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「分かった、根負け」「……根負け?」
「だから、OKってこと」
舜太に初めて好きだと告げられたあと、こいつからのアピールはとんでもなかった。
みんなといる時も小声で愛を囁いてきたり、よく俺をじっと見つめて笑顔を向けてきたり、撮影中もやたらと触れてきたり、とにかく一緒にいたがって……。
何も分からない太智の「付き合っちゃえば?」なんて言葉に勇斗は明らかに何かを感じ取っているし、柔太郎にはいつもニヤニヤと見られ、舜太からは「だいちゃんもいっとるで?」と笑顔を向けられた。
こっちの気持ちも知らないくせに平然と皆の前で言えるこいつのメンタルは本当にすごい。悪い意味で。
それなのに段々と絆されて受け入れている自分もいて、それが悔しくてしばらく心に蓋をしていたが観念する時がきた。
「そんなの、いやや」
「……は?」
思っていた反応と違うものが返ってきてコーヒーにのばした手を止めて舜太の方を向く。
「そんなの、好きやないやん」
泣きそうな顔で言ってくる舜太に面食らう。いつものように喜ぶと思っていたのに。
「俺ちゃんとじんちゃんに好きになって欲しいねん、同情とかしょうがなくとか、そんなんいらん」
舜太が俺の手を強く握る。その力強さに言葉の重みを感じた。
「じんちゃん、俺のこと好きになってよ」
その瞳には涙がたまっていて必死に堪えてるようだった。ズキンと胸が痛む。
気づいたら舜太を抱きしめていた。落ち着かせるように頭を撫でると、ぎゅうと強く強くだきしめられる。
「そうやって子供扱いしないでや…」
言葉とは裏腹に俺を抱きしめる力はもっと強くなる。
「…ごめん」
ぐす、と舜太の泣き声が聞こえる。
「そういうのじゃない。俺が素直じゃなくて、その……」
言葉に詰まる。どう説明すればいいのか、でも舜太を傷つけたのは事実で…、それは俺のプライドのせいだ。
「素直に好きって言うの、恥ずかしいんだよ…年下のお前に、ああやって迫られて、惚れた…なんて……」
舜太の抱きしめる強さが一瞬弱くなる。
「お前の熱意に負けたのは事実だけど…その…ちゃんと……すき、だよ…」
言わなくてはいけない、と分かっていても自分のプライドと恥かしさのせいで声のボリュームは最後にはほとんど出ていなかった。
ああ、言ってしまった。言葉にしてしまった。
そううなだれるように舜太の肩にもたれかかると、舜太は突然そのまま床に俺と一緒に倒れていく。
「ちょっ何何何…っ」
「ほんと?」
舜太の涙が顔にふってくる。ガチ泣きじゃん…こいつ…なんてふと笑ってしまう。
「何で笑うの!」
「いや、ごめんて」
自分が泣かせておいて言うのもなんだが、可愛いななんて思ってしまった。重症だ。
「本当だって」
舜太の顔を両手で包んで、涙をふいてやる。泣かせたのが自分なのは申し訳ないが、本当に素直で真っ直ぐであまりに自分と真逆舜太に笑ってしまう。
「…じゃあ、ちゃんと俺の目見て好きって言って」
子供のようにお願いしてくる舜太の言葉に固まり、思わず目を逸らす。
「言ってくれないなら嘘や!」
今度は駄々をこねる子供になった。最悪だ。
「言ったじゃん、さっき…」
「目ぇ見て言って欲しいの!」
思わず苦い顔をする。さっきのが俺の精一杯なのに。こうやって年下の男に組み敷かれて、まんまと惚れてしまったのを認めるだけで俺のプライドはズタボロなのに、さらにそんな事を言うのかお前は…。
素直じゃない自分が嫌になるがそれで直せたらこんな性格にはなっていない。
黙っている俺に痺れを切らしたのか舜太が俺に覆い被さってくる。またぐずつかれるのかと思ったら首筋にチュッと口付けられ「ひっ」と声が出た。
自分から出た声にびっくりして思わず自分で口を塞ぐ。
「かわええ声出すんやね」
さっきまで泣いていた子供と別人になっていて一気に焦りが出てくる。スイッチが入った舜太はまずい。
「好きっていうまでこうする」
「ちょっと、待っ……あ、う」
どんどん首筋をちゅ、ちゅと口付けられ、弱く吸いつかれて体がびくんとはねる。
バカ!それはダメだろ!と思うが自分の口から出るのは言葉にするのも憚られるような声だけだ。
舜太の手が俺の腰を撫ではじめ、本当にやばいと思って隙をついて声を張り上げた。
「わ!かった、か、ら…」
舜太の肩を抑えてそう言うとやっと口付けから解放される。
顔をあげた舜太に笑顔はなく、真面目な顔で俺を見つめてきた。
「だから、その…」
「うん」
照れながら口篭ると真剣な顔が崩れて嬉しそうな笑みが浮かぶ。ああ、ムカつく…。
そう思って無意識に口をむっとさせると舜太がもっと顔を寄せてくる。
「聞かせて、じんちゃん」
「………す」
「す?」
おねだりするような顔で優しく問いかけてくる。もう笑顔が溢れている。
本当に単純なやつだがそれを可愛いと思ってしまう自分がいる。もうダメなのだ、俺は。いい加減諦める。
「…好き」
言った瞬間、舜太はとびっきりの笑顔で俺を抱きしめる。
「俺も!」
「…それは知ってる」
「冷たいなぁ」
苦しいぐらいに抱きしめていた手を離して、やっと俺を起き上がらせてくれた。
「…じんちゃん、ちゅーしていい?」
「………………」
笑顔で言われて思わずかたまる。いや、分かっていた。そう言ってくることは。
想定はしていたし事前に脳内でシミュレーションもした。こんな事口が裂けても本人には伝えられないが。
「嫌ならええよ、今度で」
分かった、といいかけた時にそう言われ、何でこういう時だけ消極的になるんだ…と不満になる。さっきはあれほど迫ってきた癖に。好きと言っただけでそんなに満足したのか?
これが舜太の優しさとわかっているが自分の中でさまざまな文句が出てくる。
「……いいのかよ、それで」
思わずそう口から出ていた。言った後に猛烈に後悔する。これじゃあまるで、
「…なんや、じんちゃんもキスしたかったん?」
「………うるさい」
「否定しないんや」
「……ほんとにうるさい」
「かわええなぁ…もっと大好きになってまうやん…」
うっとりした声色の舜太が俺の頬を撫でる。顔は見れない。あまりに恥かしすぎる。
「もういい」
羞恥心に耐えられず立ちあがろうとする俺を舜太が引き止める。
「逃さへんよ」
「う」
舜太の手が俺の両頬を挟んで、俺の目を見つめる真剣な目を見てごくりと唾を飲み込む。
「好きやで、じんちゃん」
緊張して強く目を瞑ると、優しく舜太の唇が触れる。一度、二度、三度。角度を変えて口付けられる。目はあけられない。今どんな顔をしているんだろう。
俺のシミュレーションではここで逆転するはずだったのに。やられっぱなしだ。
そう思っているとぎゅっと閉じる唇を一瞬舌で舐められて「んっ!」と大きな声をあげてしまった。
びっくりしてあけた目の先では舜太がいたずらっぽい笑みを浮かべて俺を見ていた。
「満足した?」
「っ…べ、べつに…」
「んふふ、まだ足りひんの?じゃあ…」
「ちがう!ま、満足、した」
危なかった。油断した。またのせられるところだった。
年下の男に弄ばれれる自分に情けなさを覚える。本当は俺がリードするところなのに。
だが向き合って笑顔を向けてくる舜太は本当に嬉しそうな顔をしていて、こういうのもまあ悪くはないか…とも思う。