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◻︎現在の財産とか
「財布のついでに、今うちにある財産を確認しとかない?」
私は、結婚してからずっと家計を預かっている。夫は小遣い制でそれは今も変わらない。
結婚当初は少ない小遣いで我慢してもらった。私もずっと働いていたけれど出産を機に一旦専業主婦になり、子供が大きくなってから今のパートを始めた。
世の中が不景気になれば、それなりに夫の給料も下がった。けれどなんとか乗り越えてこれたのは、光太郎が私を信用して財布を全部預けてくれたからだと思う。
私は全部のお金を預かって、そこから色々取り分けて、少しでも貯金を増やそうと頑張った。投資というものは怖くてやらなかったけど、積み立てや保険もそれなりに勉強してやりくりしてきた。おかげで、いくらかの財産形成ができていると思う。その長年の努力を光太郎に披露して、認めてほしくなった。
「うちに、財産ってあるの?僕の退職金くらいじゃないの?」
「長い間、家族のために頑張ってくれたんだもんね。どれくらいあるか知りたいでしょ?。私もちゃんと光太郎さんを労ってなかったし。長い間、働いてくれてありがとうね。これが今うちにある全財産だよ」
会社で嫌なこともあっただろうけど、家族に不満をぶつけることもなく、定年まで働いてくれてまとまった退職金も受け取ってくれた。
「知りたい気もするけど、思ったより少なかったらショックかも?」
「あ、それはあるね。でもそうだとしたらそれは私のやりくりがよくなかったってことだよ」
私は預金通帳と保険証券をすべて持ってきた。百万円ほど入ったへそくり通帳は隠していたけど。
「ん?え?ほぉー」
「どう?」
「すごいね、涼子ちゃんに任せてよかったよ、僕が管理してたらこんなには残せてなかったと思う」
「そう?思ったよりもあった?」
家計を預かるのは責任重大だけど、やりがいもある。何が起こるかわからない時代に、いかに備えるか?それは大きな宿題のようだった。それでも、大切な家族を守るためにと少しの節約を積み重ねて、お得になることを勉強してそれが成果としてあらわれたら、こんなに楽しいことはないかもしれない。
光太郎は、ならんだ通帳の数字を数えていた。保険証券も確認している。
「うん、思ってたよりあったよ。あ、僕の小遣い通帳も出そうか?」
「ううん、いらないよ。私もへそくり通帳は、持ってるから」
二人で目を合わせてニヤリと笑う。それぞれの自由になる通帳はあった方がいい、これは結婚当初からの約束だった。自分が自由に使えるお金があるかないかで、毎日の気分が変わるから。
「これなら、老後もそんなに心配いらないね」
「そうだと思うよ。これからは楽しく暮らしたいもんね」
経済的なことも、スッキリした気がした。