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花月夜れん
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「サンドボアはボスとナンバー2のオスの生体が2頭。それに付き添う複数のメスと……それからボスとの間の子供の10頭前後の群れで行動してるんだ」
「あんた……ほんとよくそんなことまで知ってるわね……」
「そこで……」
フィニスが店主の方に視線を向けた。
「おばちゃん。肉いらねぇか?」
「え?いるかいらないかだったらもちろん欲しいよ」
「あんたもしかして……」
改めてニヤリと笑い、ニティアを見るフィニス。
「獲物の大きさで競争しようぜ」
「なっ!?」
「ルールは簡単だ。狩れるのは1頭まで。時間は日没までってところか」
「あんたこんな時に何を……!」
「エラリスなら大丈夫。アルテアも付いてる。ここで静波の葉見つけて持って帰れば余裕で間に合うだろ。そんなことよりあれか?もしかして……自信がないとかだったか?それなら仕方ないなぁ……やめておくか」
その言葉に火がついたニティア。
「は?何言ってんの?いいじゃないのやってやるわよ!」
「いいね!それじゃ負けた方は買った方の言うことを1つ聞くって事でいいな」
ギロリとフィニスを睨みつけるニティア。
「はん!余裕よ。後で後悔しても知らないんだからね!」
そう言ってニティアは空を飛び、オアシスの向こう側まで飛んでいってしまった。
「……」
飛んでいくニティアを見て唖然とする店主。
「おかあさん。おねえちゃんとんでいっちゃったよ」
「ほんとだね……」
余程頭に血が昇っていたのだろう。他人にはなるべく見せないようにしていた魔法をあっさりと使っているニティアに苦笑いをしながら、フィニスは店主とリヴに小屋に避難するように伝え、急いでオアシスの対岸まで向かっていった。
⸻
対岸でニティアと合流するフィニス。
「あら、遅かったじゃない」
ドヤ顔で煽ってくるニティアにため息をつくフィニス。
「お前。おばちゃんとリヴちゃんに飛行魔法を見られてたぞ」
「あ……」
「ったく……まぁ別に驚いてただけだったけどな」
「……ごめん」
「まぁ、済んだことは後だ。気を取り直して……やるぞ」
「うん!」
一気に浮遊し、高い木の枝に腰掛けて辺りを見回すニティアと、同様に飛び上がり、別に木の枝に座り気配を消すフィニス。
しばらくそのまま身を潜めていると……
ザザザ……
何箇所かで地面の砂が動き始める。
ズザっ!
その中でも一際大きく動いていた場所から、巨大なイノシシが現れた。
「でかい……もらいっ!」
ニティアが瞬時に術式を構築。雷で作った槍を巨大なサンドボア目掛けて撃ち放った。
バチチッ!バチン!
「なんで?!」
「あ〜あ……」
しかし、サンドボアの毛皮はその雷の槍を弾き返し、すぐさま仲間らと共に砂の中へと潜り込んでしまった。
「……」
「あいつらは森のイノシシと違って毛皮も皮膚も硬いんだ。いつものイノシシだと思って攻撃するとそうなるぞ」
「なんでもっと早く言わないのよ!」
「条件に先生みたいな魔法制限はかけなかっただろ……」
「ぐぬぬ……」
「でもまぁ……おかげでやりやすくなったかもな」
「え?」
フィニスが木から飛び降りる。
「あんた何やってんの?!」
顔を上げ、ニティアを見上げるフィニス。
「さっきの砂の動き、多分全部で12箇所。うち小さい砂の動きもあったから子供もいる」
「ん?」
「イノシシが、目の前に敵を見かけたらどうする?」
木の上からニティアが答える。
「突進してくるわね」
ニコッと笑い、その場で軽く飛び跳ねるフィニス。
「そ。でも多分今地面に潜ったのも子供を地中に避難させる為だ。そしてその後、自分たちの縄張りで暴れている奴がまだいたとしたら……?」
フィニスの周りの砂がボコボコと泡立つかのように動き始める。
「襲ってくる……」
「そう言うこと!」
言葉と共に飛び上がるフィニス。フィニスが飛び上がった瞬間に、数匹のイノシシが牙を突き立てて勢いよく地面から飛び出してきた。
「1……2……3……。全部で8頭!子供以外全員出てきたか!」
飛び上がりながら、地面から出てきたサンドボアの数を確認するフィニス。フィニスを直接狙ってきた個体は、どうやら先ほどニティアが魔法で狙った個体なのだろう。1番大きく、鼻息も荒く興奮している様子だった。
「さっき私が狙った個体もいるわね。横取りしないでよ!」
ニティアがゆっくりと術式を構築し始める。
「早い者勝ちってな!」
「なっ!ずるい!」
魔法を撃たないニティアをよそに、フィニスは空中でくるりと体の向きを変え、木を蹴り飛ばす反動を利用すると、1番大きなサンドボア目掛けて飛びかかっていった。
「もらい!」
襲いかかってくる数体のサンドボアの攻撃を片手の剣を利用していなしていき、大きな個体とぶつかる直前で片剣の魔法効果を発動。
キーンと唸る空気を発しながら、サンドボアの突き立てた牙を反対の剣で受け流すと……
ヒュン!
くるりと体を回転させ、器用に相手の首元を切り裂いていた。
キィー!キィー……
一瞬だけ暴れるも、出血の多さですぐに倒れるサンドボア。周りにいた他のサンドボア達は群れの大きな個体が倒されたからなのか、動きを止めている。
ヒュン!
剣についた血を振り落とすと、フィニスはニティアの方に視線を移し、ニヤニヤと笑っていた。
「さて……俺の勝ちでいいのかな?」
木の上でフィニスを見下ろしているニティア。術式構築をしていた格好のまま微動だにしていない。
よほど悔しがっているのだろう……そう思ったフィニスがニヤニヤしながらニティアの顔を近くで拝もうと数歩近づいたその時……
ザザザザ!
突如フィニスの真下の砂が動き始める。
「?!」
フィニスが慌てて飛び上がった次の瞬間……
キィー!!
地面から突如現れたサンドボア。身体は先ほどの個体よりもひとまわり以上大きく、牙に至っては2倍以上の長さをしていた。
巨大イノシシの攻撃を交わしたフィニスは、そのまま木の枝にぶら下がる。
「さっきのあいつがボスじゃなかったのか!」
「さて……あんたはもう一頭倒しちゃってるから、この個体は私の獲物……ってことになるわよね♪」
先ほどからずっと術式を構築し続けていたニティアが手をかざす。
「お前!あいつがボスじゃ無いって分かってたのか?!」
ニティアの顔が勝ち誇った笑顔から真面目な顔へと変わる。
「いただきます」
小さくそう呟いた瞬間、ニティアの手からは細く黒い光が一閃……
ヒュン!
額を一撃で貫かれたサンドボアは、そのまま身動き一つすることなくその場で倒れる。
ドーン!
深く目を瞑った後、ゆっくりと目を開けるニティア。そしてフィニスの方へ向き直すと……
「私の勝ちね♪」
屈託のない笑顔で勝利を宣言した。
コメント
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あらためて読んだけど、この競争シーンめっちゃ熱かった!フィニスが先にデカいの倒して「俺の勝ち」ってドヤった直後に、まさかのホントのボス登場でニティアが待ってましたと一撃…あの展開、痺れたよ🥀✨ お互いの読み合いと駆け引きが本当に丁寧で、最後の「私の勝ちね♪」の屈託ない笑顔もニティアらしくてニヤついちゃった。続きも楽しみにしてるね🤍