紗知×怜
戦闘パロ
大粒の雨粒が降りしきる中、二人は黒美に託された仕事をこなしに来た。
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二時間前
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「いやいや、そういうのはアズに行かせるべきなんじゃないんですか?」
軽くため息をつきながら自身の薬草の調合の研究からは手を離さない様子で黒美に問いかける
なんでも遠距離攻撃の他人類を相手に近距離でしか攻撃ができない自分が行けと言うのだ
自分が研究中の時は部屋に入らないでくれと言っているのに何度言っても無言で扉を開け放ってくる
怜が着いてくると言っているが生憎、デュオは得意じゃない
好きに立ち回れないから変に気を使ってしまう
それに対してアズは遠距離、近距離、どちらも戦える
「まぁそうなんだけど…アズは今療養中だしさ?行ってあげてよ」
あぁそうだった
アズは先日別の依頼をこなしに行った帰り、他人類に襲われだいぶとボロボロな状態で帰ってきた
いくら再生するからと言って当の本人も少しは休みたいだろう
「分かりましたよ、行けばいいんですね?」
仕方なしにしぶしぶ了承しては怜にはこちらから声をかけに向かう
研究途中の薬草から作ったカプセル状の薬をポケットに何錠か入れては自身の部屋を後にしては怜の部屋へと足を進める
この研究途中の薬は回復薬になったらいいと思い調合しているが生憎実験台になる人はいないので自分自身が実験台になるしかない
どうせ今回も他人類の捕獲は無理だ、戦闘になるだろうからもし負傷したら使ってみよう
そんな軽い事を思っていると怜の部屋の前へと着いた
三回ほどノックをしては扉を開け放つ。
そこにいたのはベッドに顔を埋め、まるで死んでいるようにうつ伏せで眠っている怜だった。
そういえばこの人、一日の半分が睡眠時間なのを忘れていた
珍しく早く起きていると思った日は大体昼夜逆転している時だ
それに、途中で起こすとびっくりするほど頭が回っておらず信じられない行動を取ろうとする
これは怜の相棒である狐と一緒に行動し始めてからだという
ちなみに狐の一日の睡眠時間は12時間だ
「はぁ…黒美からの任務です、起きてください」
掛け布団を上から剥がそうとすると長い髪が手にかかる
毛先が綺麗に整った黒と紫の髪を撫でるように払い除ける
眠い目を擦りながらもゆっくりと起き上がりこちらには顔を見せなかったがそのまま面を付ける
もちろんこちらも人の顔に興味はないので見るわけもない
膝ほどまでの自分なんかよりも整った綺麗な髪を乱雑に髪ゴム一本で括っては寝起き特有のカスカスの声で喋りかけてくる
「まだ朝の9時だぞ…?」
手に刀を重そうに持っては自身の腰の左側にさす
「大体、朝の9時なんてほとんど皆起きているんですよ、12時間睡眠なんてあんまいないんですから」
寝起きの回っていない頭では何を言われているのかはさっぱりなようだった
怜にとっては昨日就寝したのは1時なため8時間睡眠であり、4時間も睡眠時間が足りていないのは致命的だった
「とりあえず、早く行ってさっさと終わらせましょ、そしたら寝たらいいじゃないですか」
そう言ってはまだ眠そうな怜を引きずるかのように外まで連れ出しては共に並んで歩く
横で無理矢理起こされた怜は不機嫌そうに文句を言っているが今回ばかしは仕方がない
大粒の雨が降りしきる中を2人傘をさして歩くがどうしても少しは濡れてしまう
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現 在
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「ここか?その目的の場所ってのは」
流石に1時間近く歩き続けていれば少しは頭も回るようになったのだろう
そのように問われては “えぇ、そうみたいですね “と黒美から送られてきた手元の位置情報と見比べる
まるでお城のような大きな建物を見上げるように見てはさっさと終わらせようと傘をたたみ、重い扉を開けては中へと入る
中はとても綺麗に整っており、真っ白な空間だった
物珍しそうに辺りを見渡していると一人の小さい女の子が真っ白な階段から顔を出しては健気にこちらへと走ってくる
驚いている間にもその小さな女の子は笑いながらこちらへ抱きついてきた
「なんでお姉ちゃんはここに来たの~?」
そんな笑顔で抱きつかれては振り払うのにも振り払えない
「えぇっと…」と、返答に困っているうちに突然、物凄い激痛が全身を駆け巡った
少女の腕の力は一向に緩まない
一気に表情が歪んだためか、怜がすぐさま異変に気づきこちらへ走ってきたかと思えば少女を横から蹴り飛ばす
子供相手でも容赦がない性格はずっと変わっていないようだ
壁にへと打ち付けられた少女を他所に少女の腕が巻かれていた場所を見る
すると、まるで棘のようなものがそこには刺さっており刺された場所は紫がかった色に変色している
「これはやられましたね…」
しばらくすると腕が麻痺し、感覚がなくなってくる
前回も植物系の奴と戦ったのに今回もこれか、と深くため息をつく
この棘の形状にこの症状、恐らくオーストラリア北東部に分布しているギンピギンピだろう
そんな事を思いながらポケットに入れて置いた試験段階の薬を二錠ほど飲んでみる
すると驚くことに棘が刺さって紫色に変色していた場所はみるみるうちに元の肌の色へと戻り、全身を襲う激痛も治まってきた
運がいいことにこの薬は解毒剤として使えそうな事が分かった
だが刺された場所の傷が治るわけではない、深く刺さった棘からは血液が流れ、白い袴が所々赤く染まる
そんな事を気にしていると突然耳を劈くような声が聞こえてきた
それは先程、怜に蹴り飛ばされた少女の泣き声だった
子供の泣き声は頭の中にうるさく響き渡るからとてつもなく嫌いだ
耳を塞ごうとするのと同時に目線を少女にやる
すると少女の背中からは植物の枝が生えており、それらを伸ばしてはこちらへ物凄い勢いで迫ってくる
反応しきれない、そう思い咄嗟に目を瞑ると「油断するな」とこちらに声がかかり目を開ける
そこには長い植物の枝を逆手で切り落とした怜がいた
「申し訳ないです、ありがとうございます」
そう軽く言っては自身もようやく戦闘態勢に入る
相手は再生しきった長い何本もの植物の枝を揺らしながら一本一本説明をし始めた
「これはねぇ、東南アジアってところにたーくさんあって木部とか樹皮にストリキ二ーネってやつを含むんだけど症状が━━━」
ペラペラと喋る少女に不快感を覚え無理矢理そこで話を割って入った
「筋肉の痙攣、呼吸麻痺、主に神経毒です」
分かりきっているかのようにそう言うと少女はとても驚いたような表情をしてこちらを見詰めている
おそらく答えられると思ってなかったのだろう
隣では怜が凄いとでも言うような顔をでこちらを見ている
何個も何個も植物の問題を出してくるので中身は子供なんだと再認識し、今度はこちらから問題を出してみる
「じゃあ、これは何か分かります?」
そう言って出したのは小さな9mlボトルに入った液体だった
何も分からずにただ首を傾げているだけの目の前の少女を見ては深くため息を吐き少女の目の前へと勢いよくボトルを投げその衝撃でボトルが割れ、液体が零れでる
その直後にマッチに火をつけては同じように足元へと投げてやる
するとみるみるうちに火が広がり、少女は火の中へと包まれる
「正解はリシンでしたー、種子から採るヒマシ油というのが火の元になっています」
少女に合わせて明るい調子で、それでも口調は淡々とした様子で言っては
こちらの声は聞こえていないのかただ苦痛に叫ぶ少女が自身の長い植物から火を収める樹液を出し、1分もしないうちに火が収まってしまった
少し怜の方を見るとマジかこいつみたいな引いた顔をしている、一体何が悪かったのか
ただ自分の方が上だと言いたかっただけなのに
「お姉ちゃん酷いよぉ!痛かったよぉ!」
顔が半分以上爛れ、フラフラになりながらそう告げる少女はホラー映画のワンシーンにしか見えなかった
痛みに叫びながらこちらに攻撃を仕掛けてくる
それにプラスでこちらに植物や薬草の知識で負けたことが相当悔しかったそうで無策にこちらに突っ込んできては攻撃を繰り出す
尖った鋭い葉が頬を掠める
怜も同じように避けたが首ら辺が少し切れているように見えた
「っ…私だって伊達に薬草の研究何年もやってないんですよ」
咄嗟に後ろに避け、流れてくる血を手で拭う
小さい子供、恐らく6、7歳だろうが容赦はしない
こいつと戦う相手が黒美やアズならどこか気が緩んでいたのかもしれないが自分は子供嫌い、怜は特に何とも思っていないらしい、これは好都合だ
そんな事を考えていると小さな少女はすぐに機嫌を治したのか次の標的は怜になり、「わぁ!狐さんだぁ!」なんて言っては笑顔で背中の長い枝を飛ばしてくる
怜自身も毒なのは分かっているのかしっかり避け、獣のように体勢を低くする
標的が怜のうちに、と全力で走っては横から単純なストレートを入れる
少女は遠くに飛び、壁に埋め込まれ白く綺麗だった城は所々にヒビが入っている
少女は普通の人間なら明らか死んでいるだろう威力のストレートを喰らっても普通に起き上がってくる
「狐さんと会話したかったぁ」
なんて半泣きで独り言のように言う少女は一目散に夜狐花の元へと走り出す
「狐さんモフモフだぁ!」
背中の長い枝を揺らしながら夜狐花に触れようとする
それを危険と察知したのか後ろに下がり、毛を逆立てる
避けられたことにだいぶと傷ついたのかまた縦横無尽に枝を振り回す
自身を守ることで必死だった為、怜の方に意識を向けれてなかった
排水溝の詰まりが一気に抜けたような音が鳴ったかと思うとビチャビチャと床に何かが跳ねる音がする
しまった、そう思い怜の方を咄嗟に見る
長い枝が腹に刺さり、面の下から血が流れ床に跳ねる
「やった!やった!当たった当たった!」
なんて喜ぶ少女に嫌悪以外の感情は出てこなかった
「怜!早くこれを!」
そう言っては自身の先程飲んだ薬を投げる
もうすぐ毒が回り始めるだろう、その前に薬を飲まなければ
そう考えたのだが何を思ったのかいつもだとすぐに従う怜だがこちらの声を無視している
これが睡眠時間が足りない影響なのだろうか
腹に刺さった枝が抜けぬように腹に力を入れ、その上から更に手で抑えている
「ぇ、なんで、抜けない!」
少女も全力で引っ張っているようだがさすがに単純な力の差もあってか怜は絶対に離そうとしない
腹に刺さったままふらふらと立ち上がり、一呼吸おく
するとすぐさま足に力を入れ、物凄いスピードで少女に迫る
「一昨日来やがれ」
ゴトン、と鈍い音が鳴っては少女の首が床に落ちては転がる
2人とも容赦しないとは言ったもののこれはさすがに容赦が無さすぎる
刀を鞘に閉まったかと思うと、そのまま力無く倒れてしまった
持ってきていた薬は在庫を尽き、先程投げた薬は落ちた少女の首により潰されてしまった
腹に刺さったままの枝を自分の馬鹿力で折っては引き抜き、そのまま怜を抱える
このまま家に帰る頃には怜の身体に毒が回りきってしまう
「夜狐花、貴方ならどうにか出来るでしょう?」
そんな他人任せな言葉を発すると突然夜狐花の目の前に裂け目が現れる
それに驚いていると夜狐花は紗知の裾を噛み、裂け目の中へと連れて行ってしまった
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眩い光が視界を覆い、次に目を開けるとそこは大きな鳥居に綺麗な桜並木が存在していた
直射日光が強く、近くに直射日光を避けれるような影はない
怜をその場に降ろしてやるとみるみるうちに傷が回復していく
だがその真逆で、紗知自身は夜狐花の呪いによるものかしばらくすると口から血の塊を吐き出した
それにプラス幼少期、母から聞いた事があった
紗知は身体が弱いからむちゃしたら駄目だよ、と
そのため外出時は必ず日傘をさし、強い光に弱いため常に日光は見ないようにされていた
今、この裂け目の中に入ってから日光のせいで目の奥が焼けるように痛く思わず顔を伏せる
それに直射日光のせいかどれだけ服という布があってもそれを無視しては白い肌が所々赤く火傷のようになる
手の甲で覆うように隠しても日光は容赦なく刺してくる
このような症状はもしかしなくても先天性白皮症だ
一般的にはアルビノと呼ばれる3万人に1人がなる先天性の病気だ
死ぬかもしれない
そう思うと、突然肌の痛みが少し和らいだ気がした
顔を上げると怜が上から覆うように、抱きしめるように影を作ってくれていた
風が右から左へ抜けるように吹き、桜の花びらが何枚か散る
「夜狐花、今すぐ帰らせろ、俺以外をここに連れてくるな」
優しく、でも威圧感がある声でそう告げる
もし自分が普通の人間ならばすぐに死んでいただろう、この呪いは黒美でも抑えきれないかもしれない
呪いの苦しみに加えて単なる身体の痛みも加わってくるとなると意識を保つのだけでも精一杯だった
次に目を覚ますとそこは先程の城らしき場所だった
自分は壁にもたれかかっており、うっすらと目を開けると怜は夜狐花に何かを言っているようだった
起き上がろうとすると、自分の服の上から怜の上着がかけられていた
意外と紳士な所もあるんだなと怜の事を改直した
自身の肌を見ると赤く腫れており、皮膚の奥が熱を持っている
手を当てても冷めなくて指先が赤黒く腫れていた
体の芯がずっと熱く呼吸をするだけでも胸を刺されたかのような痛みが巻き起こる
しばらくすると怜がこちらに駆け寄ってきた
「大丈夫か?俺のせいで…申し訳ない」
そう言っては謝る怜になるべく心配はかけたくないと思い、大丈夫だと簡単に応答しては上着を返しふらふらと立ち上がる
するとすぐに視界が一周ぐるりと回りその場に座り込んでしまった
すぐに怜が支えてくれたため大丈夫だったもののまだ万全ではないようだ
怜がこちらに目線を合わせてきたかと思うと「焦点が合ってないな…」なんて呟いては「しっかり捕まっとけよ」と、自分を背中におぶる
自身でも分かるほど視界が歪んでおり、光の残像が飛び回っていおり頭の奥で鈍い痛みが広がった
外は大雨だったため、日光の心配はなかった
そのあとの記憶は一切なかった、時々怜が心配の声をかけてくれていたがそれに対し曖昧な返事しか出来なかった
だが一つだけ疑問に残った怜の言葉があった
「黒美からお前がアルビノだって聞いてて助かった」
自分自身でさえアルビノかどうかを怪しく思っていたのに黒美がなぜ知っているのか
それを今の自分では知る由もなく、静かに光の残像が消えない瞳を瞼の裏へと隠した
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ちょいと長めになっちゃいました
ここまで読んでくださりありがとうございました🫶
ここからは単純な書いた感想なんですけど一昨日来やがれって言葉マジで好きなんですよ
意味的には二度と来るなとか出直してこいって意味なんですけどマジでかっこいいから好きすぎる😇
正直、敵キャラの攻撃が思いつかなくて植物系にしてしまったのは事実( ‘-‘ )
でも、紗知がアルビノという設定とか書きたいのはだいたい書けたから良かった
それじゃあ改めてここまで読んでくださりありがとうございました🫶
また次回も呼んでくだされば幸いです🫶
今回は6509文字でした
コメント
5件
すごく良き…!! 知らない設定も知れて満足です!! 怜は夜狐花と一緒にいるようになってから、狐みたいに寝る時間が1日の半分になってるのね…可愛いな!! 紗知と怜の組み合わせも普段はあまり見ないからすごく新鮮で楽しめましたぜ!!✨ 執筆お疲れ様!!!!今回もとても面白かったで!!
読みました!よかったです!!次も待ってます!