久しぶりに夜の繁華街に来た。
季節はすっかり秋めいており、夜は冷える。
jpとttは遅くなった夕食を摂ろうと適当に並び歩いていた。
ttは単身マンションを退去する予定で、またjpと暮らす準備を進めているところだった。
jpが立ち上げた会社も、少しだけ利益を得られるようになってきている。
仕事もプライベートも順風満帆だった。
土曜の夜、賑わう繁華街の中。
人混みを避けるように歩く。
点滅する信号に急ぐ周りに合わせ、自然と二人も早足になっていた。
交差点を抜けた時、前方から歩いてきた男性が二人の前で足を止めた。
前を歩いていたjpは咄嗟に止まり、その背にttはぶつかる。
「おっ、、と」
「ぶへ、、、なんや?」
jpの前に立つその男は被っていたフードをとると、驚いたように声をかける。
「…jp?」
「…ユウさん!?」
jpは思わず前のめりになった。
「えー!久しぶりじゃん!元気!? …tt!ユウさん! 昔俺と動画撮ってくれてた友達だよ!」
「あ、はじめまして」
ttは鼻を抑えながらjpの横へ出た。
「この人はtt。krpt観ててくれたならわかるかな」
ユウという男はttも知っている。
ttと出会う前、jpはユウと動画を投稿していた。
穏やかな人柄で人気だったが、ttがjpと知り合ってすぐの頃、個人的な事情との事でネット世界からいなくなった。
それからも時々jpから名前を聞いていたので、ttも一方的に親しみを感じていたが。
そのユウはttをチラリと見ると、すぐにjpに目を戻した。
「jpは変わんないね、今何してんの?」
「今は会社作って、ttと友達と色々やってるよ。 ユウさんは??」
「まぁ相変わらずかな」
「そっかぁ!ね、せっかくだから3人で飯食わない?どう?」
「ん、俺はええけど」
二人のやりとりを目だけ動かして聞いていたttはコクリと頷いた。
ユウは少しだけ躊躇うふうだったが、黒いカバーをつけたスマホを見て言った。
「じゃあ少しだけ、お邪魔でないなら」
「邪魔なんてないって!いこいこ!」
jpに引かれるまま定食屋に入ると待ち時間なくテーブルに案内され、 二人の前にユウが座った。
改めて彼を見る。
jpより少し背が低いくらいか。ユウも細身だ。
黒い短髪に細い切長の目、薄い唇は常に微笑んでいた。
見た目こそ多少イメージと違ったが、動画を通して見ていたユウそのまま、穏やかな人であるのは間違いないようだ。
しかし、先ほどから一切ttの方は見ない。
ttが話すと目を伏せて食事に手をつけはじめ、興味を持たれていないようだった。
どことなく居心地の悪さを感じるが、jpは気づいていないようでユウとの会話に華を咲かせている。
「何年ぶりかな?7年くらい?」
「だね、でもたまにkrptは観てたから俺はあんまり久々な感じしないな。 解散は驚いたけど、本当いいグループだったよな」
「うん、、そっか、、観てくれてありがとう。 …ユウさんは今何してんの?」
「俺?、、はエンジニア、システムエンジニアだよ」
「え!ttと一緒じゃん!」
「そうなの?もう動画作ってないんだ」
チラリとこちらを見たユウはttに少しの興味を向けたようだったが、またすぐに目を伏せてしまった。
ttも手元に視線をうつし、オレンジジュースをストローでかき混ぜながら答えた。
「ダブルワークてやつやな…土日だけjpんとこでプログラム立てたりしながら普段は会社員やっとる」
「すごいよねー〇〇だよ、大手の」
「へぇ」
やはり興味がなさそうな彼の生返事は気分が良いものではなかった。
雰囲気を悪くしない程度には会話に参加しながら、2人の昔話が終わるのを待った。
…
定食屋から出ると、ユウはまたスマホを取り出して時間を見た。
「ごめんな、せっかく会えたけどもう行かなきゃ」
「ううん、また暇なとき誘って!」
「ん、じゃあまた」
ユウはjpに微笑んだあと、裏通りの方向へ去ってしまった。
結局ほとんど話さなかったttは、jpの袖を掴むとつぶやいた。
「…俺おらんほうが良かったんちゃう?」
「なんで?ttがいてユウさんも楽しそうだったよ」
jpは口をへの字に曲げるttの頭を撫でた。
「ほんまかぁ?」
「ユウさんもttと初めてだから緊張してたんだよ、でもいい人! 絶対ttとも仲良くなれるから!」ニコッ
笑うjpにttの心はスッと軽くなった。
jpが言うならそうなんやろな。
お前には人をつなげる力があるから。
「さ、明日はyaくんurりんno兄と打ち合わせ!」
「帰ろ、tt!」
jpに差し出された手を握り、二人は家へ向かった。
コメント
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もしかしてリュウさんですか?!✨️物語に出てくるのは激アツすぎますね😇💕︎