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おまる
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誕生日を経て、私たちの関係はより深く、揺るぎないものになった。
……けれど、一つだけ不満があるとするならば
生活のあらゆる主導権を、年下の彼に握られすぎていることだ。
「……たまには、私だって瞬くんを驚かせたいわ」
金曜日の夜。私は仕事帰りに少し贅沢なワインを買い込み
いつもよりボタンを一つ多めに開けたブラウス姿で、彼の帰りを待った。
余裕ある大人の女性というところを瞬くんにも見せつけてやりたい、その思いで。
「ただいま戻りました、凛さ……ん?」
帰宅した瞬くんが、ソファで脚を組み、グラスを揺らす私を見て足を止めた。
「おかえり、瞬くん。…今日はお疲れ様。こっちに来て?……今日は、私に甘やかされなさい」
私はわざと低めの、仕事モードに近いトーンで彼を招き寄せた。
瞬くんは一瞬、きょとんとした顔をしたが、すぐに口角を上げて私の隣に腰を下ろした。
「…凛さんからそんな誘い文句が聞けるなんて。…どうしたんすか?急に」
「どうもしないわよ、いつもあなたにばかり、いい格好させてるから。…ほら」
私は彼の膝に手を置き、顔を近づけた。
至近距離で見る彼の瞳が、微かに揺れる。
(……勝てる。今日は私のペースよ)
そう確信して、彼のネクタイに指をかけたそのとき──
ガシッ、と。
私の手首が、彼の大きな手に掴み止められた。
「……凛さん。あんた、自分が今どんな顔してるか分かってます?」
「え……?」
「…そんな慣れないことして、耳まで真っ赤ですよ。……余裕ぶってるつもりでしょうけど、気づいてないの、可愛いっすね」
瞬くんの声が、一気に熱を帯びた低いトーンに変わる。
彼は私の手首を掴んだまま、ぐいっと自分の方へ引き寄せた。
「っ、ちょ…離して……!」
「嫌です。……自分から火をつけておいて、途中で逃げるなんて許しませんよ?…『甘やかされる』のがどういうことか、もう一度身体に叩き込んであげます」
彼は私のグラスをテーブルに置くと、そのまま私をソファに押し倒した。
形勢逆転。
結局、私は「余裕ある女」を演じ切るどころか
彼の飢えたような瞳に射抜かれ、いつも以上に翻弄されることになった。
「…しゅん、くん……っ、意地悪……」
「…あんたが可愛すぎるのが悪いんです。……ほら、もっと俺を見て腰振って…」
「…そ、んな…っ、んっあっ!」
「……怖がらないで。今日は朝まで、たっぷり甘やかしてあげますから」
結局、主導権は再び彼の手に。
でも、翻弄される私の心は、悔しさよりも深い幸福感で満たされていた。