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『クソ先生の癖に』
「……っ、あれ……?」
視界がぐにゃりと歪んで、次の瞬間、俺の身体はガクンと膝をついていた。
「ショッピ!?おい、大丈夫か!」
声が聞こえた気がしたけど、返事ができない。
腹が空いてる――いや、そんなレベルちゃう。意識が、遠のく。
気づいたときには、知らん天井を見上げてた。
病院っぽい白。点滴が刺さってて、口が乾いてる。
「……起きたか」
あの聞き慣れた声に、俺はゆっくり首を動かす。
隣のソファ。足組んでるけど、顔は本気で怒ってた。
「……コネシマ先輩」
「お前、マジでアホやろ。栄養失調で倒れるって、現代っ子か」
「……放っといてくださいよ」
「放っとけるかボケ。ここ来るまで、どんだけ焦ったと思てんねん」
「……すんません」
たぶん、今までで一番素直に謝った。
なのに、コネシマ先輩は一切笑わん。
「なあ、何でや。なんで誰にも言わへんかった」
「……別に。俺がちゃんとやれば、誰にも迷惑かからん思って」
「結果、倒れて迷惑かけとるやないか」
痛いとこ突かれて、何も言えん。
「……俺、まだガキ扱いされんの嫌で」
「そんなん、ガキとか関係ないわ。
倒れるまで無理するやつのほうが、よっぽど心配させる」
初めて聞いた、真っ直ぐな声。
「俺な、お前のこと、ただの後輩やと思ってへん」
「……は?」
「仲間や。信頼しとる。せやから――頼ってくれへんの、普通に傷つくねん」
目が熱くなった。喉が詰まる。
「……そんな言い方ずるいっすよ」
「お前がずるいからや」
いつもはふざけてばっかのくせに。
こんな真面目な顔、反則や。
「……じゃあ、次はちゃんと“助けて”って言うんで、
今日は黙って隣にいてくれます?」
「当たり前や」
ああ、くそ。
先輩って、やっぱずるいわ。