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「……っ、何ですか、この香りは。邪悪さと聖なる輝きが同居しているような……」
白蓮の鼻がピクピクと動く。 黄金色……というよりは、どこか虹色に輝くスープが釜の中で踊っている。魚介を一切使っていないのに、立ち上る湯気には、まるで大海原を駆け巡る大群の魚が見えるような幻覚(旨味)が宿っていた。
「さあ、お待たせ。魚を一匹も殺さず、キノコと昆布の魔力だけで作り上げた**『精進白だし・極(きわみ)』**だ!」
俺は完成した出汁を、小さな猪口(ちょこ)に注いで白蓮に差し出した。
彼女がそれを一口、含んだ瞬間――。
「…………っ!! な、南無三ッ!!」
白蓮の背後から、目も眩むような後光が溢れ出した。彼女の瞳が潤み、頬がバラ色に染まっていく。
「何という……! 舌の上で何万ものキノコの精霊が、不殺生の喜びを歌い踊っているようです! 魚介の力を使わずに、これほどまでに厚みのある『慈悲』を表現できるなんて……!」
「お、おい、白蓮! 落ち着け、髪の色がさらに派手になってるぞ!」 「はわわ……白蓮様がトランス状態に……!」
星(ショウ)やナズーリンが慌てる中、白蓮は俺の手をガシッと掴んだ。その力は、さすが超人尼僧、不老不死の俺でも骨が鳴るほどだ。
「料理人さん! この出汁があれば、全妖怪を救済できます! 今すぐこの船の『典座(てんぞ・料理責任者)』になって、世界中にこの徳を振りまきましょう!」
「いや、だから、俺は博麗神社の……!」
「いいえ! これはもはや宗教改革です! 救世の始まりです!」