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腰袋から魔石を数個取り出す。魔石は石板ほど大きくないので手の平に置くだけでシャッフルが可能だ。特別な儀式や形式は必要無い。今からやることは望むアイテムや装備を思い浮かべるだけの簡単なもの。もっとも、レア確定スキルを覚醒してからそれらを思い浮かべることが出来るようになったわけだが。
「ウニャ……アックが欲しいもの、石がくれるのだ?」
「そうとも限らないな。シーニャの装束も思い浮かべたわけじゃないからね。その仕組みはおれにも分かってないんだ」
「でもすごいのだ! アック、すごい!」
おれがすごいのか魔石がすごいのか……。
だが間違いなく魔石の方だろうな。意図しない物を出してくれる感じもあるし何とも言えない。
ともかく地面に魔石を投げると、
【Uレア 宝珠セット】【Uレア 精霊獣の欠片】
【SSSレア アイスシールド 氷耐性 Lv200】
【SSSレア ライトニングハーネス 麻痺付加Lv.500】
【SSSレア ドレイングローブ 触れた者の生命力を奪う】
【EXレア ミスリルブーツ 水耐性:氷耐性Lv.900】
「おぉ~イスティさま、すごいなの!! たくさん出たなの~! しかもわらわに似た物まで出ているなの」
「装備にまとまりが無さすぎるのが気になるな。すごいといえばすごいが」
「ふんふん、アックが望んだものなのだ?」
思ったとおりの物が確実に出るわけでもなさそうだな。
「スキュラが水魔法を得意としているから装備に耐性がつけばいいと思っていたが……」
「ピカピカな石がいっぱいなのだ! これは何に使うのだ?」
「うーん」
正直言って何で宝珠が出たのか不明すぎる。精霊獣の欠片は過去に出した欠片と使い方が同じはずだからいいとして。
「イスティさま。わらわが思うに、魔石の意思が生じさせたからだと思うの。魔石はイスティさまや小娘と同じように成長途中で覚醒も果たしているはずなの」
「魔石の意思? 魔石がおれの願いをくんで考えたとでも?」
「それはよく分からないなの……でも、そんな気が」
「はは、石が意思表示とかシャレのようだな」
「違うもん!!」
宝珠はスキュラにとって最高の贈り物だ。おれが深く考えていなくても魔石が先を読んでいるとしたら――きっとどこかで役に立つはず。
それにしても見事にばらけた装備だ。スキュラ、もしくは正体不明の魔物にとって不利な耐性装備になるのだとすれば、魔石のおかげで何とかなるということになるかもしれない……。
「ハヒ~……アック様、まだ行かないのですか?」
「あぁ、ルティか。彼にきちんと説明してくれたか?」
「はい、それはもう! あの見習い騎士さんは決して強くなさそうなのですが、とっても物覚えが良くて素直なのです。品もあって、きっとどこかの王族なのではないでしょうか?」
「王国から来ているんならそうかもしれないな」
そういえばラクルに取り残されたと言っていたが、どういう経由で来れたのだろうか。
「ルティはここで待っててくれ。おれは彼と話をして来る」
「えっ? こ、ここで待っていていいんですか? で、でもでも……」
「少しだけだから、そこに立っているだけでいい」
「は、はいっっ!!」
おれやフィーサがいる所から少し離れた場所に彼がいた。
「疲れてそうだけど、大丈夫か?」
「あ、アックさん! 僕の為に申し訳ありません。まさかこんな海の底にまで足を踏み入れることになるなんて思いもよらず……」
「冒険の旅はこれまでに?」
「はい、ありません。僕の仕事は毎日のように王女に仕え、守ることでした。戦いなどとても……」
やはりそうだったか。
「王女のそばにいてこれまで危険が及ばなかったと?」
「い、いや、王女様がとてもお強かったものですから」
王女が最強な王国の見習い騎士か。お目付け役にしてもリエンスは実力が無さすぎだろ。
「王女の名前を聞いてもいいかな?」
「あ、そうでした。シーフェル王国第二王女、エドラ・シーフェル様の――」
「――エドラ? エドラ・シーフェル?」
「ええ。ご存じなのですか?」
聖女エドラは王国の王女、それも第二王女だったというわけか。
「…………いや」
「気性の荒い王女様ではありましたが、知性に溢れ振る舞いはとてもお綺麗で……」
「なるほど、惚れているわけか」
「そ、そういうんじゃないんです! ですが、強くあられても僕はおそばでお守りしたい。そう思っていたのです」
この奥には神殿のみ残されている。スキュラと一緒にいるのは魔石に封じたはずのエドラということになるが、魔石に封じたグルートとテミドはすでにこの世にない。
――となると、やはりバヴァルの弟子は。