午前中、華はチェックイン補助を任されていた。
慣れない手つきでカードキーを準備していたが、つるりと手を滑らせて床に落としてしまう。
「あっ……!」
慌てて拾おうと身をかがめた瞬間、同じタイミングで律も手を伸ばした。
指先がかすかに触れる。
「……っ」
華は息を止め、視線を上げた。
至近距離で目が合う。
律は変わらぬ無表情だったが、華の胸の鼓動は一気に高鳴っていた。
律はカードキーを拾い上げ、静かに差し出す。
「落とすとお客様に不安を与えます。気をつけてください」
「……はい」
叱られたはずなのに、その瞬間だけは頬が熱くなるのを抑えられなかった。
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