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#異世界転移
花月夜れん
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第11話、読みました!火鼠で手に入れたのが霊符ではなく**呪符**かもしれないという推測、なるほど…。煜峰が真に受けて「名を言う気は?」と迫るところで、麗霞が固く口を閉ざしたのが印象的でした。二人きりの空間で煜峰が手を重ねて距離を詰めてくる場面、思わず息を止めてしまいましたよ。「経験がない」と半泣きで告白した麗霞の「妄想すれば描けます!」には笑ったけど、確かに彼女の描く春画の源泉ってそこなんだなと腑に落ちました。次、どうなるんだろう…続きが気になります!
「ぶつかった時に彼女の霊符が落ちてしまいまして。でも火鼠を通してわざわざそんなものを取り寄せてもらわなくても、寺院に行けば済む話だし……」
霊符のようなありがたい物を、高額な手間賃を払ってまで火鼠で買う必要はないはず。
それなら別のものを買いに来た? もしくは麗霞のように売りに行ったのかも??
うーん……。
「……呪符」
「呪符?」
「あれは霊符じゃなくて、もしかしたら呪符だったのかも」
呪符というのを実際に見たことはないが、多分霊符と似たようなものなんだと思う。
もしあれが呪符なのだとしたら、右が麗霞よりも先に慌てて拾ったのも、覆面していたのも、火鼠から出てきたことにも合点がいく。
「な……なーんて! 彼女に失礼でした。あはははは……」
「…………」
「煜峰殿下?」
予想外にも、煜峰はますます眉間に寄せたしわを深くして考え込んでしまった。
不味い。麗霞の適当な思い付きで右に迷惑をかけたら大変だ。
「あの……ただの冗談ですよ? 真に受けないでください? 私のいつもの妄想ですから」
「…………」
「煜峰殿下? ね? ねっ?!」
「その官女の名を言う気は?」
「え……」
名前って……。そこまで聞き出すということは、冗談を真に受けてしまった??
麗霞のただの妄想で尋問にでもあったら、それこそ申し訳が立たない。
「何をお考えなのかは分かりませんが、言えません。絶対に」
口が堅いとか言っておいて、秘密にしておいてと言われたことを話してしまった。詰問されても拷問されても、名前までは明かさない。麗霞が今できる精一杯のことだ。
ぎゅっと口を真一文字にして煜峰を見つめ返すと、目を伏せて「いい」と手を振った。
「ならその官女の動きに何かあれば、必ず私に報告すること。どんな些細なことでも、だ。それで手を打ってやろう」
「殿下のご厚情に感謝致します」
「その代わりと言ってはなんだが、麗霞」
「はい」
「お前はそのような店に何をしに行った?」
「え゛……。えーと、わっ……私ですか?」
「嘘偽りなく申せ」
「まあ、その、ちょっとした商売をしに」
えへっと笑って誤魔化したかったが、多分煜峰は全部分かっている。
呆れた顔が返ってきた。
「その売り上げで、画材を調達してきた訳だ?」
麗霞のすぐ横に置かれた布包の中には、買ってきた紙や顔料が入っている。
この人、透視でも出来るの?!
「その通りでございます」
しおしおと返事をする麗霞の手に、暖かい何かが触れた。
「煜峰……殿下……?」
なんで私の手の上に煜峰の手が?
手を重ねられ、更にその顔が迫ってきた。
「そう言えば麗霞よ、この前の続きがまだであったな」
「続きと言うのは……」
ドッドッと馬の群れが駆け抜けていくような血液の音が、内耳に響く。
「今この小さな空間には、私とお前の二人しかいない。男女がこのような場所にひと組だけいて何をするのか――」
男女ってあなた、玉なしじゃない! という突っ込みなどしている場合ではない。
麗霞の手に重ねられた手に力が入り、身動きが取れない。
「春画家『恋恋』の顔を持つお前に分からないはずがない。そうだろう? 」
最後に耳元で「麗霞」と甘い声で囁かれ、限界に到達した。
急激に頭に血が登ったせいで、くらりと視界が回る。
そんな麗霞の様子を見て、煜峰は「やはり」と呟いている。
「まさかと思うが麗霞よ、男女の経験が全くないのか?」
――経験がないですって?
「あっ、ありませんよ! あるわけないではないですか! 接吻どころか手だって繋いだこともないし、熱い視線を交わしたことだってないんですから!!!」
嫁入り前なんだから生娘に決まってるじゃない!
半泣きになって訴えると煜峰はようやく、自分の元いた場所に座り直してくれた。
「そんなので、よくあんな如何わしい絵を描けるな」
「描けますよ! 妄想すればいいんですから!!」
「妄想……」
堂々と言い放った麗霞に、煜峰はもはやドン引きしている。
「煜峰様、到着致しました」
二人で話しているうちに、いつの間にか画院近くに到着していたらしい。
外から御者をしていた宜辰に声を掛けられた。
車から降りてやっと、煜峰と2人きりの空間から開放され、思わず安堵の息をつきそうになる。
「私はこの後も用がある。姜弘殿の機嫌を直しておくように頼んだぞ」
「あ、はい。送って頂きありがとうございました」
煜峰も画院へ戻るんじゃなかったんだ。わざわざ送って貰ってしまった。
まあ、胡麻団子を熱いままの状態で届けるためではあるけど。
深々とお辞儀をして去っていく麗霞を見送る煜峰は、「面白いやつだ」と口元を歪めた。