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桜の約束

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桜の約束

2 - 第2話

♥

28

2025年08月13日

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冬の気配が近づく放課後、体育館には冷たい空気が漂っていた。

3年生の先輩たちは引退し、2年の吉沢先輩がキャプテンになってから初めての大会が、もうすぐそこに迫っていた。

この大会が終われば、先輩は受験モードに入る。

練習後、一緒に帰る時間も減るかもしれない。

そんなことを考えると、胸がきゅっと締めつけられた。


練習が終わった日、片付けをしていると、先輩が声をかけてきた。

「○○、今日はちょっと遠回りして帰らない?」

外はすっかり暗くなっていて、街灯の下に白い息が揺れていた。


公園のベンチに腰を下ろし、自販機の缶ココアを渡される。

「これ、○○好きだろ?」

缶の温かさが、指先だけでなく胸の奥まで染みていく。


沈黙が少し続いたあと、先輩がぽつりと言った。

「この大会、全力で勝ちたいんだ。…○○に、最後まで見ててほしいから」

真剣なまなざしが、冬の夜にまっすぐ突き刺さる。


その瞬間、私はやっと気づいた。

この気持ちは、もう「憧れ」なんかじゃない――。


「…もちろんです。最後まで、絶対見てます」

そう答える私の声が、少し震えていたのは、寒さのせいじゃないじゃなかった。



大会当日。

体育館は満員で、熱気と緊張が入り混じっていた。

私はマネージャー席から、アップする先輩を見守る。

いつもより少し険しい表情。

でも、その背中は、やっぱり眩しかった。

試合は予想以上の接戦だった。

残り時間10秒、同点。

ボールは先輩の手に渡る。

「頼む…!」心の中で強く祈った。


先輩は相手をかわし、ゴール前でジャンプシュート。

ボールが空中を舞う一瞬、時間が止まったように感じた。

――スパッ。

ネットが揺れ、ブザーが鳴った。


勝利の歓声が体育館を包み込む。

先輩が振り返り、まっすぐ私を見つめて笑った。

その笑顔だけで、涙が溢れそうになった。


試合後、片付けが終わった体育館の外。

夕焼けの空に冬の気配が混じる。

「○○、ちょっと…話せる?」

人のいない校庭の隅で、先輩が立ち止まった。

「…今日、勝てたのは○○のおかげだよ」

「そんな…私、何も…」

「ある。ずっと見てくれてた。それが、俺には一番大きかった」


一歩近づいて、先輩は少し恥ずかしそうに笑った。

「俺さ…○○のこと、好きなんだ。ずっと前から」


胸が高鳴りすぎて、言葉がすぐには出てこない。

でも、心はもう答えを決めていた。


「…私も、先輩が好きです」


冬の夕空の下、二人の距離がゆっくり縮まっていく。

コートの上で輝く先輩の姿も、放課後の帰り道も、これからは全部「特別」になる。


第2話

ー完ー

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