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#ご本人様とは関係ありません
あざらし
10
#ご本人様には関係ありません
たべ
103
「寿命、あと半年なんだ。」
その言葉で、思わず足を止めた。現在地、仕事からの帰り道。景観…夕方、逢魔が時。駅の中、横にはセラフ。さっきまでうるさく喋り倒していた人の群れも、空気を読んだのか死んだみたいに大人しくなった。というか、せらの発言が理解出来なくて音が無くなったみたいに感じただけかもしれないけれど。
「…ん?…ごめん、もう1回言ってくれる?」
「…だからぁ、俺、あと半年で死んじゃうんだよ、って。」
くるり、こちらを向いてあっけらかんとそう言うセラとは対照的に、僕はとても動揺していた。
こういう時、なんていえばいいんだろう
「嫌だ」って?
そんなの、死んじゃうせらのが嫌でしょ。僕が言っても、どうにもならない。
「そうなんだ」って?
それは、冷たすぎる気もしない?
悩みに悩んで、何かを言おうと口を開けては閉じる。下手な事を言ったらせらがどこか行ってしまう気がして、舌の根が乾きそうだった。
「…熾天使なのに、しんじゃうの」
「…あは、違うよ、奏斗。だから、死んじゃうんだよお」
口から出た苦しい幼稚な言葉に、せらは笑った。いつもみたいないたずらっ子の笑顔じゃあなくて、儚げ美少年みたいな笑み。
似合わない、気持ち悪い。
そのまんまクツクツと笑って、なんかね、と続けた。
「この間どうしても我慢できなくなっちゃってね、恥ずかしい話なんだけど…」
目線を逸らして、頬を一かじり。せらは、ちょっと声のボリュームを落とした。
聞けばどうやら我慢できずにホテルに連れ込んで襲った人間がどうやらエイズだったらしい。照れり照れり、と言った様子で顔を赤くして目をぎゅっと閉じ下を向くせらはちょっと可愛らしかった。
話していることは最悪なんだけど。
性病。
多分やることはやったんだろうな。
エイズって、確か粘膜感染か何かだったよね。違ったかもしれないけど。
「馬鹿じゃんね」
「いやぁ、おっしゃるとおりで」
「はぁ〜〜ホントにありえないんだけど!僕のしんみりした気持ち返してくれない?何、性病貰ったからあと半年って、ほんとにさあ」
「てか、エイズってそんな半年で死ぬ様なモンだっけ。徐々にじわじわ侵食していくものなんじゃない?」
「病気って大概そうだよね」
「…そうだけど…」
「まあ半年で死んじゃうとして…なんとか、なんとか、ならないわけ?治療とか…」
「薬はあるけど、それで治るわけじゃないしさ。…というか、病気はあくまできっかけであって原因じゃあないからね」
きょとんとした僕を他所に、せらはケラケラと笑いだした。
そしてそのまま僕の手を引いて、駅の外へ。
「ちょっ、なに、っ、頭までおかしくなったわけお前?!」
「あはは!そんなの最初からおかしいよ」
屋外に出て、風がふきぬける秋雨前の、ジメッとした空気が肌を撫でて、思わず顔を顰めた。
分からない男だ、セラフ・ダズルガーデンってやつは。
「奏斗、俺ね」
「今日からきっかり半年後!死ぬって決めてんの!」
…今日が、9月25日。
それの、半年後…
「…っはあ!?僕の誕生日じゃん!」
「あは!そうだよぉ」
「何、僕の事嫌いだったわけ?嫌がらせってこと?」
「えっ、違うよ」
「じゃあなに、人の誕生日に死なれるなんて迷惑なんですけど?!」
「あはは、奏斗 に言ってもきっとわかんないよ、俺の気持ちなんて。」
さっきまで楽しそうに笑っていたのに、急に全てを諦めたような顔して言うもんだからムッとした。
ああ、むかつく。そんなの、言ってみなきゃ分からないのに。
「言ってみなきゃわからないでしょ」
「…ふ〜ん?そういうこと言っちゃうんだ?」
ずい、と形のいい顔面が寄る。
キスされるのかと思って反射的に目を瞑ったけど、顔はそのまま横にズレて耳元で声がした。
「俺、奏斗とならキスだってできるよ」
「友達以上になりたかったの」
…でもできないからさ
だから、死ぬことにしたの。
コメント
1件
いやもう…冒頭からガツンとやられたよ。セラフが「あと半年で死ぬ」ってあっけらかんと言うシーン、奏斗の動揺がすごく伝わってきた。エイズって、しかも「病気はきっかけで原因じゃない」ってセリフ、重すぎるし、そのあとの「奏斗とならキスだってできるよ」からの「だから死ぬことにした」って、もう…。切なさと狂気が混ざってて、めちゃくちゃ刺さった。続きが気になる…!