でも、置くスペースを決めてからにしてね」


「うん。蕎麦打ちを教えてくれる本村君に、いいお店を訊いてみるよ。その前に蕎麦打ちの道具も必要だな」


広く明るくなったキッチンで、光太郎が料理をする姿が浮かぶ。私自身もこのキッチンならば料理が苦にならない気がしてきた。


___今までは使いにくいキッチンだったから、料理が嫌だったのかも?


料理がめんどくさいから使い勝手が悪いままで、さらに片付けることもしなくてまた料理が嫌になる……そんな悪循環だったのかもしれない。家を新築したばかりのころは、キッチンに立つのも楽しかったことを思い出した。

こうやって、家中のあちこちを使い勝手がいいように変えていけば、これから訪れる老いによる億劫な気分も、いくらか軽減されるだろう。




「そういえば訊きたいことあったんだけど。この前、“せっかくのボランティア”とか言ってなかった?ほら、洋服のリサイクルの時」


光太郎は、以前はボランティアなんてまったく興味を持っていなかった。どちらかというと偽善者的で好きではないようだったから、あの言葉の意味を知りたかった。


「あー、昔はさぁ、ボランティアって、やってあげてる感がヒシヒシだなと思ってたの。でもね、なんていうか、やってるこちらがうれしいんだと思う。“ありがとうございます”って言われるとさぁ、こんな僕でも役に立つことがあるんだって、うれしくなっちゃうんだよね」


少し前に、家の前を掃除していた時(私がやってと言ったからだけど)、側溝のゴミを集めていたらどんどん先へ進んでしまって、気がついたら3軒ほど先の家の前までやっていたんだとか。

それを見ていた近所の人たちが『ありがとうございます』『助かります』と声をかけてくれたらしい。それがとてもうれしくて、さらに先の家までやってしまったとか。


「そういえば、集めたゴミがやけに多いと思ったわ」


「あの時は、結構な距離のゴミ処理をやっちゃったからね。でもほら、こんなご時世だからさ、こっちはよかれと思ってやってても、相手からしたら不快なこともあるでしょ?勝手に自分家の前をゴソゴソやって!って。だから、大々的に“ボランティア”って分かってる方がいいような気がしてね。だからさ、これからはボランティアも参加しようと思ってるんだよ」


「それは時間と体力の有意義な使い方かもね?」


「だからね、ここに登録しといた」


光太郎がスマホの画面を見せてきた。それは自治体が運営するボランティアのサークルだった。14人が登録しているようだ。近所の人もいるけど、ほとんど知らない人達だ。


「なんかすごいね、光太郎さん。また新しい仲間が増えたんだね」


「まぁね、でも、こっちと違って変人の集まりみたいになってるよ」


“こっち”というのは、シルバー人材センターだった。こちらは少しとはいえ、時給が発生するらしい。何かをやってもお金を欲しがらないボランティアグループの人たちとは、少々考え方が違うようだ。


「僕はラッキーなことにお給料はなくても生活できそうだから、これからは“ありがとう”をたくさんもらうために頑張ろうかなってね」


人って、変わるものだなぁと思う。夫の光太郎は人生の節目を一つ迎えたことで、考え方や感じ方がガラッと変わった。


___なんだか私だけ、置いてけぼりだな


私も新しく何かを始めたくなった。









それから、洗面所やトイレの洗剤などのストックも見直した。今は夫婦二人だから、無駄に買い置きをする必要もないねと、話し会う。

そうやって無駄だと思うものはどんどん省いていき、夫婦それぞれが楽しいと思えるものは吟味して買い足して行く。


リビングも自分の部屋も、好きなものに囲まれていくと毎日が楽しくなる。



「そうだ、これも整理しよう!」


光太郎が出してきたのは財布だった。その中から出てくるいろんなカード類。


「使い勝手がいいものだけを残して、あとは解約することにした」


「ポイント貯めるの、楽しみじゃなかったの?」


「それね!ポイントを貯めるために必要ないのに買い物したことあったんだよね。だったらポイントじゃなくて、現金で買えよって話。それに僕に何かあったら、あちこちのカード会社に連絡するのも大変でしょ?だから一枚にしとく」


「あ、そうだね、私もそうする」


価値観が似てる夫でよかった。











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