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みんなたっくんの事を覚えていたね✨綾ちゃん、匠くん良かったね💕
智之が泣いていた……
──本当に救いようのないバカだ
あっ! 一緒に貯めたお金、半分返さなきゃ
そう思うと、本当に終わったんだと、自分も泣けて来た。
今日は、一日中、涙腺が緩んでいるからかな。
救いようのないバカだけど……今までは、好きだった人。
2年半も付き合って、結婚しようと思ってた人だもの。誰にでも優しくし過ぎるから、こんなことになっちゃって……
でも、もう終わったんだ……
泣きながら、また家へと向かった。
角を曲がると、また、誰かが家の前に居る。
「え?」
「綾! スマホ〜」と、私のスマホを手に持って振っている匠が立っていた。
──えっ! 私スマホを匠の車に忘れてたんだ!
気づいてなかった
思わず、走って行き匠に抱きついた。
「ん? 綾? どうした?」と言う匠。
「ウウウッ」また、泣いてしまった。
「お前、今どこ行ってたんだ?」と聞かれた。
そして、その時、
「は〜い!」と母が玄関から出て来た。
「え?」
「え?」「あっ!」
匠は、既に我が家のインターホンを鳴らしていたようだ。
「あ、あ〜すみません。なんか……」と匠。
「綾! あんた何してんの?」と母
「お母さん!」と慌てて匠から離れた。
すると、母は、
「あ〜〜この方が!」と言いながらニコニコ笑っている。
──きっと母は、勘違いをしている
「あ、違う! お母さん! 違うってば」と首を横に振りながら言うと、
「ん?」と首を傾げながらキョトンとする母に、
匠が、
「はじめまして。あっ、いえ、お久しぶりです。
綾瀬 匠です」と言った。
──あ〜待って! ややこしくなるから……
「あやせ、たくみさん?」と、頭をフル回転させている様子の母。
「あ、だから、違うのお母さん、ちょっと待って!」と、私が慌てているのをよそに、
「え〜っ! あら〜もしかして、《《たっくん》》!」と言った母。
「え?」私は、驚いた。
「はい! そうです。大変ご無沙汰をしておりました」
なぜか話が通じ合っている、匠と母。
「まあ〜大きくなったわね〜」
「はい! 26歳になりました」
──って、何懐かしんでるんだ? どういう状況? 母は、《《たっくん》》のことを覚えてたの?
私は、匠と母を交互に見る!
「まあ、お父さんとお母さんもお元気?」と、
「はい、元気にしてます」
──待て待て待て待て! どうなってんだ?
私だけ置いてけぼり……
「綾! 何してんの、早く《《たっくん》》に上がってもらいなさい!」と言う母、
「え?」
「あ、いえ、今日はコレを届けに来ただけなので」
と、私のスマホを見せている。
「何言ってるの、どうぞ上がって上がって! ご飯食べて行って! お父さんも楽しみにしてるんだから」
「え? ご飯? お父さん?」
──何? 匠ってお父さんとも面識があるの?
「あ、じゃあ、ちょっと車を移動させてきます」
「あ、ココ開けるから中に停めて」と母はガレージを開けた。
「ありがとうございます」
──なんだコレ? 何やら、大変なことになったぞ
匠は、
「ちょっと車取ってくる」と……私にスマホを返してくれた。
「あ、うん。ありがとう」
もう私には、わけがわからない。
門をくぐって玄関に入ると、母から小声で、
「綾! あんた彼の名前、《《トモユキ》》って言ってなかった?」と言われた。
──覚えてたんだ。そりゃあそうか……昨日話したばかりだもんね
「あ、うん、そのことを今日話そうと思ってて……」
「まあ、たっくんなら大歓迎よ」と、喜んでいる母
「あ、あのね……」と言うと、匠の車が入って来た。
「あ、良いから、早くたっくんに上がってもらって! お父さんも喜ぶから」と又言った。
「お父さんが?」
「そう! お父さ〜ん!」と、父を呼んでいる母。
──いったいどういうことなのだろう?
私は、匠がガレージに車を停めるのを待って、
「ねえ、匠、ウチのお父さんも知ってるの?」と聞くと、
「おお、小さい頃よくキャッチボールをしてもらった」と笑っている。
「え〜〜! そうなの? ウチの父が?」と言うと、
「うん、おじさん優しかったぞ」と言う匠。
──お父さんが優しい? 何かの間違い?
あ、いや、確かに私が小さい頃は、優しかったか……
そして、玄関に入る前に、私は、
「あ、匠! さっきトモが来て」
と言うと、
「え? そうなのか?」と驚いている。
「うん、だから話してたの。ちゃんと別れた!」と言うと、
「そっか。よく頑張ったな」と、笑顔で、又頭をヨシヨシしてくれた。
「だから、さっき……もう泣いてないか?」と、指で涙を拭う仕草をしてくれる。
「うん」
母に驚いて涙も引っ込んだよ。
「じゃあ、正式に報告するか」と笑顔で言っている。
「え? 何? 今日?」と言うと、
「綾〜!」と母が呼んでいる。
「は〜い」
──もう、どうにでもなれ!
「たっく〜ん、どうぞ〜」と言う母、
「はい!」
そして、2人で玄関から入ると……
「いや〜匠くん?」「はい!」
と居間から出て来ていた父が手を出して、匠と握手をしてハグをした。
「こんなに立派になって〜! 街で会っても分からないな」とニコニコしている。
「ご無沙汰しております。その節は、大変お世話になりました」と言う匠。
私がキョトンとしてるものだから、
「よく匠くんに、キャッチボールに付き合ってもらってたんだよ」と言う父。
「いえ、僕の方が遊んでいただいてました」と言う匠。
「そうなんだ……」と予期せぬ光景に私は、呆然としていた。
母の顔を見ると、
「お父さん、キャッチボールをしたかったのよ。でも、綾は全く興味がなくて。いつも匠くんに付き合ってもらってね。男の子が欲しかったのよね」と言う。
「そうなんだ!」
初めて聞かされる事実。
匠が、
「ウチの父の仕事が忙しくて、留守がちだったから、《《お父さん》》に遊んでもらってたんだよ」と私に言った。
「へ〜そうなんだね」
「さあさあ、早く上がって、お父さんがこんな所で話すから〜」と母もニコニコしている。
「では、お邪魔します」と匠。
そして匠は、台所に居たお婆ちゃんを見つけて、
「初めまして、綾瀬 匠と申します。よろしくお願いします」と、ご挨拶。
「こちらこそ、綾がお世話になっております」とお婆ちゃん。
と言うと母が、
「ホントに、お世話かけてるんじゃない? たっくん、ごめんなさいね」と言う。
そして、更に続けて「ところで、2人は?」と私と匠を交互に見ながら聞いた。
「今、会社で同じ部署なの」と私が言うと、
「まあ、そうなの? 凄い偶然ね」と、
「はい、僕はITの方ですが……」と匠。
「まあ、そうなのね、凄いわね〜」と言った。
きっと母は、ITが何かよく分からないから、《《凄い》》と言ったのだろう。そう言っておけば無難だから。
「でもね、お互い幼馴染だとは知らなくて、さっき知ったの」と言うと、
「あら、そうなの? 素敵!」と笑っている母。
その言葉に、私は父の顔色を伺ったが、嬉しそうに笑っている。とても意外だ。いつもの厳しい顔の父は、ココには居ない。
母が、座卓を挟んで父の向かい側に置いてくれた2枚の座布団に促され、匠と並んで座った。
そして、
「ねえ、私って、白百合幼稚園の出身だよね?」と母に確認すると、
「そうよ! 家がご近所で毎日たっくんとたっくんママと4人で通ってて」と……
──やっぱりそうだったんだ