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#TL
瀬名 紫陽花
14,533
#BL
多 動 症 .
30
「か、叶人くんの変態……っ!」
「ふふっ、朝から本当に可愛い」
「も、もう!からかわないで……っ!」
昨夜のベッドの上でも散々言われた言葉だけれど
こうして朝の光の中で面と向かって言われるのは、やはり照れくささが段違いだ。
「ごめんごめん。とりあえず、服着替えよっか」
「あっ、うん!そうだ、会社の人に見られたら変だし、私、先に出ちゃうね!」
「え?俺は別に、一緒に行ってもいいと思うけど……」
「もう、叶人くんは今や部署一のモテ男なんだよ? 狙ってる女子社員だらけなのに、私みたいなのと一緒にいるところを見られたら、変に勘違いされちゃうかもしれないでしょ……?」
「勘違いって?」
「そりゃ、彼女いるのかなって思われるでしょ!いくら私相手でも!」
「いや、俺はそれでも――」
「とにかく、駅前のカフェで時間潰してから出社するから、お礼はまた今度させて……っ!」
私は逃げるようにベッドを抜け出し、大急ぎで支度を整えた。
「……わかった。それじゃあ、気をつけて」
背後から聞こえる叶人くんの少し名残惜しそうな声を背に、私は彼のアパートを飛び出した。
◆◇◆◇
数十分後───
私は駅前にあるお洒落なカフェの、窓際の席に陣取っていた。
目の前のコーヒーをストローで混ぜながら、深くため息をつく。
(うぅ…あんなに勢いよく飛び出してきたけど、死ぬほど恥ずかしかった……)
彼ほどのイケメンなら女性の扱い慣れていることは分かっていたけれど
昨夜のあの神がかったテクニックや
今朝のなんてことないといった風な涼しい顔は、私にとっては衝撃的だった。
(おかげで、昨日は本当に夢のようなひと時を過ごせたけど……)
今でも身体の奥底に残っている甘い痺れと
彼の広い腕の中にすっぽりと収まっていたときの、あの無上の安心感がどうしても忘れられない。
(あーもう!!これから仕事なんだから、集中しなきゃ!)
ブンブンと激しく頭を振って雑念を振り払おうとした
そのときだった
ふと、私の頭の中に、冷や水を浴びせられたような一つの巨大な疑問が浮かび上がった。
社内で女子社員たちに「経験豊富」と持て囃されて後に引けなくなり
苦肉の策として、事情を知っている初恋の幼馴染・叶人くんに「処女卒業」をさせてもらった。
これが今の客観的な状況だ。
だけど、冷静になって考えてみたとき
『男は、一度抱いた女は本命にならない』