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53 - 第3章 近づく鼓動 第53話

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2025年09月08日

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フロントに立ちながらも、華の耳には自分の鼓動がやけに大きく響いていた。


――指が触れた。

――目が合った。


そのことばかり頭をよぎり、目の前のお客様の声がうまく入ってこない。

「……桜坂さん?」

律の低い声に呼ばれ、はっとして顔を上げた。


「す、すみません! ただいま確認いたします!」

慌てて伝票を取り直し、深々と頭を下げる。


お客様が去ったあと、律が横目でちらりと見た。

「落ち着いて。今のは、危なかったですよ」


淡々とした口調。それなのに、華の頬は熱くなって仕方がなかった。

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