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花月夜れん
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群れのボスが倒れたことでサンドボアの群れは困惑。メス一同は一斉に砂の中に潜り、その場からそそくさと退散していった。
「お前……最初のが群れのボスじゃ無いって気づいていたのか」
枝に掴まりながら、フィニスがニティアに尋ねる。ニティアはくすりと笑うと、ふわりと地面へと降り立った。
「最初に攻撃した時は分からなかったわ。でも2回目に地面から出てくる時。全体の個体数を確認しようと魔力探知をしていたら、地面の奥底に……大きな魔力を一つ感じたのよ」
シュタッ
ニティアに続き、フィニスも地面に降りてきた。
「黙っていたのか……!」
ドヤ顔でフィニスを見るニティア。
「最初の個体が出てきた時、私が狙うそぶりをすれば……あんたなら先を越そうと突撃するだろうなって思ってね(笑)。あとはそのままボスが出てくるまで魔力を溜めて……って訳♪」
「ぐぬぬぬ」
「まぁこれで私の勝ち♪……っと、その前に……」
辺りをくるりと見回すニティア。新芽は出ているが、まだ薬草として使えるほど成長をしている静波の葉は無さそうだ。精霊の魔力のせいもあり、成長が早い。夜になる頃には、必要な枚数の確保はできるであろう。
「いったんこの子達を運びましょ」
落ち着いた様子で答えるニティア。
「そうだな……」
それに項垂れながらも頷くフィニス。最低限の処理をその場でし、2頭のイノシシをニティアの魔法で浮かばせながら、オアシスの向こう側まで運ぶことにした。
⸻
「こりゃまたでっかいのを倒したもんだね……」
運び込まれた2頭のイノシシを見て唖然とする店主。
「あの……」
飛行魔法を見られたことにより、少し緊張をしているニティア。
……化け物
ここ最近そんな暴言を言われることはなかったとは言え、過去のトラウマはそう簡単には消えてくれない。
そんなニティアを見た店主が、リヴの背中をトンと叩く。
背中を叩かれたリヴが、てくてくとニティアに近づくと……
「おねえちゃん、そらもとべるし、こんな大きないのししもたおしちゃうなんてすごいね!」
ニコニコと笑いながらニティアの目の前でピョンピョン飛び跳ねるリヴ。
「小屋の中には、オアシスの管理職員やデューンホースの運転手。そして私たちみたいに下見に来ている人達が何人も来てるんだ……調理施設ももちろん完備されている」
リヴの後ろで、店主がにっこりと笑った。
「今日は腕によりをかけて作るよ!リヴ、いっぱい作らなきゃだから手伝っておくれ!」
「うん!」
そう言った後、笑顔でニティアを見る店主。
「あんた達は、他の小屋の人たちに声をかけてきておくれ。今日の晩御飯はイノシシのフルコースだよ!」
「……!はい!」
笑顔で答えるニティア。それを見て、ふっと笑みが溢れるフィニス。機嫌が良くなれば罰ゲームも軽いものになるだろう。そういう思いもあり、余計にフィニスの心も軽くなっていた。
⸻
店主の料理により急遽開かれた軽い食事会。普段なかなか食べられないサンドボアの料理に舌鼓を打ちながら、害獣を退治してくれたフィニスとニティア。そして料理を振る舞ってくれた店主とリヴに皆が感謝をしながらお開きとなった。
「もう行くのかい?」
皆も帰り、静まり返ったオアシスに店主の声が響いた。
「まぁな。目的は静波の葉だったわけだし」
「さっきは使えそうな大きさの葉はぱっと見無さそうでしたけど……ここの成長速度なら、多分もう何枚かは採れると思いますので」
お互いが視線を合わせ、軽く頷く。
「おばちゃん、ご飯ご馳走!」
「とっても美味しかったです!」
「あぁ、またいつでも食べにきな!」
「おにいちゃんおねえちゃん!またあそびにきてね!」
ひょっこり店主の後ろから現れたリヴが手を振る。2人も手を振り、リヴに軽くハイタッチをすると、ニティアが杖に魔法を込める。
フワッ……
フィニスとニティアの身体がふわりと宙を舞った。
「わぁ…!」
キラキラした目で2人を見るリヴ。
「リヴちゃんもまたね!」
「それじゃ!」
そう言い残すと、2人はオアシスの上を飛び越え、対岸まで飛んでいった。
⸻
再びサンドボアを倒した対岸へ来た2人。数時間しか経っていないのに、明らかに植物が成長している。
「多分あれかな。さっさと採っちゃおうぜ」
決して生い茂っているわけでは無いが、目の前には点々と静波の葉が生えている。フィニスは茂みに腰を下ろすと、草をかき分け、静波の葉を探し始めた。
「そうだね」
フィニスのすぐそばで腰を下ろすニティア。
プチッ
ガサガサ
プチッ
「ねぇ。今日の狩りの罰ゲームだけどさ」
静波の葉を採取しながら、ニティアがポツリと呟く。
プチッ
ガサガサ
「なんだよ……もう決めたのか?」
ガサガサ
「たまに…………とか……」
「え?なに?聞こえなかった」
草を掻き分ける音でニティアの声が聞こえなかったフィニスが、手の動きを止めて顔をニティアに向ける。
「だから!」
顔を向けず、黙々とガサガサ手を動かし続けているニティア。
「たまに……人目につかないところで……今日みたいに2人で空を飛んだり……とか……」
「!」
耳を真っ赤にしながら背を向けて静波の葉を探しているニティア。
「そうだな……罰ゲームじゃ仕方がないし、そうするか」
その言葉を最後に、しばらくの間静まり返った夜のオアシスには、草を掻き分ける音と……草を摘み取る音の2つの音だけが響き渡っていた。
コメント
1件
うわっ、第88話お疲れさま!ニティアとフィニスのコンビ感、めっちゃ良い感じになってきたね✨ まずサンドボア戦、ニティアが「最初のはボスじゃないって気づいてた」ってドヤるところ、計算高くて好きだわ。フィニスの「ぐぬぬぬ」が脳内再生された(笑) あとリヴちゃんの「おねえちゃん、そらもとべるのすごいね!」でニティアがほっとする流れ、ジーンときた。過去の「化け物」発言のトラウマを優しく溶かしてくれたのが良い。 そして最後の罰ゲーム……「たまに2人で空を飛んだり」って小声で言うニティア、耳真っ赤にしてるんじゃないの?! フィニスの「罰ゲームだから仕方ない」も、照れ隠しにしか聞こえんわ(笑) 静波の葉摘みながらの距離感、すごく甘酸っぱくて刺さった。次も楽しみにしてる!🔥