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柘榴とAI

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#没入感フィクション
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柘榴とAI

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『急なお願いですみません、6keyさん。本日はよろしくお願い致します』
「は、はいっ! 此方こそ、よろしくお願いします!」
無線から聞えて来る、早乙女さんの声。
本日は前に言っていた、学習ソフトを使って私達の行動パターンを覚えさせたNPC。
これの試作品が幾つか出来たから、お試しで戦闘の感想を教えて欲しいと言うモノ。
まだまだテスト段階で、とてもじゃないが完成とは言えない状態らしいけど。
その為、実際にモデルとなった私達賞金首が直接戦闘相手を務め。
更にはバグやおかしい所があれば、その都度意見が欲しいと言うモノ。
なんだか最初期、というかガンサバを始める前の、お兄ちゃんからお願いされていたデバック作業を思い出す。
アレもアレで楽しかったし、戦うのはNPCでこっちもソロが当たり前。
ちょっと懐かしい気分になって、ウキウキしながら6keyでログインしたのだが。
今回は早乙女さんもモニタリングに加わると言う事で、ちょっと緊張。
『夢月、どうする? それこそ負けちゃいけないって訳でも無いし、俺と早乙女さん以外には現状見られる心配も無い。前みたいに自分だけで進めた方がデバックしやすいのなら、無線は切るが』
ガンサバでは珍しいとも言える発言が、お兄ちゃんからは聞えて来た。
あぁ~なるほど、昔はずっと一人でやってたもんね。
ソレを考えると、確かに“相手を観察する”って意味では集中出来るのかも?
どうしてもお兄ちゃんが居ると、分かんない事はすぐ頼ってしまうし。
そんでもって、ノンタイムで答えが返って来る環境だと……相手を知るっていうより、相手にどうやったら勝てるかって思考回路にシフトしてしまう気もする。
「え、えっと……お二人共、時間ってどれくらい大丈夫なのでしょうか……? もちろん、一人でやって後で結果報告だけ~って形でも良いなら、そっちの方が二人の時間を奪わなくて済むんですけど……」
こういう作業、集中し始めると長いので。
何時間も二人に“仕事”として付き合ってもらうとなると、流石に申し訳ない。
なので、その場合はきっちり時間を決めて進めた方が良い。
だとすれば、最初から兄のサポートを入れた方が良いのだろう。
『俺はすぐそこの部屋だからな、むしろお前が集中し過ぎたら警告する意味でも、最後まで見るぞ? まだ平日だからな。せっかく良くなって来た生活リズムを、今更崩すな』
兄からはピシャリと叱られてしまったけども。
もう一人の相手はというと。
『あぁ~そういう事でしたら、私は時間を決めて“この時間まで見学させてもらう”。みたいにしましょうかね? こちらも既に家ですから、そこまでお気遣い頂かなくて大丈夫ですよ? むしろ夢月さんの生活に影響が出てしまう方が不味いので、適当な所で終わりにして続きは後日、でも構いませんし』
という事で、一応時間制限はあるけど結構自由にやって良いって事になった。
ではあれば……久しぶりに。
「どうしても困った時はお兄ちゃんに頼るから、それまでは一人でやってみて良い? 多分何度も死に戻りするから、あんまり見ていて面白い映像にはならないけど……」
『OK、分かった。そんじゃ夢月は本当にいつも通り、自由にやってみてくれ。困ったらいつでも声掛けて良いからな? 今だけは、“負けちゃいけない賞金首”って事を忘れろ。6keyを使ってはいるが、前やってた時みたいに死にゲーのデバック作業だと思ってくれ』
『ちょ、え。良いの? 白川君。他の賞金首達は、皆サポーター付きでチェックしてもらってるのよ?』
『問題ありませんよ、むしろウチの妹の“学習能力”を見てもらう良い機会です』
何か凄い事言っているけど、とにかく始めて良いって事なので。
無線を切って貰ってから、フィールドへと踏み込んで行った。
今回戦うのは、私のコピー。
ハンドガンで近接戦特化、そしてステルスキルを狙って来るのは間違いない。
更にはこれまで私が使っていた武器は全て似たような物を所持しており、ショットガンやアサルトライフル。
そして前回使ったでっかいハンドガンも使って来るみたいだ。
あとは爆発物とナイフ……くらい、かな?
ちょっと不思議な感覚だけど、とにかく練習用のフィールド内で身を伏せながら進んでいく。
6keyを使っているのに、お兄ちゃんのサポートが無いって言うのも何だか凄く久しぶりなので、そっちも新鮮ではあるのだけど。
周囲を監視してくれる人がいないって、こんなにも心細いモノだっけ?
などと早くも不安が募り始めるが、ソレを振り払いつつ暗闇の中を進んでいくと。
「っ!」
早速、遭遇した。
曲がり角に踏み込んだ瞬間、物陰から飛び出して来て此方の銃を直接掴んで来る。
だがここで慌てて取り戻そうとしたり、距離を空けようとしたり。
それこそ自分の銃に気を取られると……。
「そこっ!」
すぐさま相手の銃口が別角度から迫って来て、私のお腹に押し付けられそうになったので。
此方は膝を突き出して、相手の武器を蹴り飛ばした。
すると向こうが手放した銃をそのままに、すぐさま身を翻して逃走。
これに対して、何とか奪われなかったこっちの銃を向けようとしてみるが。
「くそっ、手癖悪いなもうっ!」
此方のベルトに付いていた手榴弾のピンだけを抜いたらしく。
気が付いた瞬間にベルトのバックルをワンタッチで外して、此方も逆側の物陰に飛び込んだ。
次の瞬間にはドデカイ爆発音が響き渡ったが……あぁもう! 予備のマガジン全部捨てちゃったじゃん!
コレが、敵として遭遇した場合の6keyという存在の戦い方。
でもやっぱり、私と少しだけ行動が違うのが分かる。
最適解を求めて組み上げられたアルゴリズム、言わば効率と“役割”をこなす事を最優先させる動き方。
なのに、無理矢理“私の癖”を詰め込まれている。
これであれば……勝てない事は、無さそうだ。
とはいえ、最初の数回はこっちが負けるかもしれないけど。
「…………ふぅ、スゥゥ」
小さく息を吸い込んでから、もう一度進み始めた。
マガジンと爆発物を全部捨てちゃったから、此方にあるのは9mmと50AEのハンドガンが一丁ずつ。
弾は弾倉に入っている分で全部。
後は、ポケットにナイフが一本。
まったく……最初から、難易度を上げてくれるよ。
◆
『うそ……一戦目から、普通に勝っちゃいそうなんだけど』
「夢月にしては、珍しいですね。普段は何度もやり直して、相手の行動パターンを覚える所から始まるんですけど。その辺りは、“自分だから”って事で事前情報が揃い過ぎている感じです」
モニターに映っている6keyを、場所は違えど同じ映像を眺めつつ感想を零していた。
ガンサバイブオンラインを始めてから、夢月は本当に強くなった。
即断即決の能力は研ぎ澄まされ、何より突発的に思い付いた行動を取る事に対しても迷いがない。
この辺りは、対人戦の経験がそのまま反映されているのだろう。
これまでアイツがやって来たゲームは、基本的にソロでNPC相手。
だからこそ勝ち負けではなく、とにかく“攻略”を進めるプレイヤーだったのだ。
何度負けようが、その度に相手の行動パターンを読み取って“事前に潰す”を続けるスタイル。
自らがやられるのは当たり前という前提の下、例え即死級の攻撃が来ようともソレ等全てを“記憶と現在パターン”に当て嵌めて対処する。
そういう戦い方だった人物が、一回限りの勝負って世界に踏み込むと……こんなにも、化けるモノなのかと俺でも驚いてしまう程だ。
そして今の映像は、早乙女さんにとっては随分と衝撃的だったらしく。
『他の賞金首達は、皆揃って同じ事を言ってたのよ? “やり辛い”とか、“何だか気持ち悪い”って。そりゃそうよね、自分の行動パターンと同じ事をして来る相手なんだから』
「ちなみに、今のところテストが終わってる面々はどれくらい居るんですか?」
『今のところ4・5・7・8の四名。4cardは見事なまでの泥仕合、両者共攻め込めない状況が続いた。555は最終的に街中全てを巻き込む様なカーチェイスが始まり、もはや別ゲー。sevenは……珍しく相手の悪口言うくらいにムキーってなってたわよ、キモイって連呼しながら戦ってた。octopus8に関しては……絶対最後は両者を巻き込む大爆発で決着、結局勝負がつかなかったわ』
おやおや、他の皆様は随分と苦戦というか……苦労している様だ。
しかしながら俺等“運営側”としては良い事でもある。
賞金首に上り詰めるプレイヤーでさえ、こうして“ちゃんと苦戦する相手”を用意できた事になるのだから。
本人達程の多様性はなかったとしても、間違いなくプレイヤー達にとっては大きな壁となってくれる。
だが今回の壁は、賞金首本人を狩るよりかはずっと低いハードルとなる。
ただの強NPCとして登場し、賞金首にやられた時のデメリットは発生しない……まさに“練習台”。
これはなかなか、面白い事になって来たねぇ。
なんて、思わず口元が吊り上がってしまったのだが。
「お、こっちももう終わりそうですね」
『え、うっそ。まだまだ戦闘続きそうな感じだけど……いや待って? 今ってどっちが勝ってるの?』
こらこら、貴女もsevenのサポーターでしょうが。
彼女と夢月では戦い方がまるで違うが、それでも“決めに行く”時の行動くらいは見抜けなくては。
「間違いなく……勝ちましたね。夢月にとっては、ちょっとハードルが低かったみたいです。行動を真似された所で、効率ばかりを優先する“NPC”じゃこんなもんでしょうけど」
そう言い放った瞬間、物陰から飛び出した夢月が相手に威嚇射撃。
ソレ等が止んだところで、弾切れを起こしたと敵には察知された様で。
向こうはこれまで以上に大胆に飛び出したけども。
馬鹿め。
ウチの妹は、たった一つだけ手元に残っている最後の武器だって、平気で相手に投げつけるぞ?
“生き残る”為だけに生き残っているという、まさに人間らしい行動理由だからこそ、道具は道具と割り切っている。
この後も戦闘が続いた場合の“武器が無くなる事”への警戒や、弾切れに対して慌てる様な次元ではないんだよ。
俺の予想を肯定するかの様に、飛び出して来たNPCの顔面に新しくなった6keyの愛銃が激突。
これによって怯んだ瞬間、向こうが構えていた銃を抱えこむ様にして向きを変え。
相手の指さえも一緒に、トリガー部分に自分の指を押し込んだ。
そして敵の喉元に、至近距離から向こうの銃口を突きつけ。
『私の勝ちだ』
物凄く接近した状態のスーツの男が二人。
その狭い空間内にマズルフラッシュが輝いた後……ゆっくりと、NPCが地面に伏せた。
流石だよ、夢月。
俺の中では、お前こそ最強の賞金首だ。
さっきとは違った意味で、更に口元は吊り上がり。
もはやテンションが上がり切った状態で、もう一度無線を繋ぎ直した。
「お疲れ、夢月。凄かったぞ~? 格好良かった」
『あ、お兄ちゃん。終わったよー? もう一回やって良い? 何となく攻略法分かって来た!』
無表情のおじさんが、監視カメラに向かって声だけ元気な様子を見せる。
そうか、楽しかったか。
なら良かった。
などと、いつも通りの雰囲気に戻り始めていると。
『す、すご……ていうか、こわっ!? え、夢月さん戦い辛くなかったんですか!? 一発攻略って、マジですか!?』
『あ、あ、あ! 早乙女さんも見てたんだった! す、すみません、時間掛かっちゃって。えと、とっても面白かったです。自分の悪い癖とかも見られましたし、ソレを残したままNPCらしい行動が混じるんで、戦い辛いとかは……特に? プレイヤーの方が、ずっと緊張します』
『ソ、ソウデスカ……』
そんな訳で6keyのコピーNPCは、早速オリジナルの手によって華々しい戦死を飾りましたよっと。
中途半端に効率化を求めた、更には制限が掛かっている相手など、やはり妹の敵ではなかったらしい。
最初こそ予備弾倉を全て失うというトラブルは発生したが、残った武器だけでこれだけやれてしまうのだ。
やっぱ、ウチの妹は天才だわ。
コメント
1件
うわ、面白かった!夢月ちゃんが自分のコピー相手に一発で攻略しちゃうの、マジでカッコよかったわ。他の賞金首たちが苦戦してる中で、生存本能で武器を投げつけるラストの判断力、さすが賞金首って感じだね。お兄ちゃんの「ウチの妹は天才だわ」に完全同意。早乙女さんの「こわっ!?」って反応も面白かったし、次回のテストも楽しみにしてる🔥